初代Kiss編集長にさんざん言われたんです。「ヌカ味噌くさい漫画を作るなよ」って(笑)。-『Kiss』鈴木学編集長

菊池 健2014年11月12日 印刷向け表示
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ハツキス 2014年 11月号 [雑誌]
作者:
出版社:講談社
発売日:2014-10-11
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- 編集長の部屋とは?

「編集長の部屋」コーナー5 人目は、Kiss 編集長、鈴木学さんです。編集長の部屋コーナーでは初の女性誌編集長になります。女性誌ならではの面白いお話を沢山うかがうことが出来ました!

前編:漫画家と編集者の関係は「友達以上恋人未満」かな(笑) 

<Kiss 鈴木学編集長(中編)>

Kiss本誌は、王道女性誌。ハツキスは、初めてへの挑戦を目指す。 

―― Kissは、今どんな雑誌を目指していますか?

Kiss(毎月25日発売)は、王道女性漫画誌です。女性漫画はなにより恋愛ですので、恋愛を中心に、大人女性のNo1、王道を目指すという編集方針です。昔で言うと、月9のドラマのような、20代~40代の女性が読みたくなるところをメインにしようと考えています。

――「ハツキス」を創刊されましたが、どのような方向性ですか?

「ハツキス」は隔月刊(偶数月13日発売)誌で、“「初!」に挑戦する刺激的マンガ誌!
というキャッチフレーズを旗印に創刊しました。よく誤解されるのですが、「ハツキス」は「ファーストキス」という意味ではないんです。むしろKissとは逆に恋愛でなくてもいいし、恋愛をやるなら尖がったものを目指しています。なぜ、そのようなコンセプトにしたかと言いますと、「王道」のKiss本誌の編集活動をしていると、その枠に収まりきらないものも生まれてきます。いつもは恋愛漫画を描いている方が、違う方向性のものを描いてみたいなんてケースもありますし。編集者も違ったことをしてみたくなりますし(笑)。

「ITAN」の『昭和元禄落語心中』はいいお手本ですね。ああいう今までの女性漫画の枠に入らないスケールのものを掲載していきたい。広く浅くでなく、狭く深くエッジの立ったラインナップを目指しています。

――誌面を見ると「ハツキス」は新人の起用に積極的な印象を受けましたが?

発売中の11月号には5人の新人の方が掲載されていますので、かなり積極的だと思います。例えば、『小さなお人魚日和』を連載中のみなみうみさんは、投稿2作目のこの作品で連載決定、なんと当時はまだ美大在学中の学生さんでした! 本当にチャンスの多い漫画誌ですので、みなさんにドシドシ投稿していただきたいなと(笑)。

―― Kissはコンペも多いとお聞きしましたが?

この『恋のウニフラ』という作品は部内で行った「カップルココンペ」で受賞して、連載を勝ち取ったんですよ。私コンペが好きで、「Kiss ラブストーリー漫画大賞」という公募コンペもしました。この、『ラブリラン』(天沢アキさん)が受賞作品で、連載になったんです。天沢さんは外部からの投稿でした。他に「動物漫画コンペ」というのもやり、この『兄弟犬』がその受賞作です。

――そういったコンペは、年に何回くらいやっているのですか?

本誌&「ハツキス」で、3~4回ぐらいでしょうか。テーマは内緒ですが、現在もコンペの募集をかけているところです。

――― 今後、この2誌をどんな形で発展させていくか、ビジョンはありますか?

まずは、掲載コンテンツ数を増やしたかったので、KISS本誌に関しては、10月号から少しリニューアルをして、420ページだった編成を500ページにしました。「ハツキス」も、その前の「Kiss Plus」に比べて80ページほど増やしました。

――― その狙いは?

コンテンツの数を増やしたいからです。ご存じの通り、雑誌はどこでも赤字です。雑誌はコンテンツを作るための装置だと思っています。コンテンツ数を増やして、紙なり電子なりの単行本で多く販売されて、ようやく商売になるのが、今のマンガのビジネスモデルです。その為には、コンテンツを沢山出して、当たるものが生まれる可能性を広げたいということです。

部員のガンバリで作家の方も増えてきて、ようやく増P体制をこなせる部署の基礎体力がついてきたのかなと思います。

――― ここまでうかがっての私の所感ですが、鈴木編集長は、王道と申しますか、奇をてらわずに当たり前にやるべきことを、しっかりと実行される方だなと思いました。そのようにされて、今後は更にどのようにしていきたいと考えられていますか?

Kiss本誌で言うと、描いて欲しい大物作家さんがいますし、ハツキスでは、意外な新人が集まってくれればいいなと思います。そういう方たちが、描きたくなる雑誌にしたいと思っています。

初代Kiss編集長にさんざん言われたんです。「ヌカみそ臭い漫画を作るなよ」って(笑)。

―― 現在、新人賞ではどのようなことをされていますか?

