今年No.1のおすすめビジネス書はマンガだった!『ザ・ゴール コミック版』

苅田 明史2014年12月19日 印刷向け表示
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マンガHONZなのでビジネス書に興味がない方には恐縮だが、もし「今年No.1のおすすめビジネス書」を決める機会があったとすれば、あなたは一体何を選ぶだろうか?

僕は仕事(本の要約サイトflier(フライヤー)の運営)の関係上、1年間でかなりの量のビジネス書・経済書を読んでいる。こうした本関係の情報は常に拾っているし、ありがたいことに出版社の方から献本を頂戴することも多い。だから、恥ずかしながらある意味「ビジネス書選びのプロ」と自称してもいいんじゃないかと思っている。
そんな僕が今年No.1を選ぶとしたら、さんざん悩み抜いた末に、『ザ・ゴール コミック版』を挙げたいと思う(ちなみに経済書は『21世紀の資本』(みすず書房)だ)

もともと原著の方も小説風で読みやすい本であるが、「マンガ」という表現方法によってその読みやすさが格段に増している。そのぶん、ビジネスへの応用が利きやすく、「実践的」という観点から見れば、本書をおいて右にでる書籍はないだろう。
そのうえ、内容もオリジナルストーリーながら原著のポイントをおさえたものになっていて、「内容が薄い」とか「原著の方がよかった」ということもない。

ザ・ゴール コミック版
作者:エリヤフ・ゴールドラット/ジェフ・コックス
出版社:ダイヤモンド社
発売日:2014-12-05
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原著は17年間も翻訳されなかった「ワケあり本」

いま20代後半から40代のビジネスパーソンの多くが読んだであろう、『ザ・ゴール』
日本では2001年に発売され、私自身も大学時代に購入して読んだ。500ページもある分厚い本だが、小説仕立てであっという間に読めてしまうため、TOC理論(theory of constraints、制約理論)を学ぶにあたり「内容も面白く、なかなかためになった」という印象を持っていた。

これは後で知ったことなのだが、実はこの本、1984年に米国で原著“The Goal”が発売され、250万部も売れる大ヒットとなったにもかかわらず、なんと17年間も翻訳版が出なかった「ワケあり本」だ。
いまでは多くの翻訳書は原著が出てからおよそ半年~1年で日本語版が出る。しかし、それが長きにわたって実現しなかったのは、著者エリヤフ・ゴールドラットが「日本人に『ザ・ゴール』に書いたような全体最適化の手法を教えてしまったら、貿易摩擦が再燃して世界経済が大混乱に陥る」と主張し、出版を拒否し続けたからだそうだ。

(各年の日経平均株価終値(2014年は12月17日の終値)を記載)

実際、この期間の日経平均を見てみると、上のグラフのようになる。原著が発売されてから5年後、バブル景気が到来した日本では、1989年末に日経平均が最高値を付けている。

三菱地所がニューヨークのシンボルとも言えるロックフェラー・センターを買収したり、ソニーがコロムビア映画を買収したりと、ジャパン・マネーにモノを言わせて買いまくる日本に対し、アメリカではジャパン・バッシングが巻き起こるほどだった。
実際、原著者であるゴールドラットは内心ビビりまくっていたのだろう。当時の日本経済の勢いは正に世界ナンバーワンだったのだ。

結局、『ザ・ゴール』として邦訳版が出たのは、「失われた10年」を経た2001年のことだった。
邦訳版が許可された背景には、ゴールドラットが「もう日本で出版してもこいつらは復活することはないだろう」と思ったからかもしれない。もしそうだとすれば、完全にナメられてしまったワケだ。もしくは、調子づいた日本が転がり落ちる様をかわいそうに思ったのか。
しかも本当に悔しいことに、その後日本経済は復活することはなく、「失われた10年」だったはずが、いまでは「失われた20年」とまで言われるようになってしまった。

しかし、アベノミクスによって株価が復調しつつある2014年になって、日本経済に救世主ともいうべきマンガが登場した。それがこの『ザ・ゴール コミック版』だ。
「救世主」とか「今年No.1」といった文句は、けっして大袈裟でもない。個人的にはコミック版になることによって、むしろ原作すら凌ぐ出来なのでは、とさえ思っている。

原作を凌駕するコミック版! おすすめする「2つの理由」

なぜこんなにもコミック版をおすすめするのか。そこには「2つの理由」がある。

① 早く読める

小説版『ザ・ゴール』は500ページ以上もあるため、これまで読もうと思ってもその分厚さに躊躇したり、途中で飽きてしまったりした人も多いのではないか。
でもマンガ版なら問題ない。きっと30分~1時間で読めてしまう。

手に取ってみると分かるのだが、マンガにしてはちょっと高い。200ページちょっとのマンガに1,200円(税抜価格、ちなみに電子版は1,000円以下)は強気の価格設定と思うかもしれない。
でも原作を読もうと思えば、読書に慣れていない方なら半日から1日くらいかかってしまうんじゃないか。むしろ「時間を金で買う」つもりでとにかく買ってみて損はない。

② 原作に負けない内容

これまでにも多くの定番ビジネス書がマンガ化されているが、なかなか「マンガは原作を超えられない」という評価が多かったように思う。
1冊1冊のビジネス書のエッセンスだけを抜き出すと、どうしてもアッサリしたものになってしまう。特にマンガにしてしまうとどうしても地味。島耕作のような、セクシーな女性とのお色気シーンや社内外のドロドロした人間関係は、現実離れしているかもしれないが、マンガにするとちょうどいいくらいだったりするものだ。

でも、この『ザ・ゴール コミック版』は原作の主張を踏まえつつ、けっして地味な仕上がりにはなっていない。日本の工場を舞台にしたオリジナルストーリー(といいつつ、小説版にかなり近い設定)で、読み手は主人公と一緒になって工場の改善に取り組んでいくことができる。
さらに、「絵にするとこんなにもわかりやすくなるのか!」と思わず感動してしまうほど、頭にスイスイ内容が入ってくる。
これを機会に小説版も読み直してみたが、『コミック版』になったことで内容が薄まっていると感じることもなかった。

ビジネスパーソンならまず間違いなく手に取るべき一冊

僕は、今回のマンガ化に携わった方々に敬意を示し、ぜひこう主張したい。

このマンガは17年間、翻訳して海外で売ってはいけない!

と。

ちなみに出版社は『もしドラ』のダイヤモンド社。ドラッカーもまさか自分の著作に「萌え要素」を入れられるとは、想像もしていなかっただろう 笑
今回も「あれ、『ザ・ゴール』マンガ化したらいけるんじゃ?」という目の付け所が流石すぎてマブしいくらいだ。まさにダイヤモンド級の輝き。

『ザ・ゴール コミック版』も『もしドラ』のように売れに売れて、日本経済が活性化しちゃって、原著者のゴールドラット(すでに他界してますが)が「マンガ化なんて許すんじゃなかった」って後悔しちゃうくらい大ヒットすることをお祈り申し上げます。

ザ・ゴール コミック版
作者:エリヤフ・ゴールドラット/ジェフ・コックス
出版社:ダイヤモンド社
発売日:2014-12-05
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ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か
作者:エリヤフ・ゴールドラット
出版社:ダイヤモンド社
発売日:2001-05-18
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