「金と欲望の描き方とは?」(後編) 福本伸行・三田紀房・堀江貴文 対談

菊池 健2014年07月20日 印刷向け表示
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インベスターZ(1) (モーニングKC)
作者:三田 紀房
出版社:講談社
発売日:2013-09-20
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昨日のエントリーから2日間は、2014/6/17に福本伸行先生、三田紀房先生を迎えて新宿ロフトプラスワンで行われた<「ホリエモン・トークライブSESSION SEASON2 vol.12 金と欲望の描き方とは?」>を、前後編に別けてお送りします。

「金と欲望の描き方とは?」(前編)
 

 <後編>
「売れなきゃ意味ない」という言葉が、既に空虚ですね。あたりまえな話じゃないですか。(福本)

―――質問部
堀江:会場からの質問いきます。「新人のマンガ家の友達がいるのですが、担当編集者が、売れなきゃ意味なしというイケイケの方のようで、悩んでいるようなのです。売れるのは別に良いと思うのですが、人生一人目の編集者にそういう人と当たってしまった友人は、今後どのように付き合っていけばよいのでしょうか?


福本:「売れなきゃ意味ない」という言葉が、既に空虚ですね。あたりまえな話じゃないですか。その編集者が、どうすれば売れると考えているかが重要ですね。同時に、作家はノレないと描けないので、彼の良さを活かして、どのようにノッテ描けるような状況を、同時に築くかが編集者の腕なんですけどね。


堀江:お2人は、マンガの他に何かの仕事をしようと考えたりしたんですか?
三田:私の場合は田舎にいたから、そこでもできるのは創作だなと思ったんです。小説やドラマなんかと比べて、マンガは敷居が低い。コンビニで売ってる雑誌とか買ってきて、どこにどう応募すればプロの漫画家になれるかがわかるじゃないですか。
堀江:じゃぁ、今ならアフェリエイターとかしてたかも知れませんね。
三田:そうですね、昔は何もない状況から何か始めるとしたら、マンガが一番入りやすかったですね。
福本:いくつかあった夢の中で、小説家もありましたが、その中でマンガが一番向いてると、何故か思っちゃったんですね(笑)
堀江:えー!なんでですか??って、みんな言うでしょう(笑)
福本:ぼくが描いた昔の絵はもっとひどくて、知り合いに「良くこれでマンガ家を目指されましたね?!」と言われます。
堀江:西原さんとかでも、一応美大を出てるじゃないですか?! まだ、美大出てたら自信が持てるような気もしますが、どうして福本さんがあの絵でマンガを目指す自信が持てたか(笑)みんな聞きたいと思います。
三田:みんな意外と描かないんですよ。描く前にマンガの学校とか行くでしょ。何かのスキルを身につけないと、できないと思っちゃうんですよね。段階を踏みたがるんですけども、他のマンガ家の単行本をそのまま描くとか、そういうことから始めれば良いんですよ。


堀江:今は、コミPOとかで簡単にマンガが出来たり、コミックスタジオで、写真から絵を作ったり、色々出来ますよね。
三田:でもソフトで作った絵だと、個性が出なくて難しかったりしますね。アイディアがある人なら、うまくできるかもしれませんけども。
堀江:お2人とも、アイディアが良いじゃないですか。だから、今ならデジタルで作品作れると思うんですけどもね。
福本:うちも、仕上げとかには使ってますけどもね。自分は弱くて。
堀江:あと、これはみんなが聞きたいと思うんですが「ザワザワ」ってなんで生まれたんですか?
福本:元々、『天』『アカギ』の麻雀マンガの中で、麻雀マンガって、バストアップの絵ばかりで変化がないので、凄く危ない牌を、通した時なんかに、間を作るために入れたんです。


堀江:次の質問です。「私は30歳のピアノミュージシャンです。3歳からやっているのですが、なかなか売れません。しかし、世の中に対して特に伝えたい事がありません。やはり伝えたい事やハングリー精神がないと、人には伝わらないものでしょうか?」

福本:良く、マンガでも同じ質問を聞きます。ピアノもそうか判りませんが、マンガで言うと、大きなことを描こうとするから描けなくなるんですよね。ほんとに、小さなことで良いんです。自分が感じた、怒りとか悲しみを表現するが良いと思います。


堀江:『最強伝説黒沢』のアジフライの話が好きですね。
福本:主人公の黒沢が、みんなの仕出し弁当にアジフライを一個足しておくけど、誰も気づいてくれない。あげくに自分の弁当が無くて「自分の弁当がないない」と騒いで、返って人望を落とすみたいな。
堀江:あれも実体験ですか?
福本:実体験じゃないんですけども(笑)そこなんですよ。入れ替えれば良いんですよ。例えば、毎日会社で朝早く行って掃除したとしても、誰も気づいてくれないけど、自分で言ったらやらしいと。そういう風に、同じようなシチュエーションでも新しい話が作れるんです。いくつでも応用が出来ます。
三田:わりと真面目な人ほど、自分で考えたものしか描いちゃいけないみたいに思いがちですけども、そんなことないんです。弘兼憲史さんとか、みんなでいろいろ喋ると一か月後にマンガにしてたりするんです。要するに、面白い事をキャッチする力が大事です。新人は、完全オリジナルじゃないと思いこんじゃうんですが、実際は小さなことをキャッチするのが重要ですね。自分も仕事中に聞いてるラジオの投稿ネタなんかを、マンガのネタにしちゃいます。毎日2-3個はネタになるんですが、若いアシスタントさんにそういうことを話すと、世の中にもう出た話はダメなんじゃないかって思い込んでるんですよね。


