HONZ活動記 ~ニューヨーク展~

新井 文月2014年08月07日 印刷向け表示
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「貴殿より申請のありました当広報センターギャラリーの使用につきましては、本件が日米文化交流及び友好親善の観点から有意義な事業と認められるため、これを許可することになりましたので、お知らせいたします」
在ニューヨーク日本国総領事館
 
まさか本当に通るとは思いませんでした。今回、読書を通じてNYで展示を開催したケースを書きます。私は小さい頃から絵を描いてきました。自分の中で、アートで世界に挑戦することは漠然と目標になっていましたが、本当に自分の企画がNYの総領事館に通るとは驚きでした。HONZがスタートして3年間、主にクリエイティブに関する本を紹介してきましたが、実は、私これまで本を読まない人間でした。それがレビューするほど本を読むようになったのは、当然ながらそこに必然性があります。
 
(FLOWER PROJECT:2014年6月、在ニューヨーク日本国総領事館にて一ヶ月開催)
展示のタイトルになっているフラワープロジェクトというグループでは、アートの力で付加価値を創るお手伝いをしています。東日本大震災での被災者の多くは、家を失い今も仮設住宅に住んでいます。私は似顔絵を描くボランティアをきっかけにスタートし、2012年では宮城県石巻市糠塚前団地の仮設住宅の壁70mに龍の絵をボランティアと住民の方達100名と一緒に描くなど活動を続けてきました。仮設の自治会長からは「龍の勢いのように早く復興して、自分たちも前に進みたい。絵を見ることで前を向く力になればと思う」とコメントをいただきましたが、ニューヨーク展ではその制作風景を展示しています。
 
 
読書の必要性ですが、私の場合、単調だった作品の深みを出そうと多読を始めました。ですが結局一番役に立ったのはコミュニケーションでした。たとえば作品を購入したいお客さまと商談するときですが、アートを買おうという人はお金持ちだし知識人なのです。イスラム圏の外交官の人とも話をしてみましたが、経済から美術までどの分野にも造詣が深い。そして欧米でのアートは、作品コンセプトが重要です。僕の『LOVE』という作品は「愛」という文字を布の上に描いて表現していますが、外国人を相手にするときは「なぜ愛という漢字を書くのか」「なぜ書道なのか」、「なぜ複数の色なのか」を説明しなくては納得してもらえません。

村上隆さんの著書『芸術闘争論』では、こうした現実に対しての方法論が書かれています。アーティストがどう理論武装してその世界で生きていくか。僕はこの本から多く教わりました。この本は、HONZに応募して勉強会に入るきっかけとなった1冊ですが、ここから先人に学ぶ大切さに気づき(開拓者は偉大)、沢山の本を読むようになりました。たしか小学校の美術の時間、先生がよく「感じたままに描きなさい」と言っていたのを覚えています。私にとってはそれが嬉しかったけど、ともするとその授業のせいで、感覚的日本人が増えたのではないでしょうか。自分の意見を纏めてクリアに主張するためにも読書は有効かと思います。
 

さて、後からニューヨークの展示には莫大な費用がかかることに気づきました。そのためクラウドファウンディングサイト「READYFOR?」で展示資金を募ることになります。結果は目標額104万円のうち、期日最終日でちょうど達成することができました。このプロジェクトでは、支援してくれた人に対して私が似顔絵などのアートを制作することで、人とのつながりに価値を見出すことを試みましたが、結果気づいたのは、単純に皆が優しいだけでした。本当に有難うございます。この場を借りて御礼申し上げます。

資金を達成した翌日、すぐJFK空港へ出発し、フラワープロジェクトメンバーから3名も同行してくれました(自費)。彼等には、もはや足を向けて眠れません。そしてクイーンズのアートショップで材料を調達、展示前日は深夜三時まで皆でゾンビのようになりながら作業し、そのまま寝ずに出発。搬出当日に全員で『LOVE』の作品を描き搬入完了。無事ニューヨーク展は開催され、会場には世界各国の人達が観にきてくれました。

おかげさまでNY展は大成功に幕を閉じました。現地新聞4誌に掲載され、展示に来てくれた方からも熱いメッセージが届きました。私は成功論を信じませんが、今回やっていて良かったと言えるのは、バリエーション豊富に、とにかく数を打ったことです。震災をきっかけにボランティアを始めたこと、日本で断られても、海外を視野に入れて企画を持ち込んだこと、作品の画風とコンテクストが様々なパターンを展開して挑戦したことは、絵の才能以上に重要だと思います。

日本では、声を大にすれば活動が広まる傾向にあるようです。でもニューヨークでは声を大きくしても聞いてくれません。そのかわり内容が重要です。嬉しいことに現地の人からは「とても興味深い活動だ」、「仮設住宅の人達も、こんなに巨大な龍がいれば精神的な支えになる」など意見をいただきました。驚くのは、ほぼ全ての人が日本の2011年の東日本大震災を覚えていることです。同時に、その後を知らない状況でした。なにより「アートで困難な場所を魅力的にするなんて、とてもエキサイティングな活動だね」と言われることは、最高に嬉しい言葉でした。展示会には偶然、宮城出身の青年が訪れていましたが、彼は涙を流していました。LAからシカゴまで自転車で一人横断してきた途中らしく、感傷的になっていたのかもしれません。 

こんな調子で、今でこそ本のおかげで自分の考えをハッキリ言うことができますが、読書で感動した体験は直接、行動に結びつけました。本は私にとってカンフル剤になってくれたようです。

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2014.9.23「フラワープロジェクト東京展」開催します。
セミナーにご興味ある方はD-laboページよりお申込みください(現在残り50名)
皆様のご参加をおまちしております!
http://www.d-laboweb.jp/event/140923.html

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