『闇金ウシジマくん』はどのようにして始まったのか 堀江貴文が聞く! 真鍋昌平-堀江貴文対談 Vol.3

東海林 真之2014年08月13日 印刷向け表示
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“闇金融”の日常と債務者たちのリアルな人間関係を描く『闇金ウシジマくん』。ドラマ化・映画化もされた同作品はどのようにして始まったのか。そして、今後の新しい展開は、どうなっていくのか。堀江貴文(以下、堀江)が真鍋昌平(以下、真鍋)へ切り込みます。第1回第2回を読んでいない方は、それぞれこちらから(vol.1vol.2)。


 

『闇金ウシジマくん』の取材は、どのように行っているのか

堀江 あの、生活保護の人っていうのも、実際に取材したんですか? 引きこもりでお腹のゆるかった…

真鍋 あれも取材しましたね。生活保護者が多いといわれてる地域に住んでいる方の元へ取材に行きました。若くして生活保護を受けてる人って精神病の治療を受けている人が多いんです。僕が取材した人もウツになって病院で薬処方してもらってるんですが、どんどん症状がわるくなってしまっていました。

堀江 普段はどんな暮らしをしているんですか。

真鍋 僕が取材して印象に残ってる方は、部屋を暗くして、大画面のテレビで「まどかマギカ」を流しながら、合法ドラッグとかお酒とか飲んで、すごい暗い話をしてるんですよ。

堀江 暗い話ってどういう話ですか?

真鍋 一日やることがないとか、女の人と出会いがないとか、ですね。出会い系サイトを使ってるらしいんですけど、ほとんどがサクラだと嘆いていました。過去三人だけ返信来て会ったらしいんですけど、自分のお母さんよりお母さんみたいな人とか、メンヘラですごい太ってる人とかしか来なかったらしくて、そういう人としか出会いがない、とか。そんな話ばっかりですね。

堀江 出会い系とかやってるんですか。

真鍋 生活保護の人たちって孤独な感じのイメージがあると思うんですけど、意外とそうではないケースもありました。若い人たちはコミュニケーションのツールとしてミクシィとかフェイスブックとかを持っていて、割と仲良い人が家に集まって飲んだり遊んだりしてました。

堀江 そうなんだ。

真鍋 ただ、彼らは対人関係において距離感を掴むのが下手なんですよね。話を聞いていて、俺より友達多いじゃんって言うと、「じゃあ俺が友達になってやるよ」っていきなり肩組んできたり。

堀江 (笑)。

真鍋 さっきまでと全然雰囲気が違うな、と(笑)。そこでこっちもふざけて、「俺、友達になるのに条件があるんだよね。XXX出して見せて」って言ってみたんですよ。そしたらその後、その日はちょうど冬で雪が降ってたんですけど、タクシーを降りるときに、外の電信柱の街灯があるところでいきなりパンツ脱ぎ出したんですね。こっちも慌てて、抱擁しながら「そんなことさせたら友達になれないよ」と制したんですけど、するとまた次の日に長文のメールが来て。あの態度は友達としておかしいぞとダメ出しをされました(笑)。

堀江 なるほどね。どうしてそうなっちゃうんですかね。対人関係が上手く掴めないんですかね。

真鍋 ちょっとしたことを気にしてしまうんですよね。バイトで怒られたからってすぐに辞めて、それで自分はバイト続かないって決めつけて社会に馴染めなくなっていったり。また精神的なことかもしれないですけど、胃腸が悪いから長時間働けないって考えて、それで落ち込んで家から出られなくなったりするんですよね。

堀江 真鍋さんって、それをよく取材しましたね。取材楽しいですか? 僕はそういうの取材でもちょっと嫌なんですけど。

真鍋 一応、マンガでこうやって面白いものを作りたいっていうのがあるので。あとは、そこにナマで生活している人たちがいて、どこかしら自分も分からないでもないなって思う部分もあるから、普通に話聞けちゃうんですよね。ただ成長がない人が多いですから、こっちが何言っても無駄だし、生活する場所も全然違うので、申し訳ないけれどずっと付き合うことは無理かなって思いますが。
 

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作者:真鍋 昌平
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堀江 取材して書く漫画ってこれが初めてですよね? 一番最初の企画は、どうやってはじまったんですか?

真鍋 スピリッツの編集の方がいっぱい本を持ってきて、何か一緒にやりませんかって言われたのが始まりです。その時、自分は人間ドラマがやりたいなと思っていたんですね。そこでちょうど、ある人が闇金の人に捕まってわ―ってなってるシーンの絵を描いていたんですが、このお金の貸し借りをテーマにしたら、いろんなお話ができるかなって思って、はじめました。そこからすぐに、1冊分の話を作ったんですよ。それを編集長に見せて、その後、ライターの人を紹介してもらって企画をたてて、という具合に進んでいきました。

堀江 なんでこういう漫画作品ってなかったんですかね。『ミナミの帝王』とか『ナニワ金融道』とかはありましたけど、僕は『闇金ウシジマくん』のほうがリアルだなって思ってるんですよ。闇金の世界って、読んでいても自分はここまでは入ってはいかないなって思う世界ですけど、ウシジマくんの世界ってすごく身近にあるんですよね。なんなら僕の友達そこにいますよっていう世界。一歩間違えるとそこ入っちゃうなって思う。近いんですよ。あと独特の台詞回しがおもしろいですね。あれは真鍋さんの芸風ですか?

