もしも家出をしたくなったら?『娘の家出』を読んでみて!

山中 羽衣2014年12月16日 印刷向け表示
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さて、本作は『青い花』や『放蕩息子』など思春期の少年少女の微妙な心を見事に描く志村貴子先生の作品だ。物語は主人公であるまゆこが家出を決行するところから始まる。元々、父親が実はゲイだったことが判明し両親が離婚、その後は母親と二人暮らしだった。ところが、母親が再婚するという話を聞かされたまゆこは、知らない人と一緒に暮らすのなんていやだ、とゲイの恋人と暮らす父のところに家出をするのである。

 

 
人が家出する時って一体どんなときだろう?と考えた時に、まあまず「今、めちゃくちゃ幸せなんです!」なんて人は家出しないだろう。中学三年生の時に反抗期だった私は一週間家出をしたことがある。母だっただろうか、父だっただろうか、それはおそらくとるに足らない喧嘩がきっかけだったはずなのだが、なんだかこの家にいることがたまらない!という気持ちになりひっそりと抜け出したのである。今いる環境に違和感を感じていてもたってもいられない...という我慢ゲージのようなものが閾値に達した時に、人は家を出るしかなくなるんじゃないだろうか。
 
実際、話の内容はめちゃくちゃヘビーだ。中学時代なんて自分自身の身体の成長にも戸惑って悩んだりする時期。そんな時に、両親の離婚や父親が母親以外の男性を好きだった思春期の少女にとって中々衝撃だろうし、上手いこと感情に折り合いつけられずに、まゆこが家出したくなるのも頷ける。まゆこは作中でこう呟く。
心配してくれる人がいて
守ろうとしてくれる人がいて
行ってらっしゃいって見送ってくれる人がいて
それで家出とかうける...
 
確かに主人公のまゆこは傷ついているのだが、まゆこの両親は両親でそれぞれ悩みながら生きている。それぞれの立場の人間が試行錯誤している様子を群像劇のような形で飽くまで淡々と描いているところがなんだかリアルで、この作品の魅力である。
 
思春期の頃の少年少女っていうのは、些細なことで悩んで悩んでどうしようもなくなるような気持ちになる時がある。悩みが大きすぎて、もう解決不可能だなんて感じることもあっただろう。でもそれにしても家出をするということは良くも悪くも向き合うべき他者がいたことの現れである。一人暮らしの人は家出しようにも家出にならない...。ちなみに私は前述のように家出をした後、一週間ほどしてお腹も空いたし、寂しさが極限になって家に帰った。帰った後は、気恥ずかしさで上手いことしゃべられなかったけど、やっぱり家の安心感はあった。この作品を読むと家出をしたことがある人にもされたことがある人も、そして家族や身近な人達の存在を少しだけ大事に思えるかもしれない。
 
娘の家出 1 (ヤングジャンプコミックス)
作者:志村 貴子
出版社:集英社
発売日:2014-05-09
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