マンガHONZのレビューで、一番買われたマンガは何だ!? 『買われたマンガランキング 5月』

東海林 真之2014年06月22日 印刷向け表示
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5月から、マンガHONZ独自の「ランキング」を発表している。
そのひとつが、『先月の買われたマンガランキング』である。それは、毎月投稿される数々のレビューのなかから「(紹介されたマンガを)思わずポチッと買ってしまうような、惹きつけられるレビューってどれだったのか?」を選ぶというランキングだ。

 5月に第1回目として発表したのは、マンガHONZがはじまった2月から4月までの総合ランキングだった。そして今回、第2回目として、5月に買われたマンガランキングを発表する。

『5月の買われたマンガランキング』 BEST 5

お決まりのカウントダウン形式で、まずは第5位から発表していく。

第5位は、『ヤミの乱波』である。紹介していたレビューは、角野信彦による「マンガ版 日本の黒い霧 終戦直後の忘れられた事件を描いたスパイ大活劇『ヤミの乱波』」だ。

『ヤミの乱波』は、終戦直後の闇社会を扱ったマンガである。陸軍のスパイ養成機関だった中野学校出身の帰還兵が活躍する、というフィクションなのだが、忘れられた歴史の事実を丹念に拾いあげているため、同時代を知る人は妙なリアリティを感じるだろう。

角野信彦もレビューのなかで次のように述べている。「逆説的であるが、この『ヤミの乱波』はフィクションであるがゆえに、リアルに歴史の中に人間を感じさせる傑作である。昭和の日に細野不二彦が執念で埋めた歴史の隙間、人間の感情を感じ取ってほしい。」この歴史や人間のおもしろさに惹きつけられた人が多く、今回ランクインしたのだと思われる。

余談だが、実はこのレビューよりも多くの人に読まれた(PVを集めた)レビューは他にいくつもあった。例えば、同じく角野信彦によるレビュー「半グレは関東連合だけじゃない。超リアルに半グレ犯罪集団の実態を描いた『ギャングース』」や、菊池健によるレビュー「ガンダムをこれから読むなら『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』から入るべき3つの理由」などである。

しかし結果として『ヤミの乱波』のほうが多く買われていたということは、思わず手に取りたくなる磁力がそれだけ強かった証左なのだろう。

第4位は、『ウルトラヘヴン』である。紹介していたレビューは、兎来栄寿による「最年少手塚賞受賞者の天才・小池桂一が精製した、読むドラッグ『ウルトラヘヴン』」だ。

まず、タイトルからして、もう、気になるではないか。
そしてレビューには、小池桂一というマンガ家の天才性が、まず綴られる。今もなお最年少記録である、弱冠16歳での手塚賞入選。手塚治虫自身が「やられた!」と天を仰ぎ、認めた才能。しかし、そのまま素直に日本で漫画家であり続けることはせず、ヒッピーになりながら描いたという、普通のマンガの概念では有り得ない作品。…これらの事実を知るだけで、その天才作家に、そして作品に興味が湧いてきてしまう。

その後レビューは、この天才作家の「最新作」へと続く。それが『ウルトラヘヴン』である。その作品のインパクトは兎来栄寿のレビューを見てもらいたいが、コマを一部借りながら描かれる魅力の一部だけでも、充分に"中毒性"があるだろう。

続く第3位は、『チャンネルはそのまま』である。紹介していたレビューは、堀江貴文による「テレビ局の構造を理解するためには地方の弱小テレビ局の現状から学べ! - 『チャンネルはそのまま。』」だ。

マンガHONZの代表である堀江貴文の面目躍如だ。
堀江貴文×テレビ局というレビュー。まず、興味が湧くだろう。

堀江貴文は、数多くのマンガを読んでいる。中にはテレビ局などメディアを取り扱う作品は、いくつもある。そのうえでとり上げたのが、今回の作品なのだ。

レビューでは、「この漫画が面白いのはテレビ局の内部事情が丹念な取材の結果かなり暴露されている」ところであると言い、「これからのテレビのあり方について、考えさせられる漫画だとも思う。フィクションなので、ここまで赤裸々に描けたということもあるだろう」と続ける。テレビ局をよく知るレビュアーならではの魅力的な紹介だ。

