マンガHONZのレビューで、一番買われたマンガは何だ!? 『買われたマンガランキング 8月』

東海林 真之2014年09月28日 印刷向け表示
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今回も『先月の買われたマンガランキング』を発表する。
これは、毎月投稿される数々のレビューのなかから「(紹介されたマンガを)思わずポチッと買ってしまうような、惹きつけられるレビューはどれだったのか?」を選ぶというランキングだ。

それではさっそく、8月に買われたマンガランキングとレビューを紹介していこう。
なお、過去のランキングを見たい人はこちらの一覧から参照いただくのがよいだろう。
 

『8月に買われたマンガランキング』 BEST 5

8月に買われたマンガのBEST5を発表すると、次のとおりだ。
 

順位 作品名 作者 レビュアー
1位 あそびあい 新田章 永田希
2位 ヴィンランド・サガ 幸村誠 佐渡島庸平
3位 IPPO えすとえむ 苅田明史
4位 ありゃ馬こりゃ馬 田原成貴 堀江貴文
5位 ルサンチマン 花沢健吾 山田義久

お決まりのカウントダウン形式で、まずは第5位から紹介していく。

第5位は、『ルサンチマン』(花沢健吾)である。紹介していたレビューは、山田義久による「『ルサンチマン』そして、伝説へ...」だ。

眠れるおもしろいマンガを発掘する、というマンガHONZの理念をもっとも体現しているだろうレビュー職人の山田義久。その彼がマンガHONZのデビューを飾った応募原稿が、『ルサンチマン』だった。

そんな思い入れのある作品を再び紹介するに至ったのには、訳がある。著者である花沢健吾が、VRヘッドセット「Oculus Rift」と専用スーツを装着し、自分が10年以上前に描いた作品世界(=バーチャル・セックス)を体験するというイベントが、行われたためだ。

詳しくは山田義久のレビューを見てもらいたい。が、10年前には想像の世界でしかなかったものが、現実になろうとしているワクワク感。そしてその原動力は、エロ(ルサンチマン)。なんとも興味ひかれる内容である。

既に『ルサンチマン』を読んだことのある人が多かったためか、マンガ購入数はやや少なかった。しかし、再度紹介する価値はあっただろう。

今や『アイアムアヒーロー』や『ボーイズ・オン・ザ・ラン』で有名な花沢健吾だが、その原点となるのは、やはりデビュー作の『ルサンチマン』にあるのだ。

ルサンチマン 1 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)
作者:花沢 健吾
出版社:小学館
発売日:2012-10-30
  • Amazon
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  • e-hon
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  • 丸善&ジュンク堂
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続く第4位は、『ありゃ馬こりゃ馬』(田原成貴)である。紹介していたレビューは、堀江貴文による「『ありゃ馬こりゃ馬』 - 競馬狂走伝。早死した漫画家と覚せい剤に溺れた天才騎手の奇跡の名作を馬券狂だった俺がレビューするぜ。」だ。

レビュアーの堀江貴文は、以前、馬主資格をもっていた。そんな堀江貴文が、この作品の原作者である元天才ジョッキーの田原成貴について語るレビュー。

実はあまり作品の紹介をしておらず、調教師かつ原作者になっていた田原成貴の人生の断片を記しているだけなのだが、なんて波乱万丈の人生なのか。この原作者の人生が気になってしまい、そんな人がつくった作品はもう作られないのではないかと思うと、マンガも気になってしまう。そんな人が多くいたのだろう。

ありゃ馬こりゃ馬 第1巻
作者:田原成貴
出版社:サード・ライン
発売日:
  • Amazon Kindle
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第3位は、『IPPO』(えすとえむ)である。紹介していたレビューは、苅田明史による「一足30万! 足元に気を遣うオシャレなあなたに靴職人の物語を『IPPO』」だ。

苅田明史のレビューは、ビジネスパーソン向きだと思う。
一例をあげると、スーツ(戦闘服)の着こなしと熱い職人魂の作品『王様の仕立て屋』、 読者すら欺くような逆転に次ぐ逆転の騙し合い『嘘喰い』、教科書にはない歴史を教えてくれる『ヘウレーカ』、同窓会に出た気分になれる淡い青春マンガ『東京エイティーズ』、など。

