『スティーブズ』が今世紀の『竜馬がゆく』になりそうな件

菊池 健2014年11月29日 印刷向け表示
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スティーブズ 1 (ビッグコミックス)
作者:うめ
出版社:小学館
発売日:2014-11-28
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就活生の8割が『竜馬がゆく』を読んでいたなんて時代がありましてですね。

『竜馬がゆく』は、日本の歴史小説の中でも最も読まれている作品の一つです。司馬遼太郎の代表作であり、世間一般でイメージされる坂本竜馬像はこの歴史小説で作られたと言われています。

この作品は、歴史小説であると同時にエンタメ作品として司馬遼太郎オリジナルなところも、多くあったと言われています。これはまぁ、真田幸村(信繁)や武蔵坊弁慶も、江戸時代の戯曲の中でそういう「キャラ設定」が普及したということに近いでしょう。

そして『スティーブズ』は、数あるジョブズ本の中でも、正にそういう作品です。2011年に没し、最早伝説の起業家となったとも言える彼の足跡は、伝記や記事としては多く残っていますが、エンターテイメントとしてはそう多く残っていません。(*1)

竜馬は、話が面白く、人たらしでした。人を説得する時は、熱すると羽織の紐のふさをしゃぶってビシャビシャに濡らし、自分の話に興奮するとそれを振り回して唾を飛ばす癖があり、北辰一刀流でも相当な腕前とも言われています。多くの人を味方に惹き付け、同時に敵も作り、日本初の株式会社海援隊を作るなど行動力も発揮し、時代を動かしていく、正に物語の主人公的キャラクターです。

対する本作のジョブズは、ヒッピーで我儘で、ちょっと狂気じみてアツい若者で、多くの仲間を大人から子供まで巻き込んでいきます。そして、現実歪曲空間 [ Reality Distortion Field ] と名付けられた必殺技を持ちます。この技は、風属性の物理的な効果で周囲の書類を吹っ飛ばしつつ、相手をチャームして自分の要求・主張に「Yes」と言わせる効果があります。 => RDFについて詳しくは、角野小林 のレビューをご覧ください。

 

引用:小学館『スティーブズ』第1巻より どう見ても「碧い巨星」ですwありがとうございます

時代を動かし、伝説を作っていった史上の人物は、やがてヒーローとなり、後の世の若者たちに多くの影響を与えます。最近は多くの政党が「〇〇維新」とのことで、竜馬を引き合いに出していますが、ジョブズの話をこのマンガで始めて読む若者が現れる頃には、今とは違う形で影響を受けるのかも知れませんね。

ヒット作品のエンターテイメントとして親しまれた人物は、その人の生き様を多くの人に認知させ、イメージを作っていきます。本作が多くの人に読まれ、更に海を越えて多くの人、特にアメリカ人に読まれたら面白いなと思います。映像化するなら、アニメが面白そうですね。

STEVESを読む

作家、うめの挑戦

作者のうめさんは、日本人漫画家で初めてamazonのkindleに作品を掲載するという、新しいもの、挑戦好きな夫婦漫画家ユニットで、『スティーブズ』も、連載開始前から沢山の挑戦をされています。

そもそも、本作は、2012年11月にクラウドファンディングで制作資金を集めるという試みから始まりました。

うめ先生の新連載漫画「スティーブズ」、クラウドファンディング支援をわずか2時間で50万達成(Togetter)

開始2時間で目標の50万円を達成。しかも、開始1時間以内に、優先連載交渉権を10万円を出す編集部まで出ています!(あれ、でも、出版社はあれれ??)

その後、パブーをプラットホームとし、6話まで制作・配信されました。一般でも購入可能です。
http://p.booklog.jp/users/ume-nanminchamp

まとめを良く見ると、すごい漫画家の方々にも注目されていますね。現在のマンガHONZのライターも3人以上寄付をしていたようです。

その後、ビッグコミックスペリオール誌上で連載開始が決定。

2014年6月から連載開始となるのですが、注目は上記の公式Twitterのアカウントの第1ツイート日付(2014年4月)です。そう、連載開始前から作品の公式Twitterアカウントが動き始めていて、しかも一番最初のツイートが上記の通り、コミックナタリーのニュース記事なのです。(カッコいい!)作品が連載される前に、ツイッターの公式アカウントが作られるというのも異例ですね。

昨日11/28、『スティーブズ』の紙単行本とkindle版電子書籍は同時に販売されました。所謂「サイマル販売」と言うことですが、これは、「紙・電子ともに小学館ブランド」のマンガとしてサイマルになるのは、「小学館初」とのことです。(*2

単行本発売に伴い、「連載中の作品の打合せを公開する」という、非常に珍しいイベントも開かれました。

スティーブズ発売前日スペシャル『打ち合わせを公開しますナイト』

この日、神保町のこのイベントの他にも、新宿、下北沢など、各所でマンガ系のイベントがあったようですけども、神保町も満員で、面白いイベントでした。

などなど、新しいことに次々チャレンジされている作家としてのうめさんの色々な活動を知りたい方は、Twitterアカウントをフォロー推奨です!

うめ:https://twitter.com/ume_nanminchamp

*2: 小学館の紙単行本が販売された日に、同時に電子書籍が出たという意味では、既に『テンプリズム』でそれが実現されていますが、その際の電子書籍版はコルク社が発行。今回のように、小学館が両方同時に発刊したケースは、初めてとのことです。

青空ファインダーロック
作者:うめ(小沢高広/妹尾朝子)
出版社:パブー
発売日:2010-06-18
  • Amazon Kindle

 - 日本人漫画家が初めてkindleで販売したマンガ
この頃からうめさんは、鈴木みそさん、赤松健先輩とならんで、電子コミックに強い作家さんとして名を馳せています。最近は、その次の世代がなかなか現れないのが悩みだそうです。

 

(*1)ちなみに、日本で初めて2人のスティーブをエンタメ作品としてマンガにしたのは...

実は、『ゲームセンターあらし』で有名な、すがやみつる先生なのですねー。
すがや先生は、現在、京都精華大学で教鞭をとられています。

マンガ『アップル][ストーリー』(「別冊コロコロコミック」1984年5~6月号掲載)

リンク先のBlogで、第1話が読めます。

こちらも続きが、読みたいところですが、この機にkindle化、いかがでしょうか^^
 

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