そして第2位は、『カイ・シデンのレポート』である。正しくは、『機動戦士Ζガンダム デイアフタートゥモロー ―カイ・シデンのレポート―』。紹介していたレビューは、マンガHONZのスーパーゲスト マンガ家「うめ」の小沢高広による「これは宇宙世紀の歴史マンガです。『機動戦士Ζガンダム デイアフタートゥモロー ―カイ・シデンのレポートより―』」である。

このレビュー。ガンダムを読んだことがある人前提の内容である。その時点で、ずいぶんと対象読者を絞っていると言えるのだが、このレビューが出た時点で、過去1位のPV数をたたき出した。そして、買われた冊数もPVに比例していた。

なぜなら内容が圧倒的におもしろいからだ。対象読者を絞っているかもしれないが、その読者には深くまでグッサリと刺さるのだ。「アムロ・レイが久しぶりに乗ったモビルスーツ<ディジェ>がなぜジオン寄りのデザインだったのかなんて、理由も明らかにされる」と言われたら、それはもう気になるではないか。「こういう事情だったんならしかたない」? いったいどういう事情なんだ?

さらにはマンガ家ならではの視点、切り口での分析も、興味を高める。それはたとえば、「この作品にはほぼタテのコマわりがない。また誰のセリフかを明示するためのフキダシのしっぽもない」ことが生み出す効果であり、「コマ枠の外がすべて黒く塗りつぶされている」ことの意味である。

まだこのレビューを読んでいなかった人は、ぜひ読んでみてほしい内容だ。

そしていよいよ第1位。それは『まんが 日本の医学』である。紹介していたレビューは、山田義久による「某国立大学の授業でも使われているらしいで~ 『まんが 医学の歴史』」だ。

『まんが 日本の医学』。このような作品があることを知っていた人は、どのくらいいるのだろうか。・・私はこのマンガHONZで紹介されるまで、まったく知らなかった。なにせ、出版社が「医学書院」である。医学書を扱う、ミニコミ誌だ。

そんなマンガまで読んでいる山田義久にまず感心するが、レビューも作品の魅力を充分に伝えている。書き出しをそのまま引用してみたい。

子供を医者にしたい親御さんはこの本を買って、子供と一緒に読めばいい。いや、こっそり読んでおいて、折りをみてしたり顔で子供に語ってみるのもいい。
 

好奇心に溢れる子供なら、医学に対する情熱に目覚めるかもしれない。正直、自分も子供の頃にこんな本に出会っていたら、まったく違う道を歩んでいたかもしれないと思う。
 

そのくらいのパワーを秘めた凄まじい一冊だ。

どうだろう。私はこの部分だけで存分に、好奇心を刺激されてしまった。

前回のランキングでは、苅田明史のレビューから『ナチュン』が復刊(電子書籍化)された展開をご紹介した。今回も同様に、「世の中に眠るすばらしい作品(マンガ)を、レビュアーの想いですくい上げる」というマンガHONZの理念が実現できたレビュー(と展開)であった。

 「買われたマンガランキング」の取扱説明書

さて、今回も前回同様、最後に、『買われたマンガランキング』 の使い方についてふれておきたい。

このランキングでは、実際に本が買われたレビューがいいレビューだと言いたいわけではない。マンガHONZのレビュアーは(レビューを読めばわかると思うが)様々な個性に満ちているし、紹介する作品もその個性にあわせ、様々である。

ならば読者の立場としては、自分の心に届くレビュー、共感するレビューを見つけ、次にそのレビュアーのレビューを追ってみるといいのだろう。レビュアーの想いや視点を読み解きやすくなり、したがって紹介されたマンガへの評価判断もしやすくなる。その結果、アタリのマンガに出会う確率があがるというのは、わくわくするのではないだろうか。

前回・今回と続けている『買われたマンガランキング』。このランキングが、自分に合ったレビュアーを見つけるきっかけとなり、そして新たなマンガとの(幸せな)出会いを生んでくれると、私たちも嬉しい。
 

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