マンガHONZのレビューで、一番買われたマンガは何だ!? 『買われたマンガランキング 9月』

東海林 真之2014年11月02日 印刷向け表示
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今回も『先月の買われたマンガランキング』を発表する。
これは、毎月投稿される数々のレビューのなかから「(紹介されたマンガを)思わずポチッと買ってしまうような、惹きつけられるレビューはどれだったのか?」を選ぶというランキングだ。

それではさっそく、9月に買われたマンガランキングとレビューを紹介していこう。
なお、過去のランキングに興味がある人は、こちらの一覧を参照してほしい。
 

『9月に買われたマンガランキング』 BEST 5

9月に買われたマンガのBEST5を発表すると、次のとおりだ。
 

順位 作品名 作者 レビュアー
1位 ナナのリテラシー 2 鈴木みそ 山田義久
2位 BLUE GIANT 石塚真一 苅田明史
3位 しゃにむにGO 羅川真里茂 兎来栄寿
4位 黄金のラフ なかいま強 佐渡島庸平
5位 独裁君 業田良家 兎来栄寿

お決まりのカウントダウン形式で、まずは第5位から紹介していく。

第5位は、『独裁君』(業田良家)である。紹介していたレビューは、兎来栄寿による「世界に住むすべての人々に読んで欲しい、業田良家の話」だ。

「あなたは業田良家という名前をご存知でしょうか。」
この書き出しから始まる今回のレビューは、眠れるおもしろいマンガを発掘するマンガソムリエ、兎来栄寿の本領発揮である。

年間1,000冊をゆうに超えるマンガを読むマンガソムリエが、「声を大にして訴えたい」という。「世界はもっと業田良家に注目すべきである、と!」その想いがストレートに伝えられる今回のレビュー。そのレビューの一部を引用することで、説明に代えよう。

業田良家先生の作品の素晴らしさ、普遍性、人や社会の本質を抉り迫る様は、手塚治虫先生や藤子不二雄先生といったビッグネームと並べても遜色がないと言って良い程です。しかしながら、知名度という点では圧倒的に低く、作品の内容や業績に全く追い付いていないというのが現実です。

この機会に、このレビューを読んで、業田良家という作家に出会ってもらいたい。

独裁君 (ビッグコミックススペシャル)
作者:業田 良家
出版社:小学館
発売日:2008-07
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続く第4位は、『黄金のラフ』(なかいま強)である。紹介していたレビューは、佐渡島庸平による「ラフからだって18番グリーンにはつながっている。『黄金のラフ』」だ。

ゴルフマンガである。だが佐渡島庸平によると、この作品は「仲間の絆の描き方がすごくうまい」という。すなわち「チーム」を描いた作品なのである。

たいていのスポーツものは、仲間が魅力的に描かれていてもやっぱり脇役は脇役で、主人公を華やかにするための存在でしかないだろう。しかし『黄金のラフ』は、選手、コーチ、キャディの3人ともが主人公なのだ。

『バガボンド』、『ドラゴン桜』、『働きマン』、『宇宙兄弟』などの編集を担当してきた佐渡島庸平は、レビューのなかで次のように書く。

僕はかなりたくさんの新人漫画家に、3人がチームとして機能するまでの描き方を参考にするように『黄金のラフ』を渡してきた。

この作品を読んだことがある人も、ない人も、新たな視点で楽しんでみてほしい。

黄金のラフ―草太のスタンス (1) (ビッグコミックス)
作者:なかいま 強
出版社:小学館
発売日:2000-06
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第3位は、『しゃにむにGO』(羅川真里茂)である。紹介していたレビューは、兎来栄寿による「錦織圭選手の準優勝を祝しながら読みたい、テニスマンガ傑作選」だ。

最近、テニスが熱い。
レビューが書かれた今年の9月には、錦織圭選手が、日本人として初めての全米オープン決勝進出(快挙!)。そして車いすテニスでも、上地結衣選手と国枝慎吾選手がシングルス・ダブルス共に優勝。何と国枝選手はグランドスラム達成!

NHK Eテレでも『ベイビーステップ』というアニメが9月まで放送されており、人気のために第2シリーズの放送も来春に決定。(原作マンガは週刊少年マガジンで連載中)

そんな現在に、マンガソムリエが「強く推薦したい熱いテニスマンガ」を選んでみたという記事が登場した。
なお、マンガHONZレビュアーのなかでも私生活がうかがい知れない不思議人なマンガソムリエが、実は昔テニス部であり、七色のサーブや特殊なショットばかりでポイントゲットを狙っていたという(中二病な)素性が明らかにされたことも、このレビューの見どころである。(誰得?)

