「赤いタコさんウィンナーは好きですか?」素朴な料理が深夜の飯テロに!『深夜食堂』から『孤独のグルメ』などグルメ漫画4選+1

菊池 健2014年09月25日 印刷向け表示
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深夜の飯テロ」という言葉が、ネット界隈、特にTwitterあたりでは、完全に定着化しています。夜中に美味しそうなものを見せて、視聴者を悩ませる実写ドラマの出来が良い時に、主にネットで見られる反応です。

昨夜は、ドラマ『孤独のグルメ』Seazon4最終回でしたが、ハッシュタグ「#孤独のグルメ」は、1分も目を離すと話の流れが追い切れなくなる勢いです。私のタイムラインでは、日本人のほとんどが孤独のグルメを観ているのではと、見まごうばかりでした。

そんな深夜の飯テロの4大ストーリーと言えば、『深夜食堂』『孤独のグルメ』『花のズボラ飯』『めしばな刑事タチバナ』です。全てマンガ原作の実写深夜ドラマです。今回は、ここに深夜飯テロの黎明と思える個人的1作を加え、全部で5選の料理とともに紹介します。

「赤いタコさんウィンナー」の破壊力『深夜食堂』

深夜食堂 1 (ビッグコミックススペシャル)
作者:安倍 夜郎
出版社:小学館
発売日:2007-12
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ドラマ:第1部第1話「赤いウィンナーと卵やき」 / 単行本1巻第1話「赤いウィンナー」

『深夜食堂』は、新宿ゴールデン街と思しきあたりで、深夜0時から翌朝まで営業する、文字通り深夜しか開いてない、味わい深い食堂を舞台とした人情話です。

メニューは、これ(豚汁)だけ! あとは、勝手に注文してくれりゃあ、できるものなら作るよってえのがオレの営業方針さ。 

という渋いマスター(ドラマでは小林薫さん)と、最初に絡んだキャラクターが、泣く子も黙る新宿の若頭「竜ちゃん」です。(同、松重豊さん)

[ 引用:『深夜食堂』第1巻(小学館)]

表紙絵のカラーイラストもそうですが、素朴なタコさんウィンナーの美味しそうなこと!

大人の経済力であれば易々と食べられるこの食材が、シチュエーションの中で、この上なく愛おしく、強面の竜ちゃんが食べることによって、更に得体の知れない魅力を帯びます。ストーリーはこの後、2丁目のゲイバーでこの道48年、子寿々さんとの人情話にはいります。こここそが深夜食堂の味なのですが、どうぞマンガをご覧ください。

ところで、ドラマでの竜ちゃん役は『孤独のグルメ』の主人公、松重豊さんです。この配役も小難いですね。マンガでは、安倍夜郎先生独特の絵が、ドラマでは役者さんたちの名演技が、味に味を重ねて素朴な食べ物を、とてつもなく美味しそうに見せてくれます。

そして、10月からの深夜食堂は、ドラマ第3シーズンが放送開始、同時に映画化も発表されました。この深夜食堂については、原作を知ってる話がドラマで始まった時に、あのなんだか判らない嬉しさはいったいなんなんだろうと思います。話は判ってるのに、改めてお芝居されると、その時の料理と共に、強烈に脳と胃を刺激して離してくれません。ドラマ開始前に、マンガの方も是非。

安倍夜郎先生デビュー単行本『山本耳かき店』のレビューは、こちら。
『山本耳かき店』 誰も知らなかった官能の世界

 

「人間火力発電所」という名台詞を生んだ、深夜焼肉の威力。『孤独のグルメ』

孤独のグルメ 【新装版】
作者:久住 昌之
出版社:扶桑社
発売日:2008-04-22
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ドラマseazon1第8話「神奈川県 川崎市 八丁畷の一人焼肉」 / 1巻第8話「京浜工業地帯を経て 川崎セメント通りの焼き肉」

深夜飯テロの中心選手、このエントリーの前夜にドラマのseazon4が終了した『孤独のグルメ』です。主人公、井之頭五郎というおっさんが一人で黙々と食べるシーンに、心の中の独り言が重なるという独自の展開が、完全に多くの人を虜にしました。何度も言いますが、人見知りのおっさんが一人飯を食ってるところを観てるだけの作品です(笑)

もう一つの特徴は、マンガ・ドラマ共通の原作者である久住昌之さんが、その日のドラマに登場した店を実際に訪れるミニコーナー「ふらっとQUSUMI」で、氏が完全にノリノリに出演していることです。あれはもう心底楽しんで作っているに決まっています(笑)漫画原作話は少ないのですが、ドラマ用のシナリオが多いのも、なんとなく頷けます。