ひとつは、“Kiss IN”という本誌で行っている毎月〆切の新人賞です。

もう一つは、新設した“ハツキス新人マンガ賞”です。

他に、pixivさんと、講談社の複数誌合同で、「講談社まんがスカウトFes」を開催しています。

前回はKiss、なかよし、デザート、ARIAと女性系が4つと、シリウス、別冊マガジンが参加した、複数誌にまたがった企画です。

そこまで含めると3つのルートがあります。Kissは、歴史の長い雑誌で、大人の恋愛を描くマンガとして定着しているので、若い漫画家志望者はなかなかとっつきにくいかなと思っています。なので、ハツキスのほうでは、若い作家の人たちが自由に描けるタイプの新人賞を用意しました。たとえると深夜番組のように、自由で新しい作品を投稿していただきたいです。

ハツキスは、創刊したてですし、まだ色がついてないと思います。雑誌は、牽引するヒット作が出て、初めて色が付くと思います。別マガが『進撃の巨人』によって、カラーが生まれたように、早く「ハツキス」の色を付ける作品が生まれて欲しいです。

―― 他の雑誌の編集長とお話ししても、別マガは『進撃の巨人』のヒット以降、終末感漂う雰囲気を特徴とした雑誌と認識しているというお話がありました。

―― ところで、講談社さんには多くの女性向け雑誌がありますが、どのように切り分けをしているのでしょうか。

基本的には年齢層別ですね。
低年齢層向けのなかよし、別フレとデザートは中高生向けの同じくらいの年齢層で、その上に、Kiss その上にBE LOVE(40代くらい)という位置づけです。ARIAは年齢ではなく、コアな漫画好きに向けた漫画誌です。

Kissは年齢のカテゴリーでは20~40代の女性となりますが、だからと言ってその年代の生活臭にあまりとらわれない方がいいかなと考えています。漫画を読んでいるときは、現実の生活の大変さを、忘れられたらいいなと。昔、初代Kiss編集長にさんざん言われたんです。「ヌカみそ臭い漫画を作るなよ」って(笑)。

―― 先ほど、ヒット作が雑誌のカラーを作るというお話がありましたが、そういう意味ではKissのカラーを作った作家さんはどなたですか?

こやまゆかりさん、小沢真理さんが真っ先に浮かびます。ドラマチックな恋愛、可愛い恋愛…そんな“恋愛漫画”のKissのイメージを作っていただきました。このお二人がスゴイのは、Kissは創刊から20年経ちましたが、未だに中心選手として活躍されていることなんです!

―― そのあたりが、正に女性誌の王道作品なのですね。そういう意味では、『のだめカンタービレ』はいかがでしょうか。

女性漫画として押さえるべきところは押さえながらも、主人公は変態で(笑)恋愛にあまり走らない。そこが女性漫画の枠を飛び越え、男性が読んでも面白い国民的漫画になった理由でしょうね。あんまり恋愛ばっかり描いたら、あそこまでのヒット作にはならなかったのかもしれません。

―― 実はトキワ荘PJにも多くの女性誌・少女誌志望がいるのですが、

少年誌は、発想力に比重が行くと思います。得にデビュー時は絵がそれほど上手くなくても、画力はには目をつぶって、ネームに賭けてみようとか。

ですが、女性誌は誌面に載せる時の絵のかわいらしさは重要ですね。女性は男性よりも「可愛い、可愛くいない」で、最初に選別してしまうところがあると思います。

―― Kissでは、新人の読切や連載をどのように決めていますか。

先ほどお話ししたコンペに勝ってもらえれば掲載が決まります。コンペは部員みんなで採点しています。

日常的にはKiss本誌については、私(編集長)にネームを提出してもらい決めています。ハツキスについては、デスクと私で決めています。また、新人賞で大きい賞を取ってもらえれば、即誌面に載ります。

いずれにせよ、最終的には編集長判断です。

<中編ここまで>

後編:Kiss 鈴木学編集長 - 漫画家さんは自分の中に編集者を飼うべきだと思うのです。 

Kissホームページ

「編集長の部屋」過去の記事など目次

インタビュー・ライティング:トキワ荘プロジェクト 菊池、番野

トキワ荘プロジェクトは、漫画家の「住む」「学ぶ」「出会う」を支援します。

鈴木編集長が新たに始めた新人の登竜門。記事掲載時現在、kindle版はダウンロード無料! 

ハツキス2014年7月号創刊記念無料! [雑誌]
作者:小川彌生
出版社:講談社
発売日:
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言わずと知れた大ヒット作。投稿作のたった一コマから生まれたということも興味深いです。
その創作秘話の一部は、トキワ荘PJ発刊の『マンガで食えない人の壁 -プロがプロたる所以編-』でも、上條敦士先生と二ノ宮知子先生の対談の中で語られています。

のだめカンタービレ(1) (講談社コミックスキス (368巻))
作者:二ノ宮 知子
出版社:講談社
発売日:2002-01-08
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ノンフィクションはこれを読め!  2014 - HONZが選んだ100冊
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出版社:中央公論新社
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