堀江:福本さん、どう思います?なんか取材しなきゃみたいな。
福本:ぼくは取材とか全然しないです(笑)
堀江:そういえば、ピアノ質問はどうしましょうかね?(笑)
三田:この質問をされた方は、そもそもどの分野でどういう風に売れたいという目標設定をしっかりすると良いんじゃないかなと思います。音楽って、作曲する人が一番儲かるんです。とにかく曲を作って、世の中に広がる場所に曲を提供するしかないんじゃないかなぁ。 


 

マンガボックスは、いま世界で一番読まれていると思うのですよ。(堀江)

堀江:今後、デジタル配信とか増えていく中で、2人はどういう戦略で行きますか?実際、電車の中でマンガ読んでる人少ないじゃないですか。マンガHONZはそういう意識があって始めました。ぼくらの世代はマンガ読む習慣があるので、まだ読みますけども、今の若い世代はそういう習慣がないので、マンガを知るきっかけがないんですよね。昔は雑誌がそういう役を担ってましたが、今は誰もお金出さないですし、そのうち紙のマンガは読まれなくなりますよねー。


三田:紙が無くなるという話はあるけれど、はっきりとそうなるという確証はまだありませんよね。
堀江:長期的に見ると、減っていくかなと思います。自分自身の購買行動でそう思います。自分の場合は、今は半分以上KindleとかLINEマンガとかですね。福本さんも、カイジでアプリストアの有料ランキングを独占してた時期はありましたよね。
福本:はい。


堀江:今のお2人は良いと思いますが、紙が売れなくなったら、どうするか?
福本:出版社が徐々に移行していくと思いますけどもね。雑誌よりカタログ的になって、最初の5ページまでは無料だけども、その先は有料みたいな。ただ、雑誌は新人が世に出る場として機能しているので、新たな新人をどうデビューさせるかですね。
堀江:一つは、マンガボックスみたいなアプリが重要だと思うんですよね。お2人はマンガボックスでは描きませんか?
三田:色々お誘いはありますが、現状は生産量の問題で難しいですね。
堀江:マンガボックスは、アプリが400万ダウンロード(注:イベント時点)もされてて、いま世界で一番読まれていると思うのですよ。でもまだ、一線級の方は描いていなくて、お2人のような方が描けば変わると思います。若い人はテレビを見ずに、ニコニコ動画とかyoutubeを見ています。今までは、大手出版社の雑誌に掲載していれば良かったわけですが、今後はマンガボックスなどの若者に読まれている所に進出するのがよいのかなと思います。
福本:なるほど・・・そんなに見られているという実感はあんまりないんだけども。
堀江:いや、見られていますよ。ただ、一線級の人がいない。多くのマンガ家が注目していないと思います。
最近始めたマンガHONZとかも、まだ影響力は少ないですが、マイナーな面白いマンガを紹介すると、アマゾンの在庫がなくなる位の影響力は持つようになりました。みんな、なかなかマンガを知る機会がないんですよね。5年くらい経つと、マンガボックスに描いているほうが、人に読まれているという世界が来るのではないかなと思います。


三田:コマ割りなどの、マンガという形態のルールが完全に変わってしまうとなると、私たちはついて行けなくなるかもしれません。でも、そこのルールが変わらずに、デジタルへフィールドが変わるだけなら、対応できるかなと思います。だから出版社が紙を辞めると宣言したら、一緒にフィールドを変えるかも知れません。
堀江:そこは、なんとか並行してやれないでしょうか。
三田:やはり、生産量が・・・。


堀江:例えば、毎回何十ページということではなく、毎月2-3ページとかやると、新しい読者を獲得できると思います。お2人はそういったことにも理解があると思うので、是非進出してほしいなと思います。漫画原作のドラマやアニメなど、展開も含めた成功モデルもこれから出来てくると思います。ここに、本格的にプロの方が関わるのが望ましいと思いますし、このままだと既存のマンガ文化が消えてしまうのではないかなと。実際にマンガ雑誌が数千部しか売れてないという話も聞きます。数千部では同人誌ですからね。エントリーメディアとしての役割を果たせてないかなと思います。
福本:編集部が、雑誌をやりながらマンガボックスみたいな所にそっくり載せるということは出来ないのかな?
読む人が増えれば、単行本が売れたりするんじゃないかぁ。出版社ごと行くなら、俺たちも行く事になるかなぁー(笑)
堀江:モーニングはネットに出してますけどもね。私は、早めに動く方が良いと思います。
三田:でも掲載数が限られている、人気がないと退場という競争原理があって、危機感が持てるのは雑誌の良い面だなと思います。
堀江:ネットなら、ランキングをつけて対応していくとか、原稿料をどうするかとか、色んな手が打てるかなと思います。

「金と欲望の描き方とは?」(後編) ここまで。 
 

アカギ―闇に降り立った天才 (1) (近代麻雀コミックス)
作者:福本 伸行
出版社:竹書房
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カイジと並ぶ、福本伸行先生代表作。福本先生作品の各1巻はKindleで99円セール中!
 

最強伝説黒沢 1 (ビッグコミックス)
作者:福本 伸行
出版社:小学館
発売日:2003-06-30
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堀江もエピソードを出した、現在も連載中の話題作。なるほどアジフライだ。 

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出版社:中央公論新社
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