怪談より冷える!アラサー女子のこわ~い話『おんなのいえ』

佐藤 茜2014年07月22日 印刷向け表示
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おんなのいえ(1) (KCデラックス)
作者:鳥飼 茜
出版社:講談社
発売日:2013-04-12
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これは…!これはアカンやつや…!!
読むともれなく恐怖を感じる。だって主人公は絶対に幸せになれない。でも身に覚えがあるようなエピソードが詰まりまくっている。「え、っていうことは、私も幸せになれないってこと…!!?」背筋がゾゾゾ間違いなし。

物語は、29歳の主人公・大前有香が同棲していた彼氏に振られるところから始まります。一旦実家の大阪に帰った後、最終的には東京に戻って妹との同居生活をすることに。それから、主人公と妹・母親が絡みつつ物語が進んでいきますが、とにかく髄所で痛いところを突きまくりです。

例えば、主人公が振られるに至った経緯ですが、

①元々は夢であったイラストレーターの仕事につくために東京に上京。
 バイトをしながらイラストレーターの仕事をちょこちょこ行う。
②彼氏とは出会って10年、つきあってすぐ同棲し3年目。
③彼氏の仕事を応援するためにバイトをやめて常勤の仕事に。
④彼氏の仕事での成功がまるで自分のことのように嬉しい。

一見、いい子に思えます。しかし彼氏からは。

(『おんなのいえ』1巻 鳥飼茜(著))


「彼氏のために」というのは大義名分で、要は夢から逃げて彼氏に人生を丸投げ依存していただけだったということです。

その後、動いても周囲が好転しない・主人公の気持ちもすぐに切り替えられない様子がとてもリアル。残酷で身につまされます。前向きに次の恋愛に移ろうと合コンに行って率先して皿のとりわけなどを行っても、つらい目に合います。
(『おんなのいえ』1巻 鳥飼茜(著))

やめて!主人公のライフはゼロよ!(この後更にめちゃめちゃみじめになります)

主人公は、最終的に自分がどういった人生を歩みたいのか、はっきり定められておらず、それゆえ、どう努力すればよいのか分からずもがいています。昔は人生の選択肢が少ない、下手をすると無い時代もありましたが、今は割と自由。代償としてライフプランを自分で決めていかなければならないのですが、いかんせん分岐が思いのほか多く、どう進めば良いのか分からない。現実でそんなモヤモヤを抱えた方が主人公に自分を重ねて見たときに「ああ、こりゃアカン」と思い胸が痛くなるのだと思います。

そんな主人公を適度な距離で思いやるのが妹と母親。セーフティネット的な役割をはたしていて、暗い気持ちになったときに浮上するきっかけを作ってくれます。この二人がいなかったら主人公はとっくにダークサイドに落ちているに違いない…。家族のありがたさをこんなところで実感することになります。そして実は物語上で主人公と一番密接にかかわっている人物については、今回の文中で一切触れていません。ぜひ読んでお確かめ下さい。ああ、もう、もっとしっかりしろよ!それはダメだよ!と叫ばざるを得なくなります。わかるけど!わかるけど!!!

しかし、形が見えにくい人の闇の部分を、こんなにはっきりと切り出せる作者の技量こそ、一番恐ろしい。人の弱い部分をすべて分かっていて、一言で人を殺せるような気さえしてしまします。

ちなみに友人から、本作最新刊を電車で読んで泣きそうになったと、わざわざLINEでメッセージがきました。

恐ろしい。でも読んじゃう。そのくらい心を揺さぶる一冊です。

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■みかわ絵子『36歳の女子高生 (第65回ちばてつや賞大賞)

(みかわ絵子『36歳の女子高生 (第65回ちばてつや賞大賞)』http://www.moae.jp/comic/chibasho_36sainojoshikosei/1/1)
なんとも気になる冒頭からはじまった短編。Webで全編読めます。
読後、私ともう一人の女性が「恐ろしかった」と言うのに対して男性が「面白かった」と言っていて眩暈がしました…。

きみが心に棲みついた(1) (KCデラックス)
作者:天堂 きりん
出版社:講談社
発売日:2012-01-13
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緊張すると吃音になってしまう、自分に自信のない女性が主人公の話。家族のセーフティネットがなく、ダークサイドに落ちていってしまいます。暴力だけでなく、精神的なDVの描写が巧みで、こうやって人は壊れていくのか…と背筋がぞわりとします。掲載紙が変わって、現在は『きみが心に棲みついたs』として連載継続中。

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ノンフィクションはこれを読め!  2014 - HONZが選んだ100冊
作者:
出版社:中央公論新社
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