歴史や薀蓄もいいけど、まずは紙面からお茶の味や香りを読み取ってほしい『茶柱倶楽部』

永田 希2014年09月19日 印刷向け表示
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茶柱倶楽部1巻 (芳文社コミックス)
作者:青木幸子
出版社:芳文社
発売日:2010-10-22
  • Amazon Kindle

こちらから試し読みもできます!

「お茶」を題材に、父子対決のない『美味しんぼ』を描いたらどうなるか。そう紹介するのが妥当な気もしつつ、薀蓄や料理対決ではなく、主人公の素朴な性格に魅力を感じるもよし、作中に登場する様々なお茶の種類や淹れ方を知る楽しみを味わうもよし。 

でも本当にオススメしたいのは、その様々なお茶の種類と淹れ方についての本作における「描写」そのものです。世の中には種類も淹れ方も色々なお茶があります。身近なものを見ても、ウーロン茶、緑茶、紅茶、ほうじ茶、麦茶などなどたくさんの種類がありますね。本書ではたとえば静岡は本山の軽発酵茶「春巡」というお茶が紹介されています。 

日本茶の名産地である静岡と、発酵茶である烏龍茶が有名な台湾との意外な関係についても作中で触れられているのですが、先ほども書いたとおり、本作で注目してほしいのはその「描写」です。お茶の淹れ方からその味わいまで、紙面の上に表現されたその描写が実に良い。上掲の試し読みでも感じていただけるかとは思いますが、もう2つほど、いま触れた「春巡」を淹れるシーンとそれを味わうシーンの文字での描写と、別のお茶の「描写」の文字部分を引用してみます。 

まずひとつめは「春巡」を淹れて飲むシーンから。

蓋碗(フタ付きの椀)に熱湯を入れ温めたら茶碗に移します
茶葉を7g入れたら先程の湯を戻し…
一煎目70秒―
注ぎます

花の香り――
さんぴん茶のジャスミン香ともまた違う…
蘭のような―夢にさえ忍び込みそうな艶光る華やかな花香

続いて、「春巡」と同じ静岡の、今度は清水産の「香駿」というお茶を淹れて飲む場面を。

5gの茶葉を入れた急須に保温ポットのお湯を50cc入れてすぐに常温の水を50cc入れ ゆっくりと……20回ほど ゆっくり回せば これで30秒 お湯は40~50℃になっているのでガラス杯でも大丈夫 ゆっくりと最後の一滴まで注ぎ落とします

色は白砂に寄せる浅瀬の波頭 静岡清水産「香駿」

明るいコクが舌に降り ふくらんで広がる
早朝の草原で 開いたばかりの花が放つような 
晴れ晴れしい香り
気持ちが和ぐでもなく弾むでもなく 澄んでいく

初めて飲む香りだ

「香駿」は お茶の品種名です
特徴のある芳香を持つ新品種に天竜茶伝統の仕上げをしました
茶づくりの意志のこもった一品―

そんなにいろいろ違うんだ

はい

この一杯ができるまで どれだけの人が関わっているか…
喫茶の週間の伝来から始まって 
品種改良・栽培方法 仕上げの技 
流通… 販売… 別にそれらを知らなくても この茶に変わりはないです でも
私は知りたい
 

『美味しんぼ』と同様に、お茶の薀蓄や品種を語るために物語はご都合主義的に展開していくのですが、最新刊の第6巻に至るまで一貫して「お茶」をめぐる物語が描かれており、登場人物たちのドラマの根底に、現実のお茶の歴史と、現実のお茶の「味わい」が横たわっていることが伝わってくる重厚さが見事です。

「お茶の歴史」と言っても様々で、焦土と化した沖縄の人々が、地理的にも歴史的にも近い台湾と第二次大戦後に行なっていた密貿易の話題など、いわゆる「お茶の歴史」についての本を紐解いたところでなかなかお目にかかれないようなエピソードが出てきたりするのです。

ナツコ 沖縄密貿易の女王 (文春文庫)
作者:奥野 修司
出版社:文藝春秋
発売日:2007-10
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上掲書は、作中でも言及されている1冊。このほか、お茶に関しても、作中に登場するお茶を買えるお店が巻末にまとめられていたり、虚実の混淆の仕方が面白い作品です。美味しいお茶が飲みたくなる作品ですね。
 

茶柱倶楽部1巻 (芳文社コミックス)
作者:青木幸子
出版社:芳文社
発売日:2010-10-22
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茶柱倶楽部2巻 (芳文社コミックス)
作者:青木幸子
出版社:芳文社
発売日:2011-11-22
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茶柱倶楽部 3 (芳文社コミックス)
作者:青木幸子
出版社:芳文社
発売日:2012-08-16
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茶柱倶楽部 4 (芳文社コミックス)
作者:青木 幸子
出版社:芳文社
発売日:2013-05-16
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茶柱倶楽部 5 (芳文社コミックス)
作者:青木 幸子
出版社:芳文社
発売日:2014-02-15
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茶柱倶楽部 6 (芳文社コミックス)
作者:青木 幸子
出版社:芳文社
発売日:2014-09-16
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  • 丸善&ジュンク堂
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