ゲーム業界は焦土と化したのか? 『ナナのリテラシー2』

山田 義久2014年09月26日 印刷向け表示
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ナナのリテラシー2
作者:鈴木みそ
出版社:鈴木みそ
発売日:2014-09-22
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このビジネスシーンのリアリティ溢れる作品からは、「働く楽しさ」みたいなものをビンビンと感じる。
容赦ない市場競争のダイナミズムや、実務の過酷さなど、結構厳しい話がズバズバ描かれているが、不思議と悲壮感を感じない。ビジネスの残酷さえストーリーのスパイスに感じるのは、描かれているキャラクター達が放つバイタリティが強烈だからだろうか。それはぜひ、読みながら検証してみてほしい。

電子書籍を取り上げた一巻(レビュー)に続き、二巻はゲーム業界の話。
ファミコン創生期からの伝説のクリエーターであり、天才ゲームデザイナーと言われた黒川内大五郎が相談に来る。
相談内容はズバリ、「どうすれば天才を殺せるか」。

(伝説のクリエーター黒河内大五郎 出所:第9回)

その天才とは、黒川内が経営する会社に所属し、ケータイゲームアプリを3日で作り上げる天才プログラマー綾小路。他の社員と触れ合わず、孤高を貫きながらも、ヒットを飛ばし続ける。会社の中でアンタッチャブルな存在になっているところから、ついたあだ名が「殿下」。イヤホンつけて、Kirklandのミックスナッツ(←塩分強くて確かに食べだすと止まらない)をつまみながら、自分の世界に閉じこもって仕事するスタイル。ラーメンオタクでもあり、まぁ、ルックスもそんな感じ。

(天才プログラマー綾小路、通称"殿下" 出所:第8回)

ケータイゲームを「田舎もんと情弱のひまつぶし」と蔑む黒川内としては、ケータイゲームアプリを連発する殿下が気に入らない。さらに、ゲームの国内市場が縮小していくなか、会社を運営する日銭を稼いでいるのが、黒川内が丹精込めて作ったゲームでなく、殿下が3日で作ったアプリ群であることが、もっと気に入らない。

「ゲーム全体のデータがツイッターのアイコン1枚より小さい」。そんなファミコンの時代からゲーム製作に携わっている黒川内にとって、ゲームとは、頭や体を使って楽しく努力しながら、目標の達成を通じて感動を得るものでなければならないのだ。
よって彼は、ソーシャル化したケータイゲームにありがちな、進捗に応じて課金する仕組みを「パチンコ屋みないな商売」として蛇蝎のごとく嫌っている。

しかし、今の会社を支えているのは、殿下が作ったケータイゲームアプリ。
そんなジレンマを抱えたまま黒川内は、山田仁五郎に相談を持ちかけたのであった。

そこで主人公である女子高生、許斐七海(このみ・ななみ)こと、”ナナ”はアルバイトとして黒川内の会社に潜入し、調査を開始する。山田も独自に殿下について情報収集する。

(社内に潜入し、社員を懐柔する末恐ろしい女子高生、ナナ 出所:第9回)

二人で現場という”ミクロ”の情報を収集した後は、いつも通り、市場規模とその動向、ビジネスモデルの中長期的変移等も含めた”マクロ”情報を分析し、両方の情報を突き合わせながら黒川内に対する提案を練り上げる。
そして、水と油の黒川内と殿下は徐々に対峙していくことになる。
・・・で、どうなるか、は実際に読んでもらいたい。

この作品、本当に「実務臭」が香ばしくて素晴らしい。
読みながら「これ、実話がモデルじゃないのか」と自分の記憶を辿ってしまう(あとがきで、鈴木さんは「これはフィクション」と言及されている)。
それは、作者の鈴木みそさんが、入念な取材とセンスで、各場面のディテールを隙間のないレンガのように緻密に積み上げているから来るのだろう。

(山田のプレゼンは説得力に溢れる 出所:第11回)

ディテールの積み上げって、そういうのが好きな人(←私)からすると、レンガが一つでも抜けていることを感じた瞬間に急速に萎える。そういえば、以前、話題になったベンチャー企業を舞台にしたドラマを観ていた時、設立間もないベンチャー企業なのに、取締役が20人くらい(←しかもおっさんばっか)いるのを見て、一気に冷めた。
その点、本作の積み上げは徹頭徹尾素晴らしく、最初から最後までドキドキしながら読み切れることは保証する。

さらに、絵の魅力も語りたい。
その一つは、登場人物がかっこよすぎない、または可愛すぎないところと思っている。
なんというかスキがあるルックスというか。

山田仁五郎だって、イケメン?かと思えば、顔が長くて、目と鼻が大きすぎで若干バランス崩れていると言えるし、事務・経理を担当する谷川も一見クールな美人かと思えば、よく見れば鼻から下はそうでも…だし、主人公であるナナもはっきりいって絶世の美女ではない。
一見、見栄えするルックスを持つキャラと見せかけて、微妙にスキがある気がするのだ。
しかし、そんなスキがあるキャラが喜怒哀楽を表現するからこそ、感情表現が立体的に映るというか。。。そこが各キャラの魅力を際立たせていると思う。
うまく言えた気がしないが、それも鈴木さんの作品に強烈に引き込まれる要因と考えている。

一巻を読んでいない方は、まずそこから始めてほしい。
一巻は電子書籍がテーマだったが、二巻のゲーム業界を挟んで、三巻はもう一度電子書籍に戻るようだ。電子書籍は鈴木さんが集中的に取り組んでいるテーマだ。
おそらく、この作品を通じて描きたいテーマがまだまだあるのだろう。
引き続き目を離せない。超おススメ!

ナナのリテラシー1
作者:鈴木みそ
出版社:鈴木みそ
発売日:2014-01-23
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 一巻を読んでいない人はまずここから。

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 鈴木みそさんは自身の電子書籍に関する体験を、この『ナナのリタラシ―』やブログで公開されているが、そのノウハウがさらにさらに細かく公開されているのがこの本。『東京トイボックス』、『スティーブズ』の作者うめ(小沢高広)さんとの対談形式だが、電子書籍を作って売る具体的な手順・ノウハウ、また今後のマンガ家としての方向性まで、お二人が経験を通じて得た知見が惜しげもなく公開されている。今後、電子媒体を通じてコンテンツ売っていく人なんてどんどん増えていくだろうから、マンガと関係ない人にとっても示唆に富むのではないか。こちらも超おススメ!

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GasaT12014.9.30 23:01

最近、業界漫画ってホットなんですね! この作品も面白そう。 以前ご紹介した『メロポンだし!』も面白かったので、今回も是非、読んでみ明日!

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