リア充になる秘訣は「強くてニューゲームを始めましょう、何度でも」『サヨナラフラグ』

佐藤 茜2014年09月08日 印刷向け表示
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サヨナラフラグ (フィールコミックス) (Feelコミックス)
作者:マキヒロチ
出版社:祥伝社
発売日:2014-01-08
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失恋話さえもうらやましいとはどういうことだ!
表へ出ろ!!登場人物全員リア充じゃないか!!

現代の働く独身アラサー女子を描く漫画家をピックアップするなら、マキヒロチさんははずせません。なにせ、出てくる子がみんなかわいい。雑誌のスナップに掲載されているような流行のファッションにヘアスタイル、女子会、宅飲み、愚痴をこぼせる学生時代からの友人、よい上司、職業もおそらく横文字系(という言い方ももう古いですね)。ひたすら家に引きこもって2ちゃんねるニコ動漫画ゲームのフルコンボを決めるような非リアな子は一人もいません。まぶしい。

そんな働く(私から見たら)キラキラ女子たの煌めきの裏側にある部分を描いたのが、本作『サヨナラフラグ』です。7作の短編集からなるオムニバスで、実に色々な角度から悩みを描いています。

ただ、彼女たちは悩みを抱えているにも関わらず、全員どこかうらやましい部分を持っています。それは別に誰にも負けない才能があるとか、境遇が恵まれているとか、見た目が抜きん出て優れているというシンデレラストーリーのような棚ぼた的チャームがある訳ではなく、いずれも「失敗しても、次のステップにあがろうとしている」人だからです。

例えば掲題作品である『サヨナラフラグ』。
彼氏との帰り道の一コマ。


(『サヨナラフラグ』マキヒロチ(著)フィールコミックスより)

冒頭でいきなり振られてしまいます。しかも、特に男性側から理由を明言されてないのでもやもやするし、すごく悲しいのにもう結構良い年なのでみっともなくすがることもできずに(見た目上は)あっさり分かれてしまいます。リアル。やだやだなんでなんで、とか言えないですよね。画像にも記載がある通り、「いつフラグが立ってたか、教えて?」と、混乱しています。現実では回避ルートもなく別れ話は突然に、という、残酷な、現実。

数日後、主人公の女性は友人との宅飲み会で振られたことを告白します。学生時代につきあっていた元彼(今はよい友達)もその場にいたのですが、別れた理由がお互いはっきりしなかったため、書き出して見せ合いっこすることに。

その結果がこちら。

(『サヨナラフラグ』マキヒロチ(著)フィールコミックスより)

わはは!!くだらん!!でも学生時代なんて、つまらんことで相手に幻滅してしまうものなのですよね。理想がありますし、将来に対する猶予があるのですぐに次にいけるというか。この稚拙さがいっそ愛おしいくらいです。

それはさておき、問題があったときに悪かった点を振り返ることはビジネスではもちろんPDCAなどで明言されていますが、いざプライベートとなると中々難しいことです。しかし主人公はそこに真正面から取組み、結果、新たな展開を迎えることになります。

失敗を糧にすれば、それは失敗ではなくなる。立ち上がると、何かしら明るい未来が見える。失敗が死ではなく、経験値をためたことになる。またゲームは始められる。この前向きな姿勢こそが、リア充の秘訣なのではないでしょうか。そんな、ともすれば陳腐になってしまいそうな、でもとても大事なことを実感させてくれる。読むと、「いっちょ私もがんばろうか」と思わせてくれる。

そんなステキな話がつまった作品です。
読めば何度でも回復できます。栄養ドリンクがわりに、一つ、いかがでしょうか。

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