苅田明史の紹介するマンガを追いかけているだけで、ビジネスパーソンとして必要なうんちく、基礎教養が自然に磨かれるんじゃないかと思う今日この頃である。

今回紹介している『IPPO』は、靴職人のマンガだ。以前に紹介していた仕立てスーツ職人のマンガ『王様の仕立て屋』にも共通するところがある気がする。
レビューの一部を引用してみよう。

でもそんなちょっと面倒なものだからこそ、大切に扱ってあげることでその人の生真面目さや誠実さを表わすのかもしれません。

職人世界の魅力を再確認できる、そんなレビューである。 

IPPO 1 (ヤングジャンプコミックス)
作者:えすとえむ
出版社:集英社
発売日:2012-12-10
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第2位は、『ヴィンランド・サガ』(幸村誠)。紹介していたレビューは、佐渡島庸平による「「誰にも敵などいないんだ」とてつもなく深い愛の物語 『ヴィンランド・サガ』」である。

アメリカのドラマのプロデューサーがやってきて、日本のマンガをアメリカで実写ドラマ化すると言うとき、あなたなら何を選ぶだろうか?

佐渡島庸平は、次のように述べる。「迷いに迷う。でも迷った後に、僕は、幸村誠の『ヴィンランド・サガ』と堂々と言うだろう。」

詳しくはレビューを見ていただきたいが、次のように続ける。

『ヴィンランド・サガ』は、日本のエンターテイメントを代表する作品だ。
物語の構成力の巧みさ、キャラクターの魅力、世界観の壮大さ、どの部分をとっても、ハリウッドの才能に負けていない。いや、ハリウッドの超一流のその上をいっている。

そんな大作を知らなかったという人、すべて読んでみたいと思った人が多かったのだろう。全巻セットを購入する人が他作品よりも明らかに多かったのが特徴的なレビューだった。

ヴィンランド・サガ(1) (アフタヌーンKC)
作者:幸村 誠
出版社:講談社
発売日:2006-08-23
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そしていよいよ第1位。それは『あそびあい』(新田章)である。紹介していたレビューは、永田希による「ビッチとうまくやっていくための、たったひとつの冴えたやり方。『あそびあい』」だ。

このレビューは、とにかく論点が明確だった。恋愛感情と、セックスしたいという気持ちとは、どう関係するのか。どう折り合いをつけるべきなのか。

その論点をわかりやすく、マンガの特徴を説明しながら、記していくレビュー。まずは冒頭の10行を見てもらいたい。一部を引用すると、次のようである。

本作の主人公である男子高校生「山下くん」は、同じ学校の「ヨーコさん」が好きで、(中略)
山下くんは、ヨーコさんに他の人とセックスして欲しくないという種類の好き。ヨーコさんは、他にも好きな人はいて、山下くん1人には絞りたくないというタイプ。

これがネット上の議論を呼んだ。
特に深夜の時間帯にPVがぐんぐんと伸び、さまざまな意見が飛び交う。共感できる/できない/切なすぎる/分からないけど、まずマンガは読んでみようと思う/内容に関係ないけど、ヤリマンはビッチと呼ばず、スラットと呼んで/・・などなど。

私はこの論争ではじめて「ポリアモリー/モノアモリー」という言葉を知った。ともかく8月にもっとも議論を呼んだ作品が『あそびあい』であることは間違いない。このような作品を"掘り出した"永田希のレビュー。今後も必見である。

あそびあい(1) (モーニング KC)
作者:新田 章
出版社:講談社
発売日:2013-11-22
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「買われたマンガランキング」の取扱説明書

さて、今回も最後に、『買われたマンガランキング』 の使い方についてふれておきたい。

このランキングでは、実際に本が買われたレビューがいいレビューだと言いたいわけではない。マンガHONZのレビュアーは(レビューを読めばわかると思うが)様々な個性に満ちているし、紹介する作品もその個性にあわせ、様々である。

ならば読者の立場としては、自分の心に届くレビュー、共感するレビューを見つけ、次にそのレビュアーのレビューを追ってみるといいのだろう。レビュアーの想いや視点を読み解きやすくなり、したがって紹介されたマンガへの評価判断もしやすくなる。

その結果、アタリのマンガに出会う確率があがるというのは、わくわくするのではないだろうか。

この『買われたマンガランキング』が、自分に合ったレビュアーを見つけるきっかけとなり、そして新たなマンガとの(幸せな)出会いを生んでくれると、私たちも嬉しい。


 

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ノンフィクションはこれを読め!  2014 - HONZが選んだ100冊
作者:
出版社:中央公論新社
発売日:2014-10-24
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