ランキング入りした『しゃにむにGO』や、アニメ化された『ベイビーステップ』をはじめ、全5タイトルが紹介されている今回のレビュー。さて残り3タイトルには、何が紹介さているのか。

紹介されているマンガを読み、錦織圭選手、国枝慎吾選手をはじめとする今後の日本テニス界を見守るのは、とても楽しそうだ。

しゃにむにGO (1) (花とゆめCOMICS)
作者:羅川 真里茂
出版社:白泉社
発売日:1999-03
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第2位は、『BLUE GIANT』(石塚真一)。紹介していたレビューは、苅田明史による「次に来る音楽マンガは絶対ジャズだ!『BLUE GIANT』で描かれる「大人しくないジャズ」」である。

ゴルフ、テニスとスポーツのマンガが続いたが、音楽マンガもおもしろい。
「聴く」ことを「見る」ことで表すのはとても難しいと思うのだが、近年では音を絵で表現する技術が向上したためか、音楽マンガも多種多様な魅力的な作品が生み出されており、大注目だ。クラシック系、ロック系、ジャズ系、そして歌唱や和楽器など、その他の系統。あなたはどんな作品を読んだことがあるだろうか。

レビュアーの苅田明史は元々、外資系コンサルティングファームの出身である。そのためか、今回のレビューでは「音楽マンガの系統(ジャンル)分析」というおもしろい試みをしている。1980年代後半から、音楽マンガとしてどのような系統の作品が多く生み出されてきているのか。『BECK』や『NANA』がその後のロック系の作品にどんな影響をあたえ、『のだめカンタービレ』以降のクラシック系作品はどうなったのか。

この分析をみているだけで、いろいろな想像がかき立てられるのだが、苅田明史がいま注目しているのは、ジャズマンガ『BLUE GIANT』だという。
「まるで音が聴こえてくるような」最新音楽マンガの表現力とともに、味わってほしいレビューだ。

BLUE GIANT 3 (ビッグコミックススペシャル)
作者:石塚 真一
出版社:小学館
発売日:2014-07-30
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そしていよいよ第1位。それは『ナナのリテラシー2』(鈴木みそ)である。紹介していたレビューは、山田義久による「ゲーム業界は焦土と化したのか? 『ナナのリテラシー2』」だ。

マンガHONZのレビューには、いくつかのルールがある。例えば1つは、「カブリあり」。これは、同じマンガを別々のレビュアーがレビューしていい、というルール。このルールにより、時おり熱いレビューバトルが繰り広げられている。
(例.小林琢磨と菊池健による『大東京トイボックス』のレビューかぶり。「魂は合っているか!?『大東京トイボックス』を読んで起業した男のレビュー」(小林琢磨)、「表現の自由は料亭で決まるのか?クリエイターにこそ読んで欲しい。『大東京トイボックス』(6)」(菊池健))

そしてまた1つが、マンガ「タイトル」をレビューするのではなく、個別の"巻"や"話"(例えば「2巻だけ」や「空島編だけ」など)についてのレビューでもいい、というルールだ。

前置きが長くなったが、今回の山田義久によるレビューは、『ナナのリテラシー』という作品の「2巻」についてのものである。

このマンガの作者「鈴木みそ」といえば、知る人ぞ知る、電子書籍によるセルフ出版のパイオニアだ。自身のマンガ作品を自身で電子化し、どれくらい売り上げたのか、印税はどのくらい得られたのかを、ブログで発信しており注目を集めた。そしてその体験、ノウハウを惜しみなく詰め込んだのが、前作の「ナナのリテラシー(1巻)」である。(この作品レビューもマンガHONZ内にあるので、参照してほしい。作家を救う電子書籍の伝道書『ナナのリテラシー 1』

だが今回の「2巻」は一転して、ゲーム業界の話である。
ファミコン創生期からの伝説のクリエーター黒川内と、黒川内が経営する会社に所属しケータイゲームアプリを3日で作り上げる天才プログラマー綾小路との対立を描く話だ。

ケータイゲームを「田舎もんと情弱のひまつぶし」と蔑む黒川内としては、ケータイゲームアプリでヒットを連発する綾小路が気にくわない。だが、ゲームの国内市場が縮小していくなか、会社を運営する日銭を稼いでいるのは、黒川内が丹精込めて作ったゲームでなく、殿下が3日で作ったアプリ群である。それが、もっと気に入らない。

どうだろう。今の社会に実に「ありそうな」話ではないか。

山田義久は前作のレビューで、「鈴木みそが電子書籍業界を描くおもしろさ」に焦点をあてた。だが、本作のレビューでは、この「ありそうな」話を描く「実務臭」に注目する。そしてまた、「登場人物がかっこよすぎない、または可愛すぎない」という絵の魅力も、読者を作品に強烈に引き込む要因になっていると指摘する。

1巻と共通して現代のリアル社会を切り取る問題意識と、それを伝えてくれる「実務臭」。このレビューを通じて、多くの人が鈴木みそ作品を手に取ってみようと思った(売上ランキング1位になった)理由は、分かる気がする。

ナナのリテラシー 2 (ビームコミックス)
作者:鈴木 みそ
出版社:KADOKAWA/エンターブレイン
発売日:2014-09-24
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「買われたマンガランキング」の取扱説明書

さて、今回も最後に、『買われたマンガランキング』 の使い方についてふれておきたい。

このランキングでは、実際に本が買われたレビューがいいレビューだと言いたいわけではない。マンガHONZのレビュアーは(レビューを読めばわかると思うが)様々な個性に満ちているし、紹介する作品もその個性にあわせ、様々である。

ならば読者の立場としては、自分の心に届くレビュー、共感するレビューを見つけ、次にそのレビュアーのレビューを追ってみるといいのだろう。レビュアーの想いや視点を読み解きやすくなり、したがって紹介されたマンガへの評価判断もしやすくなる。

その結果、アタリのマンガに出会う確率があがるというのは、わくわくするのではないだろうか。

この『買われたマンガランキング』が、自分に合ったレビュアーを見つけるきっかけとなり、そして新たなマンガとの(幸せな)出会いを生んでくれると、私たちも嬉しい。


 

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