マンガHONZのレビューで、一番買われたマンガは何だ!? 『買われたマンガランキング 6月』

東海林 真之2014年07月13日 印刷向け表示
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今回も『先月の買われたマンガランキング』を発表する。
これは、毎月投稿される数々のレビューのなかから「(紹介されたマンガを)思わずポチッと買ってしまうような、惹きつけられるレビューはどれだったのか?」を選ぶというランキングだ。

いままで2回に渡り、「2-4月までに買われたマンガ総合ランキング」、「5月に買われたマンガランキング」を発表してきた。そして今回、第3回目として、6月に買われたマンガランキングを発表する。

『6月に買われたマンガランキング』 BEST 5

6月に買われたマンガのBEST5を発表すると、次のとおりだ。
 

順位 作品名 作者 レビュアー
1位 レッド 山本直樹 角野信彦
2位 羊の木 いがらしみきお 堀江貴文
3位 ごぶさた日記 たかせシホ 佐藤茜
4位 イレブンソウル 戸土野正内郎 兎来栄寿
5位 同人王 牛帝 兎来栄寿

お決まりのカウントダウン形式で、まずは第5位から紹介していく。

第5位は、『同人王』(牛帝)である。紹介していたレビューは、兎来栄寿による「同人誌で目指す最底辺からの脱出、そして世界平和! これ一冊で同人界が解る『同人王』」だ。

兎来栄寿の二つ名は「マンガソムリエ」。ソムリエの名に違わず、そんなマンガあるの!?というマンガまで、ほんとうに良く知っている。マンガHONZのレビュアーはそれぞれの得意ジャンルをもつため、少しニッチなマンガの話になると、共感する人が兎来栄寿だけだったりする。逆に言うと、困ったときは、彼に話をふればOKという空気感も常。

そんな兎来栄寿なので、紹介するマンガもストライクゾーンの端ぎりぎりが多く、コース読みができない楽しさが味わえる。

本作も、「同人誌の作り方からダウンロード作品の利率、同人界の主なイベントに至るまで、同人というものについてはこの一冊を読めば全て解ります」と、誰をターゲットにしているのか分からない紹介文から始まる。

それでいて「この作品は、あらゆる人間に響き得る熱く重厚な現代人間ドラマです。そして、何かに行き詰まりを感じてしまっている人の魂を奮わせる賛歌です。」と続けるのだから、えもいわれぬ知的好奇心が刺激されてしまうだろう。

同人王
作者:牛帝
出版社:太田出版
発売日:2013-07-17
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 続く第4位は、『イレブンソウル』(戸土野正内郎)。紹介していたレビューは、これまた兎来栄寿である。「『イレブンソウル』マンガソムリエが今最も映像化して欲しい隠れた傑作」だ。

マンガソムリエを名乗るだけあり、2013年も1,000を超える冊数のマンガを読んでいる。そのなかでも「ベスト5に入れるくらいに面白かった作品」と言い切るのがこの『イレブンソウル』だ。

「なぜか世間のマンガアワードなどでこの作品名を聞いたことは皆無」だからこそ、「こんなに凄い作品が埋もれたままでは、漫画界に留まらず創作界において大きな損失なので、強い危機感と使命感を持って筆を執っています」とレビューでも書いている。

その想いが伝わったのか、このレビューから多くの作品が売れたのは幸い。次は、タイトルにもあるとおり、『進撃の巨人』、『シドニアの騎士』に続く大作として、ぜひ映像化されてほしいと思う。

イレブンソウル 1 (BLADE COMICS)
作者:戸土野 正内郎
出版社:マッグガーデン
発売日:2006-08-10
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第3位は、『ごぶさた日記』(たかせシホ)である。紹介していたレビューは、佐藤茜による「嫁がYesで旦那がNo セックスレスを明るく描く『ごぶさた日記』」だ。

ついに佐藤茜のレビューが火を噴いた。

マンガHONZの数少ない女性レビュアーとして、女性向けマンガを紹介していくの?と思いきや(いや、紹介しているが)、エロ、BLと、他の面々がカバーしていない作品をどんどん紹介してきた彼女。

紹介している作品はたしかにおもしろく、色々なマンガを本当によく読んでいるのだが、「ちょ、ちょっと読者がまだついてきてないんじゃないの?」と思っていたのは、私だけではないだろう。

その佐藤茜のレビューが、ここで火を噴いた。内容ももちろんだが、タイトルがとにかく気になるではないか。敢えてもう一度書こう。「嫁がYesで旦那がNo セックスレスを明るく描く『ごぶさた日記』」である。

