「金と欲望の描き方とは?」(前編) 福本伸行・三田紀房・堀江貴文 対談

菊池 健2014年07月19日 印刷向け表示
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賭博破戒録カイジ(1) (ヤングマガジンコミックス)
作者:福本 伸行
出版社:講談社
発売日:2000-11-01
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 今日、明日と2日間は、2014/6/17に福本伸行先生、三田紀房先生を迎えて新宿ロフトプラスワンで行われた<「ホリエモン・トークライブSESSION SEASON2 vol.12 金と欲望の描き方とは?」>を、前後編に別けてお送りします。 

<前編>
どうしてもキャッシュが欲しくて、元手無しで何ができるかって考えたんですよね。(三田) 

堀江:お2人とも近所に住んでるんですよね、今の家はいくらで建てたんですか?
三田:え?いきなりここで言わなきゃならないんですか?(笑)
堀江:いや、今日は「カネ」がテーマなんで。
三田:うーん、ぼくらマンガ家は、住む場所と仕事場が一緒のことが多くて、ワンフロアをぜんぶ仕事場にしてしまったりするので、どうしても家は大きくなってしまうんですよねぇ。
堀江:すると何億円という?
福本:土地が高いので、やっぱりそれくらいってしまいます…。
堀江:えー、それキャッシュで買うんですか?(笑
福本:いや、ローンですよ。土地の半分位キャッシュをだしておけば、ローンは組めるんですよ。
三田:ローンを組めば経費に出来ますしねぇ。
堀江:へー、不安定な仕事だとローンは組みにくいと聞きますけども。
三田:いや、銀行だって、マンガ家なら預金通帳を見れば入ってくるお金がある程度把握できるわけで、それで貸してくれるんです。
堀江:結構銀行も合理的な判断するんですね。


堀江:お2人は、いつ頃マンガ家としてお金を心配しないで済むようになったんですか?
三田:アシスタントの給料を入ってくる原稿料で心配なく払えるようになった時ですね。マンガ家は連載をスタートさせるとに、その連載の原稿料が入ってくるよりも前に、アシスタントにお金を払わなきゃならないんです。どうにかして工面するわけですが、それが結構なストレスになるんですよ。
堀江:出版社って、原稿料や単行本の印税をどれ位あとにお金をくれるんですか?
三田:それはマチマチです。最大手の週刊誌なんかは毎週くれるんですが、中小だと描いてから60日後とか90日後くらいかな。
三田:デビューしたての頃は、本当に大変でしたね。僕デビューが30歳で、遅かったんです。もともとは岩手県の北上で家業のブティックを経営していて、田舎で高級衣料品なんかを売ってたんですけど、ぜんぜん儲からなかった。(笑) そこで、どうしてもキャッシュが欲しくて、元手無しで何ができるかって考えたんですよね。その答えが、マンガだった。


堀江:なんか、マネーの拳とかみたいになってきましたね。それまで、マンガ描いたことあるんですか?
三田:いえ、まったく。ただのど素人ですよ。(笑)だから、ネームなんてものも知らずに、いきなり原稿用紙に1コマ目から描いていました。
堀江:マジすか?すげぇ!
三田:マンガ雑誌の新人賞を見ると、大賞100万円とか書いてあるじゃないですか。単純にそのお金が目的で、描きはじめました。(笑)そして「モーニング」のちばてつや賞に2回目に出した時に賞をいただきデビューしました。


堀江:福本さんは?
福本:えぇ、私も賞はちばてつや賞しか出したことがないです。
三田:福本さんは大賞を2連続で取るというギネス記録をお持ちなんですよね(笑)
福本:ちばてつや賞は沢山受賞者をだしてたので、狙いました。
三田:当時、他の新人賞は少ししか受賞者がいかなったんですが、ちばてつや賞は受賞者も多いし、必ず大賞を出していたところも大きかったです。
福本:小さい賞も入れると、15人位ですかねぇ。
三田:デビューしてからしばらくは、ブティックの店番をしながら「アフタヌーン」の連載を描いてました。それで半年くらい経ったところで、「そろそろマンガ家として食っていけるかな?」と思って、上京しました。店は、兄に任せましたしね。
福本:でも、その時もう結婚してたんだよね。


堀江:お店儲からないのに結婚できたんですか?
三田:アフタヌーンで連載していたものが単行本になって、印税が入ってきから結婚しちゃえって.。(笑)
堀江:いくらくらい?
三田:もう、ずいぶん昔の話ですけども、100万円くらいですかねぇ。
堀江:100万で結婚しちゃうんだ?
三田:東北の田舎だと、新婚でアパートを借りても家賃4万円くらいで済むんで、なんとかなるんですよ。
堀江:なんていうマンガだったんですか?
三田:『空を斬る』という、大学の剣道部を舞台にしたマンガです。僕は、大学卒業まで剣道をしてたんで、担当編集者と相談してそのテーマにしました。単行本1巻しか、出てないんですけどね。
堀江:売れたんですか?
三田:ぜんぜんです(笑) でも、印税が入って結婚できたんで助かりましたけどね。(笑)


