手塚治虫 壁を超える言葉

版元の編集者の皆様2014年12月02日 印刷向け表示
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手塚治虫 壁を超える言葉
作者:手塚 治虫
出版社:かんき出版
発売日:2014-10-22
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「ずっとオファーは断ってきたけど、そろそろ僕が手塚治虫について書いてもいいのかもね」 本書の著者、松谷孝征さんは、にこやかにこう言った。

松谷さんは、約16年間手塚先生のマネージャーを務め、現在は手塚プロダクションの社長をされている。

もともとは編集者として、手塚先生の担当をしていたそう。出版社に転職してすぐ、3カ月ほど手塚プロダクションに泊まり込んだことが縁で、直々にマネージャーを依頼されたのだとか。

関連会社の倒産、スランプからの脱出、亡くなる直前の病室での様子……。その全てを、松谷さんは見てきた。

この企画のきっかけは、何を隠そう漫画『ブラック・ジャック創作秘話』(秋田書店)だった。

土俵際でのプロフェッショナル根性。ずば抜けた才能と感性。やっぱり、手塚治虫は日本一の漫画家だ。手塚作品をリアルタイムで読んでいない、1980年代生まれの私の目にも、天才の姿は特別なものに映った。

手塚先生のような偉人にはなれないけれど、その生き方は、私の背中を押してくれた。

天才だって、たくさん悩んで、もがいたんだ。手塚先生の遺した言葉と、人生哲学を本にしよう。読んだらきっと、みんな元気になる。

手塚先生を一番近くで見てきた人に、書いてもらうしかない。そう思って企画をした。

しかしなにしろ、手塚先生が亡くなってから25年も経っている。

「今さら書けない」「当時のことはもう語り尽くした」「他の人に頼んで」などと言われるのを覚悟して、私は手塚プロダクションに乗り込んだ。けれど、松谷さんは、ひょうしぬけするくらい、あっさりと快諾してくれた。

松谷さんは、こうも言っていた。

「普通の人なら仕事なんて嫌いでしょ。僕もそう。だけど、手塚は違ったんだ。純粋に漫画が好きだったのもあったけれど、どうにかして子どもにメッセージを伝えたいって、亡くなる直前まで思ってた」

手塚先生は、発想力と生命力、それに熱意が、少しも枯れなかった。

「僕は描きたいんです。描くことなら、いくらでもある」

晩年、子ども向け漫画の連載依頼がきたときに遺した言葉。多忙と体調不良で、断らざるを得ない状況でも、創作意欲に燃えていたことがわかる。

手塚先生は、誰よりも働いた。いや、そもそも自分が「働いている」なんて感覚はなかったのかもしれない。頭の中のイメージを、ただただ、形にし続けた。  

1989年に手塚先生が胃がんで亡くなったとき、病名は本人に伝えていなかったそう。悦子夫人と、長男の真さん、そして松谷さんしか知らなかった。

手塚先生は、松谷さんにこう迫ったという。

「あなたはマネージャーなんだから、僕の体がどんな状況だか、知ってもらわないと困ります。先生(主治医)に詳しく聞いてきてください」

これは推測だが、手塚先生は、おそらく自分の病気を悟っていた。 けれど一度も、死について口にしなかった。

『ブラック・ジャック』で不死鳥のようにスランプから脱出したあのときのように、最期まで、また元気になって、連載を山ほど抱えるつもりだったのだ。

 すがすがしいほどに、前のめり。

 手塚先生、本気で生きるって、かっこいいですね。

手塚治虫 壁を超える言葉
作者:手塚 治虫
出版社:かんき出版
発売日:2014-10-22
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ノンフィクションはこれを読め!  2014 - HONZが選んだ100冊
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