マンガHONZのレビューで、一番買われたマンガは何だ!? 『買われたマンガランキング 7月』

東海林 真之2014年08月24日 印刷向け表示
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今回も『先月の買われたマンガランキング』を発表する。
これは、毎月投稿される数々のレビューのなかから「(紹介されたマンガを)思わずポチッと買ってしまうような、惹きつけられるレビューはどれだったのか?」を選ぶというランキングだ。

いままで3回に渡り、「2-4月までに買われたマンガ総合ランキング」、「5月に買われたマンガランキング」、「6月に買われたマンガランキング」を発表してきた。そして今回、第4回目として、7月に買われたマンガランキングを発表する。

『7月に買われたマンガランキング』 BEST 5

7月に買われたマンガのBEST5を発表すると、次のとおりだ。
 

順位 作品名 作者 レビュアー
1位 デモクラティア 間瀬元朗 角野信彦
2位 編集王 土田世紀 佐渡島庸平
3位 バーナード嬢曰く 施川ユウキ 山田義久
4位 HUNTER×HUNTER 冨樫義博 小林琢磨
5位 銀と金 福本伸行 小林琢磨

お決まりのカウントダウン形式で、まずは第5位から紹介していく。

第5位は、『銀と金』(福本伸行)である。紹介していたレビューは、小林琢磨による「ギャンブル漫画史上最も痺れる台詞が登場する福本漫画の最高傑作『銀と金』」だ。

小林琢磨のレビューの特徴は、「熱さ」である。
若き経営者でもある小林が紹介するマンガは、アツくシビれるものが多い(「魂が震える一冊『G戦場ヘブンズドア』」、「魂は合っているか!?『大東京トイボックス』を読んで起業した男のレビュー。」)。そしてまた経営者だけあり、お金をテーマとするマンガを時おり取りあげている(「いつか起業したいと考える新社会人の必読書『マネーの拳』」)。

今回のレビューはその合わせ技、とも言えるだろう。
お金のテーマをアツく語る。小林琢磨の真骨頂だ。

銀と金―恐怖の財テク地獄変 (1) (アクションコミックス・ピザッツ)
作者:福本 伸行
出版社:双葉社
発売日:1992-07-17
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続く第4位は、『HUNTER×HUNTER』(冨樫義博)。紹介していたレビューは、これまた小林琢磨である。「【ネタバレなし】単行本派も今だけはジャンプを買え!『HUNTER×HUNTER』の展開が神すぎる!」だ。

HUNTER×HUNTERのような名作をレビューすることは、難しい。小林琢磨もそれは知っている。だが、レビューをしたい衝動には抗えなかったようだ。再開した作品が、それほどおもしろかったのだという。

そこで敢えて「ネタバレなし」というレビューの仕方をしたのだろう。レビューなのに、ネタバレしない、すなわち内容に触れない。矛盾しているようで、おもしろい試みだ。そして結果として、小林琢磨の「アツさ」が存分に生かされた魅力的なレビューとなっていた。


冨樫が天才たる所以は「ヒキ」にある。
(中略)
しかしながら冨樫の真骨頂は、次の話をすぐにでも読みたくなる様な、例えるなら明日大事なテストがあって勉強しなくちゃいけないのに、将来を左右する様な大事なテストで、今だけは勉強しなくちゃいけないと頭で分かっていながらも続きを読む事が辞められない、そんな絶対的な本能に訴えかける「ヒキ」の素晴らしさにある。

少なくとも私は、このレビューをきっかけに『HUNTER×HUNTER』を久しぶりに読み始めてしまった。ところで現在のところ、またもや『HUNTER×HUNTER』は「休載」が続いている。「ヒキ」が素晴らしいうえに、休載続き。読み始めた私を、どうしてくれるんだ。

ハンター×ハンター (No.1) (ジャンプ・コミックス)
作者:冨樫 義博
出版社:集英社
発売日:1998-06
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第3位は、『バーナード嬢曰く』(施川ユウキ)である。紹介していたレビューは、山田義久による「本好きに捧ぐ漫画『バーナード嬢曰く。』」だ。