[ 引用:『孤独のグルメ』(扶桑社)]

人が食べているところを見て、羨ましいと思う食べ物のトップは、なにせ焼肉でしょう。ミシュランやザガットサーベイで、日本の焼肉屋さんが3つ星を取るようになって久しいですが、世界的権威の食通をして「世界で一番旨いものは焼肉だ」と言わせたとか言わせないとか。とにかくインパクトが凄いです。

孤独のグルメの魅力は、主人公の五郎が、黙々と旨そうに食べる所と同時に、アテレコの独り言に名言が続出することですが、この回の名言は全編でも屈指のこれです。

最早、LINEのスタンプになる勢いなわけですが、一人焼肉もこれがまた堪らないですね。このスタイルは本当に発明だと思います。私も何店か行って列に並びました。

放送時間中は、Twitterのトレンドの幾つかが、「お通し」とか「雪解け」とか、終いには「久住さん」などと、もうわけの判らない孤独のグルメワールドになります。視聴率は1%~2%ほどなのだそうですが、Twitter上ではほぼ100%の占有率で、これはまぁ、Twitter本社の首脳陣も「バルス」同様、訳が分からないことでしょう。

マンガHONZの過去レビューの中では、マンガHONZ代表のホリエモンもレビューを。
『孤独のグルメ』なんて変なグルメ漫画なんだコレは!

あと、久住さんはネットラジオにもご出演されるようです。やっぱり収録では飲むんでしょうか(笑)

 

電車で盗み聞きしたレシピが激ウマ、名もない豆腐ごはん『花のズボラ飯』

花のズボラ飯
作者:久住 昌之
出版社:秋田書店
発売日:2010-12-20
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ドラマ 第2話「明太子豆腐丼&--」 / 単行本2巻 18皿め「聞きかじったレシピ」

『花のズボラ飯』は、作画が水沢悦子先生、原作はまたあの久住昌之さんです。久住さんどんだけ飯テロなのかという話ですが、秋田書店の「Eleganceイブ」などの連載作品です。ドラマ版の主演は、朝ドラ主演の倉科カナちゃんです。かわいいです。

主人公の駒沢花は、愛する夫ゴロさん(井之頭五郎とは別人)が単身赴任から早く帰ってこないかと一人待つ女の子です。綺麗好きの旦那さんには一つ秘密を隠していて、旦那がいない間は家が酷く散らかっています。たまに旦那さんが帰宅する時は、部屋の掃除をする事が一大イベントなのですが、その時以外は基本的に旦那と食べ物の事しか考えていません(笑)

[ 引用:『花のズボラ飯』第2巻(秋田書店)]

さすが「ズボラ飯」は伊達ではないのですが、これホントに美味しいんですよ(やりました)あと、このレシピを花が電車の中で知った経緯が面白いです。

[ 引用:『花のズボラ飯』第2巻(秋田書店)]

美味しそうにする時の、花のしぐさや表情になんとも色気があるのも、本作の特徴だと思います。孤独のグルメが、心の中の独り言を描写しているのに対して、花は自宅で思いっきり独り言です。この辺り、久住さんは多分、自分の家でも独り言だらけに違いないという思うわけですが、それがまた美味しそうなんですよね。あと、花にはあなどれないボキャブラリーと、食に対する飽くなき探究心というか、常識的レシピに囚われないチャレンジスピリッツがあります。その辺り、やっぱりマンガでも読んで欲しい所です。

 

異常なまでのB級グルメへのこだわり、おかしいと思いつつ食べたくなる『めしばな刑事タチバナ』

めしばな刑事タチバナ 1 [立ち食いそば大論争] (トクマコミックス)
作者:坂戸 佐兵衛
出版社:徳間書店
発売日:2011-03-30
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ドラマ 第四ばな「カップ焼そば大捕物」 / 単行本3巻 第34ばな~37ばな「カップ焼きそば選手権」

『めしばな刑事タチバナ』は原作:坂戸佐兵衛先生、作画:旅井とり先生が『週刊アサヒ芸能』に連載したマンガです。刑事であるタチバナを中心に、取り調べをしているはずがすぐに飯の話になり、その執拗なまでのB級グルメを探求する姿勢が、事件を解決したりしなかったりします。