真鍋 分からない業界用語は、ライターの人に監修してもらっていますね。こういう会話や台詞回しがあるよというものを教えてもらい、おもしろかったらそれを使ってます。

堀江 あと、ほらあの「ニギニギ」とか。

真鍋 ああいうのは自分で考えますね。

堀江 あれ、また福本さんの「ざわざわ」とは違った、ある種の気持ちわるさがあるじゃないですか。あの雰囲気。それが伝わってきますよね。

次回シリーズの構想について

堀江 次のシリーズは、何をやるんですか?

真鍋 今はまだ言えないんですけど、ちょっと派手にやろうかなって思ってます。

堀江 真鍋さんは色々な人たちに取材してますけど、身の危険とかって感じないですか。

真鍋 一応いま会ってるような人たちは、本当に自分に来るような人たちじゃない人を選んでもらってるから、多分大丈夫です。もちろん、警戒はしています。

堀江 けっこう会っているんですよね。

真鍋 いろいろと紹介してもらってるから、どんどん知り合いが増えるんです。中には酒が入って地が出ると、危険人物丸出しになる方もいるから油断出来ないです(笑)。

堀江 だから僕もできるだけそういう人たちと近づかないようにしようとは思うんですけど、たまにキャバクラとかで向こうから話しかけられたりするんですよね。ほんとうは個室オンリーとかにしたほうがいいんですよ。個室だと入ってこないので。けれど誰かに誘われて、たまたま六本木のオープンな場所にいたりすると、会っちゃったりするんですよ。半分芸能、半分やくざな人、いるじゃないですか。

真鍋 顔が売れていることって、たいへんですよね。

堀江 刑務所に入ったことで、その界隈の人に対しては、ハクがつきましたからね(笑)。だから僕は、一人で絶対に行動しないんですよ。だいたいマネージャーと一緒にいますし、すごく仲のいい飲み屋じゃないと一人じゃいかないです。一人で電車とか乗れないですよ、ほんと怖いですから。

真鍋 一人で行動できない生活って結構きついですよね?

堀江 そうでもないですよ。でも誰かと一緒にいるだけで声かけられないですね。それはそうと、よくその取材に踏み込みますよね。でもそこまでしないと、話にならないですからね。

真鍋 まぁでも、ライターの人とか、本気でそういうテーマを追っている人に比べたらぜんぜんですからね。彼らは本当にすごいと思います。

堀江 ライターさんって複数いらっしゃるんですか?

真鍋 そのテーマだったら詳しいライターという人がいるんですよね。だから自分が知りたい情報に詳しいライターの方を編集の方に紹介してもらう形でやっていますね。

堀江 後は連載しながら取材していくって感じですか?

真鍋 そうですね。

堀江 未だに闇金のウシジマみたいな人っているんですか。

真鍋 店舗でやってる人はめちゃくちゃ少ないっていうか、ほぼいないって言われてますね。

堀江 ウシジマぐらいやっている人はいるんですか。どれくらい儲かってるんですかね。

真鍋 どこまでが本当か分からないですけど、金融屋がものすごく繁盛していた時代は店舗をどんどん拡大して、稼いだ金額が数十億あるって聞きました。すごいですね。

堀江 店舗って、違法金融とかをしていたんですか?

真鍋 そうですね。稼いだお金を元手に表の商売を初めて成功した方もいました。表と言っても、かなりグレーな会社でしたが(笑)。

堀江 なるほどね。未だに闇で稼いでて、多分納税とかしてないんですよね。納税していれば、そんな捕まることもないんじゃないんですか。わからないですけど。

真鍋 だから表の仕事はちゃんとやってて、そこではもちろん納税もしてるんだと思います。

堀江 表の顔があるんだ。僕も出会い系サイトやってる人は何人か知ってるんですけど、たまに脱税で捕まってるんですよね。脱税さえしなければ出会い系サイトとか捕まえることできないんですけどね。

真鍋 あぁ、違法ではないんですね。

堀江 うん。でも脱税しちゃうんですよね。なんでですかね。しなきゃいいのに。

真鍋 なんでするんですかね。

堀江 でも確かに残んないんですよ、お金が。残らないというか、正確に言うと、こんなにお金入ってくるんだと思って使っていると、納税は後から来るので、そのときにお金が残っていなくてごまかすしかない、ってパターンが多いみたいですね。例えば、5000万円儲かってキャッシュが入ってきたら、嬉しくて使っちゃうんですよ。けど、2500万円は税金で持っていかれますからね。あとは、その後の運転資金に1000万円必要だとか。このお金が必要なときには、すでに使ってしまっていてない、というパターンです。

真鍋 なるほど。

堀江 さらに住民税がやってきたりね。住民税って次の年くるじゃないですか。あれもみんな忘れたころにやってくるので、油断していると困るんですよね。

真鍋 なるほど。…ところで、この対談ですが、どう考えても俺の話より、堀江さんの話の方が多くなっちゃってますよね(笑)。

堀江 (笑)。こういう風に、取材しているんですね(笑)。

(インタビューの第1回はこちら第2回はこちら。)

聞き手:東海林真之、構成:宗司
 

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作者:真鍋 昌平
出版社:小学館
発売日:2004-07-30
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