山田義久のレビューは職人芸である。マンガHONZの理念である「眠れるおもしろいマンガを発掘し、その魅力を届ける」をもっとも体現していると思う。

『まんが 医学の歴史』のレビューがその真骨頂だったが、今回の作品もまたトガっている。書き出しからして、ターゲットを絞りすぎだろう。

この作品は、“本”好きにしか理解されない”漫画”だと思う。

しかしその後の続けかたが、上手い。

というのも、本好き達が、小説、SF、ノンフィクションなどなど、自分が好きな本に対する歪んだ愛情を語り、内輪で盛り上がっているだけの話だからだ。
しかし世の中、歪んだ愛情ほどおもしろいものはない。

ターゲットではない私も、レビューを読み進むうちに、どんどんこの作品への興味が湧き起ってきた。このレビューから多くのマンガが買われ、今回3位にランクインしたのも納得である。まだこのレビューを読んでいない方は、ぜひ読んでみてもらいたい。知らなかった世界を、知ることができるはずだから。

バーナード嬢曰く。 (REXコミックス)
作者:施川 ユウキ
出版社:一迅社
発売日:2013-04-19
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第2位は、『編集王』(土田世紀)である。紹介していたレビューは、佐渡島庸平による「直球しか投げなかった男・土田世紀『編集王』」だ。

マンガHONZ編集長である佐渡島庸平のさすがのレビューである。作品の紹介を、その作品を作り出した「マンガ家 土田世紀」という男の生き様と共に語り、その魅力を伝えている。

土田世紀の作品を読んだことがない人はもちろん、読んだことがある人も、改めてその魅力に気づき、読み返してみたくなるレビューだろう。

編集王 1 あしたのジョー (BIG SPIRITS COMICS)
作者:土田 世紀
出版社:小学館
発売日:1994-07
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そしていよいよ第1位。それは『デモクラティア』(間瀬元朗)である。紹介していたレビューは、角野信彦による「「無敵の人」に対処する方法はあるのか? 秋葉原通り魔事件をモデルにした『デモクラティア』」だ。

角野信彦のレビューは、ひとつの論文ではないかと思う。切り口が独特であり、だからこそ、おもしろい。

先月の1位に輝いた『レッド』でも、連合赤軍事件のわかりにくさを、1つの事象に多くの解釈が与えられている点にあると看破していた。そして、両論がそれほど矛盾なく一つのストーリーになるように状況を組み立てて描いているのがこの作品の特徴であること、その描き方を実現できているのがマンガという媒体の特殊さであることを述べていた。この切り口が、分析が、ひとつの読み物としておもしろかったのだ。

今回の『デモクラティア』も、作者である間瀬元朗がテーマに選んだのが「民主主義」であると看破する。そして、インターネットが民主主義に与える影響、「集団の叡智」が社会問題を解決することはできるかという論点を骨子に、作品をレビューしていくのだ。

改めて、またこの表現を使いたい。
マンガだけでなく様々な参考文献から角野信彦が紡ぎあげたレビューは、それだけでおもしろい1つの読み物なのだ。まだこのレビューを読んでいなかった人は、ぜひ読んでみてほしい。

デモクラティア 1 (ビッグコミックス)
作者:間瀬 元朗
出版社:小学館
発売日:2013-12-27
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「買われたマンガランキング」の取扱説明書

さて、今回も最後に、『買われたマンガランキング』 の使い方についてふれておきたい。

このランキングでは、実際に本が買われたレビューがいいレビューだと言いたいわけではない。マンガHONZのレビュアーは(レビューを読めばわかると思うが)様々な個性に満ちているし、紹介する作品もその個性にあわせ、様々である。

ならば読者の立場としては、自分の心に届くレビュー、共感するレビューを見つけ、次にそのレビュアーのレビューを追ってみるといいのだろう。レビュアーの想いや視点を読み解きやすくなり、したがって紹介されたマンガへの評価判断もしやすくなる。

その結果、アタリのマンガに出会う確率があがるというのは、わくわくするのではないだろうか。

今回で第4回となる『買われたマンガランキング』。このランキングが、自分に合ったレビュアーを見つけるきっかけとなり、そして新たなマンガとの(幸せな)出会いを生んでくれると、私たちも嬉しい。
 

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出版社:中央公論新社
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