なにせ、テーマが完全にB級グルメ一本槍で、私もかなりの影響を受けました。「天一」、「餃子の王将」の本店聖地巡礼ネタは、京都出張の多い身としては、とにかく何回あのお店に足を運んだか判らなくなるレベルで強烈な爪痕を残しました。また、ドラマ版第5話の「名古屋めし包囲網」のファーストシーンで、コメダ珈琲のあの小さな豆の袋が出た時は、思わずテレビに向かって「コメダ!」と叫んでしまいました。いったい、この作品の何が私をそうさせるのか、自分でも判りません(笑)

取り調べ中、新人刑事が「カップ焼きそばで捨てるお湯って、飲んだら体に悪そう」と話すと(どんな取調べだ!?:笑)突如激昂する容疑者。その話を聞いたタチバナが、容疑者を北海道出身と見ぬきます。

[ 引用:『めしばな刑事タチバナ』第3巻(トクマコミックス)]

調子づいた容疑者が、北海道民のソウルフード「やきそば弁当」への思いが行き過ぎ、本州のカップ焼きそばトップ3をDisりだすと、今度は別の男たちの心の導火線に類焼します。

[ 引用:『めしばな刑事タチバナ』第3巻(トクマコミックス)]

最早、この容疑者がいったいなんの容疑だったのか、全く置き去られています。
しかも、この展開、毎回です。

以降この熱量で延々カップ焼きそばについて語られ続けます。マンガだと実に4話もの長丁場(笑)超下らないんですが、これを読んでしまうと確実にその時テーマになったものを食べたくなり、毎度わたしは、後が大変です。

また、ドラマ版の主人公タチバナ役は、俳優の佐藤二朗さん。この方「勇者ヨシヒコ」の仏役や、最近ではドラマ版「アオイホノオ」のMADホーリィ役でキレッキレのお芝居をされてますが、個人的にこの方、タチバナを演じるためにこの世に生まれて来たのではないという位、ハマっています。顔からして似ています。本当に立ち食いそばが似合うんですが、なんなのでしょうか?

このやきそば選手権を読んで以来、個人的にNo1としてる「一平」(呼び捨て)を食べる際に、残り湯をわかめスープに入れています。物凄い濃厚なスープになるのですが、なんというか、美味しいのかどうか判然としませんが、確かな満足感です。

 

【番外編】大人の哀愁と袋ラーメン『湯けむりスナイパー』

湯けむりスナイパー 第6巻 (マンサンコミックス)
作者:ひじかた 憂峰
出版社:実業之日本社
発売日:2001-01
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 ドラマ第4話「男の夜食」 / 単行本6巻その2「男の夜食」

+1です。

上記4作品のどれよりも早く2009年春にドラマ化した作品に、「漫画サンデー」連載で、原作・ひじかた憂峰先生、作画・松森正先生の『湯けむりスナイパー』があります。

凄腕の殺し屋であった主人公が、「源さん」と名を変え、秘境の温泉宿「椿屋」で働くというストーリーです。極端な人間ドラマが良い頃合いで、本筋もハチャメチャで非常に面白いですが、この中にもまた、たまらない飯テロがありました。

ある晩、番頭が夜中に宿を抜けて外に出かけます。異常を感じた源が後を追うと、河原に着いた番頭がおもむろに袋ラーメンを作り始めます。

[ 引用:『湯けむりスナイパー』第6巻(マンサンコミックス)]

これが、ドラマ版では番頭役のでんでんさんの名演技で、また美味しそうなんですね。川の水を鍋に無造作に入れて、コンロで暖めはじめたのも、加点ポイントでした。私も、これまであまり食べなかった袋ラーメンに、これ以来突然はまり、今や常食として常に10袋位用意するようになりました。色んな作り方を試しているところなのですが、袋ラーメンの世界もまた奥が深く、その深奥に恐れおののいているところです。

 

というわけで、これらの作品、まぁホントにどれも美味しそうで、全く困ってしまいます。マンガから入るも良し、ドラマから入るも良しで、おかげわたくしも腹部が順調に前に向けて成長し続けております。影響は計り知れませんので、深夜におかれましては、用法用量を守って正しくお使いください。

10月からの『深夜食堂』ドラマ第3部と、映画を楽しみにいたしましょう。

 

孤独のグルメの、公式巡礼ガイド本が出ています。
作中のお店が丁寧に紹介されていて、小さなお店が大変なことになってないか、ちょっと心配ではありますが、本はとっても良い出来です。

孤独のグルメ 巡礼ガイド (扶桑社ムック)
作者:週刊SPA!『孤独のグルメ』取材班
出版社:扶桑社
発売日:2014-07-24
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