堀江:福本さんの最初のマンガ、『ワニの初恋』凄い絵ですよね?(笑)
福本:いやいや、あれはもう大分上手くなってからなんですよ(笑)『黒沢』の原型ですね。
堀江:福本さんの絵の話をして良いですか?
福本:良いですよ。僕は高校出てすぐアシスタントになりました。
堀江:福本さんがアシスタントで何をしていたか知りたいですね(笑)
福本:いや、やること色々ありますよ!ご飯作ったり、掃除したり(笑)
堀江:福本さん、ご飯作ってたんですか!(笑)ちなみに、誰のアシスタントを?
福本:今、『風の大地』を描かれているかざま鋭二先生です。
堀江:しかし、全く絵が違いますよね?
三田:なんで、かざまさんのところに入ったんですか?
福本:色んな所で話してるんだけども、最初のマンガをともかく描いて講談社に持って行ったんですよ。そしたら、講談社の編集者さんから、どこかにアシスタントに行った方がいいと言われたんです。
堀江:良く入れましたね。
福本:ぼくが入れたのは、若かったからです。可能性です(笑)当時、2か月遅れ位で入った同期がいたんですが、二人してカケアミとかツブシとか、修行をさせてもらっていたんですよ。それも僕はなかなか出来なくてねぇ(笑)
堀江:もう今は完璧なんですか?
福本:今はやる必要もないし(笑)


福本:その1年後くらいにね、高校生の新人が入ってくることになっててね、先生が喫茶店で「フクちゃん、3か月もすると君は抜かれちゃうと思うけど、どうする?」と優しく言ってくださったんですね。
堀江:それは戦力外通告ですね。
福本:それで、トイレで一人でちょっと考えて辞めたんです。それから1年後にデビューしたんです。
堀江:その1年間に何があったんですか?
福本:それから新聞配達したりしながら3本くらい描いたんですね。それでデビューしました。さすがにアシスタントを1年半いるとね、ちょっと上手くなるんですよ(笑)
堀江:それがあの『ワニの初恋』だったんですよね?(笑)
福本:その前に何本も描いてるんですよ。だいぶ経験をつんで描いたのが『ワニ』なんで、『ワニの初恋』は完成品です!!(大爆笑)あれ、ちばてつや大賞ですよ!
堀江:まぁでも、面白かったですよ。絵のクオリティはともかくとして(笑)


福本: 3本目の作品でね、秋田書店に持って行ったら、生まれてはじめて「面白い!」と言ってもらえて、デビューしました。それはひどいタイトルで『よろしく純情大将』というコメディでした。月刊チャンピオンで、当時21歳ですね。それから、35年やっています。その後、週刊少年チャンピオンでも少しだけ連載したんですよ。その時に入れ替わりで終わった作品が『ガキデカ』です。
堀江・三田:へー!
福本:入れ替えって言っても4~5週?で終わって退場しましたけどね(笑)それで、ちば賞を応募し始めたんです。
三田:私も、アフタヌーンの連載(『空を斬る』)が終わった後に行き先がなくなって、小学館のスピリッツに行きました。そこでまた賞をもらって、新たな掲載が開始できたんです。
堀江:プロでもくれるんですか?
三田:ええ、そうやって賞を取れば、編集部も作家にお金をあげられるじゃないですか。貧乏なのを十分に知っているから、そうやって賞をあげて応援するする。つぎの連載にこぎつけるまで頑張れって。連載がないと、お金を払ってあげられないですからね。そのときは『BOYS OF SUMMER』という作品を連載しました。初めて高校野球を描いたんですよ。そしてこの連載が終わるときに、現「ビッグコミックオリジナル」編集長の堀さんから「ちょっとまとまった仕事をしないか?」って誘われたので、マンガ家として独立する覚悟を決めて、上京したんです。

  

 

そういうところで自分は損していいんじゃないかと。誰かがそれで儲けているわけでしょ? そう思うと気が楽なんですよ。(福本) 

堀江:福本さんいつ位に、マンガ家として上手くいったと思えたんですか?
福本:食えたという意味では、24歳でちば賞の100万円取った時ですね。100万円はやっぱり大きいね(笑)
当時のアパートの家賃は清瀬で9,000円位ですよ。電気光熱費入れて1万3千円位ですね。共同トイレでした。そこに8年くらいいましたね。結構食べれるようになってからも4年位はそこにいましたね。家賃を上げることが怖かったんです。


