ヒトはSF(空想科学)に夢を見る、『凹村戦争』

山中 羽衣2014年11月01日 印刷向け表示
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これまでSFという世界にはあまり踏み込まずに生きてきた。なんとなく自分の生きている生活圏内からとても遠いことが描かれているように思えて、何から触れていいのか分からずにいたのである。別にUFOに遭遇したこともなければ、宇宙人と戦争するようになってしまった、なんてこともない。

そんなSFとは縁遠い世界にいた私がこの本を手にとったのは、世田谷文学館で行われていた『日本SF•SFの国』という展示企画へと足を運んだことがきっかけだった。この企画では、漫画界の巨匠と言われる手塚治虫や、筒井康隆や小松左京、そして星新一など名だたるSF作家達が自分の身を削るように、宇宙や科学技術の未来を真剣に想像していた。その熱量にやられてちょっとずつ、SFを読むようになったのが今年の秋。

SF文学を出している叢書はいくつかある。例えば、最近『サンリオSF文庫総解説』という総覧的な書籍が出て巷を賑わしているサンリオSF文庫。これはキティちゃんやマイメロディなど可愛いキャラクターでおなじみのサンリオが出版社として出した文庫シリーズだ。そして、ハヤカワSFシリーズ。こちらは早川書房が出しているシリーズで、日本SFの黎明期と言えるであろう1957年に刊行が開始され日本SFを支え続けて来た。というわけでまず、ハヤカワSFシリーズを読んでみよう!と思いふと手に取ったのがこの『凹村戦争』だった。



火星さん早く!侵略しに来て!
地球はいい星ですから…


日常。
なんて超平面的。
ゲームも物体Xもあきちゃったし。
そろそろないかな?
別の楽しいこと。

何か特別なことによって自分たちの退屈な日常を壊して欲しいと期待している少年少女達がメインで描かれていてなんだかそこがリアルだ。結局、退屈だった日常を壊した出来事にすら、慣れてしまって「はぁ〜...なんかおもしろいことないかな...」と次なる自分を楽しませてくれる何かを待つである。そしてその何かが自分を劇的に変えてくれるんじゃないか、なんてことを夢見る。

10年や20年前だと空想としか思えないようなことがどんどん現実になってきている。けども、私たちは、さも昔からあったかのように順応していく。懸命に未来を空想している人もいれば、それを実現するために粉骨砕身している人もいて、みんなそれぞれの立場から夢を見ている。この作品はただ消費するのではなく受け身な状態から立ち上がって夢を見よ!そのことでしか退屈から抜け出す方法はない、そんなことを伝えている気がした。

ちなみにこの映画のタイトル凹村戦争は、市民ケーンなどの監督をしていたオーソン•ウェルズからつけられている。実際、作品内ではジョン•カーペンターによる『遊星からの物体X』やスタンリー•キューブリックの『2001年宇宙の旅』や『ランボー』やその他にも多くの映画が登場してキャラクターの行動に影響を及ぼしている。映画を観て元ネタを知った上でこの作品を読んでいただければよりこの作品を楽しんでいただけると思う。  

凹村戦争(おうそんせんそう) (Jコレクション)
作者:
出版社:早川書房
発売日:2004-03-24
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サンリオSF文庫総解説
作者:
出版社:本の雑誌社
発売日:2014-09-18
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2001年宇宙の旅 [DVD]
監督:スタンリー・キューブリック
出版社:ワーナー・ホーム・ビデオ
発売日:2004-09-23
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遊星からの物体X [DVD]
監督:ジョン・カーペンター
出版社:ジェネオン・ユニバーサル
発売日:2012-04-13
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