上でも書いたが、マンガHONZのレビュアーは、それぞれ得意ジャンルが違っている。マンガHONZ自体の日々のレビューを楽しみにしていただけるのも嬉しいのだが、「自分に合うレビュアーを探してフォローする」という楽しみ方もおすすめしたい。

そして佐藤茜は、確実に(一部の)ファンがつくであろうレビュアーだと、私は思う。

ごぶさた日記 子育て世代夫婦の寝室事情コミックエッセイ
作者:たかせシホ
出版社:メディアファクトリー
発売日:2010-02-03
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第2位
は、『羊の木』(いがらしみきお)である。紹介していたレビューは、堀江貴文による「『羊の木』 - 元凶悪犯受刑者11名を受け入れた名もない町の戦慄を描く鬼才2人の狂気」だ。

作画は『ぼのぼの』で有名な「いがらしみきお」だが、原作もこれまた有名な『がきデカ』の「山上たつひこ」である。どちらも代表作はギャグ漫画だが、他の作品では独特の世界観やスゴみを感じさせる人たちだ。堀江貴文もレビュー中で何度も「不気味」という言葉を使っている。そしてその言葉は、怖いものみたさ、興味深さを内包した、わくわくする言葉として使われているのだ。

『羊の木』はその2人がタッグを組んだ作品であり、もうそれだけで興味をひかれてしまう。けれど、その紹介をする堀江貴文のレビューも必見だ。なぜなら、タイトルにあるとおり『羊の木』は、元凶悪犯受刑者11人を秘密裏に受け入れた町が舞台なのだが、この作品を堀江貴文は「刑務所の独房で」読んだというのだ。

凶悪犯受刑者(元)の作品を、刑務所の独房で読む。なかなかできる体験ではない(そりゃそうだ)。そんな体験もふくめたレビューの興味深さが、もちろん作品への興味と相まって、このランキングの結果を生んだのだろう。

羊の木(1) (イブニングKC)
作者:いがらし みきお
出版社:講談社
発売日:2011-11-22
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そしていよいよ第1位。それは『レッド』(山本直樹)である。紹介していたレビューは、角野信彦による「セックス・暴力・革命 連合赤軍事件で15人はなぜ殺されたのか? 『レッド 1969~1972』」だ。

『レッド』は、連合赤軍事件の物語である。とかく難しく考えられ、時代に深い影響を与えた重大な事件として描かれる連合赤軍事件だが、ある意味で、普遍的な若者たちの青春群像劇になっている。

角野信彦はレビューのなかで、連合赤軍事件のわかりにくさを、1つの事象に多くの解釈が与えられている点にあると看破する。それは事件に関わった登場人物の多さと、それぞれの立場や証言を残した時期の広がりによるものだ。そのうえで、次のように述べる。

山本はどちらが正しく、どちらが間違っているというスタンスでなく、両論がそれほど矛盾なく一つのストーリーになるように状況を組み立てている。これは絵とセリフで状況を表現できるマンガだからこそできること

さらには、このマンガ『レッド』をよりおもしろく読むための方法として、(フィクションとして描かれたマンガだが)モデルとなった人物名をメモできる人物カードや、亡くなる予定の人物にナンバリングするマンガ手法などを紹介している。

マンガだけでなく様々な参考文献から角野信彦が紡ぎあげたレビューは、それだけでおもしろい1つの読み物である。まだこのレビューを読んでいなかった人は、ぜひ読んでみてほしい内容だ。

レッド(1) (イブニングKCDX)
作者:山本 直樹
出版社:講談社
発売日:2007-09-21
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「買われたマンガランキング」の取扱説明書

さて、今回も最後に、『買われたマンガランキング』 の使い方についてふれておきたい。

このランキングでは、実際に本が買われたレビューがいいレビューだと言いたいわけではない。マンガHONZのレビュアーは(レビューを読めばわかると思うが)様々な個性に満ちているし、紹介する作品もその個性にあわせ、様々である。

ならば読者の立場としては、自分の心に届くレビュー、共感するレビューを見つけ、次にそのレビュアーのレビューを追ってみるといいのだろう。レビュアーの想いや視点を読み解きやすくなり、したがって紹介されたマンガへの評価判断もしやすくなる。

その結果、アタリのマンガに出会う確率があがるというのは、わくわくするのではないだろうか。

今回で第3回となる『買われたマンガランキング』。このランキングが、自分に合ったレビュアーを見つけるきっかけとなり、そして新たなマンガとの(幸せな)出会いを生んでくれると、私たちも嬉しい。
 

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出版社:中央公論新社
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