ラフからだって18番グリーンにはつながっている。『黄金のラフ』

佐渡島 庸平2014年09月11日 印刷向け表示
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黄金のラフ―草太のスタンス (1) (ビッグコミックス)
作者:なかいま 強
出版社:小学館
発売日:2000-06
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ニヤニヤしちゃう。
『黄金のラフ』の主人公・藤本のバカっぷりは、にやけずにはいられない。
ワクワしちゃう。どんな時もバーディーを狙う無謀さに、いつのまにかかっこよさを感じて、応援し始めている自分がいる。さらに、うらやましくなっちゃう。藤本には、最高の仲間がいる。その絆に憧れをいだく。

最高の肉体を持っているけど、頭が足りなくて、いつまでも勝てない藤本。
フォームの理論はあるけど、肉体がない谷田部。
コースを読む力が一流の大子。

3人はそれぞれ一流の才能を持っている。しかし、一部分であるがために、プロの世界で勝つ事ができない。それで2人は、才能のある藤本に自分の人生全てを賭けて、チームを組む。選手、コーチ、キャディとして、一人では目指せなかったトップの座を3人で目指していく。

たいていのスポーツものは、能力のある主人公が、ちょっとずつ才能を開花させていく様子が描かれる。仲間が魅力的に描かれていても、やっぱり脇役は脇役で、主人公を華やかにするための存在でしかない。

『黄金のラフ』は、3人ともが主人公だ。一人の成長ではなく、3人がどのようにして相手を信頼し、バラバラだったのが一体となり、能力を発揮できるようになるかが見どころだ。

指摘する人は少ないが『黄金のラフ』は仲間の絆の描き方がすごくうまい。僕はかなりたくさんの新人漫画家に、3人がチームとして機能するまでの描き方を参考にするように『黄金のラフ』を渡してきた。

ゴルフをやったことがなくても、その3人のやり取りの面白さで十分に楽しむ事ができる。でも、やっぱりこのマンガは、ゴルフ好きにお勧めしたい。ゴルフをやっている人なら、このマンガの細部まで最高に楽しめるはずだ。作者のなかいまさん自身がゴルフを大好きなんだろうな、ということが伝わってくる。

起業する前、僕はゴルフにかなりはまっていた。2メートルのパットを5回連続でいれてからでないと家を出ないというルールを決めて、このパットを入れないと、打ち合わせに遅刻する!という緊張感を楽しみながら練習していたほどのゴルフ好きだ。

正直、あまりにもゴルフが好きすぎるので、ゴルフをしない人が『黄金のラフ』を読んだら、どんな風に感じるのかうまく想像できないぐらいだ。

藤本のゴルフのフォームは、見開きの絵から、どこまでも飛ばしそうな力強さが伝わってくる。この絵を見てしまうと、影響を受けてバックスィングがいつもより大きくしなってしまう。そして、パターを打つ時に、絶対ショートさせずに、カップの反対側にぶつけていれてやろうって、気持ちになる。マンガを読むことで変化する自分が楽しい。

藤本が言うこの台詞をかっこいいと思ったら、あなたは、きっとこっち側の人間だ。

「確かにオレ達ゃ花のフェアウェイは歩けねえかも知れないけどよ。ラフからだって18番グリーンにはつながってんだ。三人で胸張ってラフん中歩いていこうぜ!」

藤本とキャディの大子の絆を別のプレイヤーは下記のように話す。 

「なぜあんな危険を冒す」

「キャディの信頼を失いたくないから!あのキャディはプレーヤーの腕を信頼し、多少のリスクも覚悟した上で、あえて最高のポジションを設定したんだ」

「結果はOB。信頼も何もないだろう」

「そう、あのOBでプレイヤーへの信頼は揺らいだと思う。そこでもし打ち直しをもっとセーフティに変えていたら・・・(中略)キャディのコースマネジメントが“最高のポジション優先”から“安全なポジション優先”になるのさ。いつでも最高のポジションを指示してくれと、自分はその信頼に応える用意はあると証明したのさ!」

作中には、『風の大地』の主人公をパロディにしたキャラクターも出てくるので、もしもゴルフ好きで読んでいない人がいるならば、こちらもお勧め。
 

風の大地 (1) (ビッグコミックス)
作者:坂田 信弘
出版社:小学館
発売日:1991-03
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