福本:30代になったころに『天』の連載が始まって、その頃が転機でしたね。あの頃は、麻雀マンガだけで8誌くらいあって、若手には良い時代でした。それで食いつなげました。
堀江:ぼくも福本さんのマンガを知ったのは、あの辺りからです。でも、申し訳ないですが、福本さんの絵も、三田さんの絵も、慣れるまでハードル高かったんです。当時の近代麻雀で、『哭きの竜』とか西原さんとか読んでたんですが、アカギとか飛ばしてました。ごめんなさい。そういう、絵に入れるかどうかってあるじゃないですか?お2人はそういう対策とかしてるんですか?
三田:努力はしてますよ。(笑)
福本:意外と、逆に良くなることもあるんですよね。良く言われるんですけども、ぼくの絵ってすぐわかるんですよ。その「読みにくい」一線超えてくれると、クセになるみたいです。


堀江:ところで、お2人はだいたい年収いくらくらいなんですか?(笑)いや、聞きたいわけじゃないんですけども、そういうイベントなんで。ちなみに、私の月収は給料制で200万円です。自分の会社であるSNS株式会社から毎月給料で出してます。だから年収は2,400万円ですよ~。
福本:まぁ、言わない方が良いんじゃないかとおもっちゃいますね。
三田:今の堀江さんの金額で言うと、我々もプロダクション(法人)という形からの給料制にしているので、普通に考えれば、近いものがありますね。(笑)
福本:あ~、まぁまぁね、そうなんだよね~。


堀江:その法人で利益が出るじゃないですか。そこで出た利益は再投資とかするんですか?
三田:ん、投資とは?
堀江:会社に貯まった現預金とかを、運用されたりとかしるのかな?と。ちなみに私の場合は、法人で出た利益ほとんどベンチャー投資に回っています。宇宙開発とかですね。運転資金はほとんど残さないんですよ。
福本:僕は、本当にそういう才覚がないんですよ。
三田:僕たちって、生活のほぼ9割がマンガなんですよね。だから1週間中、ずっとマンガのことを考えていて、それ以外のことに割く時間がないんですよ。
堀江:じゃぁ、会社に眠っている現預金はどうなるんですか?
福本:僕、ドル預金あります!(笑)会社の!
堀江:そういうのはどうして買うんですか?
福本:いや、銀行に勧められてね。年内に上がるからって言われて買ったんだけども、すごく下がっちゃってね。
堀江:カモじゃないですか。
福本:そうですねぇ。でも、言い方変えると、そういうところで自分は損して良いんじゃないかと。だれかがそれで儲けている訳でしょ?そう思うと気が楽なんですよ。本業ではお金に恵まれているので、そういうところで還元してもいいか…と。まぁ、それ位で考えた方が、気が楽ですし。


堀江:ドル預金いくらあるんですか?
福本:内緒(笑
堀江:ニコニコ生放送の書き込みでは「7億円です」って言われています(笑)三田さんは、『エンゼルバンク』とか投資もののマンガを描かれているじゃないですか。投資を実践したりはしなかったんですか?
三田:投資は、昔ちょっと手を出したことがありますが、今はまったくしてないですね。『インベスターZ』という漫画は、「学費が無料の学校」ってどうやったら実現可能なのかというのを考えているときに生まれてきたアイデアなんですよ。
堀江:へえー。
三田:学校を創設したお金持ちが資金を出して、それを運用することによる運用益で学校経営をすれば面白いって。でも先生たちが運用したんじゃ、普通のマンガになってしまう。そこで、学年トップの学生たちが秘密倶楽部として投資部をつくって、運用すれば面白いって思いついたんです。学び稼ぐことで、主人公たちが成長していく成長物語としても読めますよ。
堀江:めちゃくちゃ良い設定ですよね。僕も、単行本で愛読しています。
三田:ちょうど4巻が出ましたが、いまモーニングに連載中のところでは、堀江さんをモデルにした宇宙ベンチャーも登場しますよ。
堀江:あ、ぼく出てくるんだ。(笑)
三田:ふふ、楽しみにしていてください。(笑)

後編につづく)
 

マネーの拳 1 (ビッグコミックス)
作者:三田 紀房
出版社:小学館
発売日:2005-06-30
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今回のテーマぴったりの、ボクシング元世界チャンピオンがマネーの世界でのし上がる作品。 
 

空を斬る
作者:三田紀房
出版社:講談社
発売日:1990-01-23
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三田先生のデビュー作、なんとKindle化されています! 

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