テクニックより作家のパッションがマンガを面白くする!『死んで生き返りましたれぽ』

佐渡島 庸平2014年12月30日 印刷向け表示
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死んで生き返りましたれぽ
作者:村上 竹尾
出版社:双葉社
発売日:2014-11-12
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マンガHONZ超新作大賞の何に投票したのか

面白いってなんだろう? 
編集者をしていると、何度となく自問自答する。そして、今回「マンガHONZ超新作大賞」のために、作品を選定していて、やはりこの問いが何度も頭に浮かんだ。

ちなみに、僕は下記の3作品に投票した。投票した理由も一緒に短いながら記す。

 1位 空也上人がいた

このような作品の面白さにレビューを通じて気づいて欲しいという思いを込めて。クリエイターズクリエイターのすごさを、世間に伝えてこそ、マンガHONZの価値があり、マンガHONZらしい作品だと思った。

空也上人がいた (IKKI COMIX)
作者:新井 英樹
出版社:小学館
発売日:2014-09-30
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2位 テンプリズム

自分が編集をしているために客観的になりきれていないものの、曽田正人らしいファンタジーが始まる土台ができている。現実とリンクしない大人向けのファンタジーは、挑戦者の少ないジャンル。
 

テンプリズム1[オールカラー版] (コルク)

作者:曽田正人
出版社:コルク
発売日:2014-08-29

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3位 岡崎に捧ぐ

まだネット連載で単行本は出ていないものの、キャラがすごく立っている。一度、読むと岡崎さんのことを忘れられない。人物描写の仕方、演出が新人離れしている。

タイトル
作者:山本さほ
出版社:note

投票して、全体の順位も出て、B&Bでイベントもして一段落ついた。サイト内での正式発表は年明けになる予定だが、僕の中でモヤモヤが残っていた。
『死んで生き返りましたれぽ』に投票しなくてよかったのだろうか、ということだ。この作品は、レビュアーの兎来さんが、すでに一度、力作レビューを書いている。でも、モヤモヤが消えなくて、僕自身もここで再度、推薦したくなった。

理屈を超える面白さ

死んで生き返りましたれぽ
作者:村上 竹尾
出版社:双葉社
発売日:2014-11-12
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『死んで生き返りましたれぽ』は、拙いマンガだ。敢えてでもある。死の淵にいる人間に見えた世界を描いていて、ほとんどが認識不可能だったため、その拙さが、作者のいた状況を雄弁に語っている。

若くして大病を患い、死にかけた作者の、ドキュメンタリーマンガである。

でも、この作品は、そんなあらすじでは語りきれない、作者の強いパッションがこもっている。その強いパッションを伝えるのに、技術は必要ない。いや、技術がないからより伝わるのかもしれない。子供が必死に何かを訴えかけていると、たとえ言葉が拙くても人の心に深く伝わるの同じである。

この作品からは、生きている喜び、人とつながっていることの喜びが、ヒシヒシと伝わってきる。年末に読み、自身の生活を振り返り、来年を迎える準備をするのにふさわしい作品だ。


Pixivでいまだ無料公開されているので、そちらへのリンクも貼るが、やはり電子書籍で買って読んでほしい。 

『死んで生き返りましたれぽ』Pixiv版

作家はどのように成長すればいいのか?

読者の心に訴えかけるのは、技術ではなく、作家のパッションだ。しかし、あまりにも技術がないと、商品として見栄えが悪く、多くの人に読んでもらえない。だから、技術を磨く。

技術を磨くとは、パッションをコントロールすることでもある。コントロールされたパッションは、もはやパッションとは呼べないかもしれない。そこに、アーティストがどのように成長すべきか、というジレンマが残る。

『死んで生き返りましたれぽ』が、僕にモヤモヤを残したのには、もう一つ理由がある。僕が育成している新人・羽賀翔一が新人賞に投稿した『インチキ君』を製本し、羽賀君のサイトで売り出した。すると、それを読んだ川田十夢や伊坂幸太郎が、すごく面白い!でも、この処女作を超える作品をまだ生み出していないと、感想をくれたのだ。


羽賀君は、4年かけて僕と一緒に技術を学んだ。でも、羽賀君が一人で描いた作品を超えれないでいる。この4年は無駄だったのか? 作家を育成するとは、何をすることなのか? 僕は作家を型にはめてしまって、小さくまとまるようにしてしまっているのだろうか?

そんな悩みを持っているところで、『死んで生き返りましたれぽ』を読んだから、より悩み、モヤモヤしたのだ。

作家は、処女作は、パッションだけで描き上げていいものだと思う。しかし、その後、職業として作家をしていくためには、やはり技術を身につけなくてはいけない。その技術とは、商品として見栄えをよくするために絵をうまくなるだけではない。パッションをどのようにコントロールしながら、強いものにするのかという技術を身につけなくてはいけない。

強いパッションを持ちつづけた作家だけが、面白いものを描き続けることができる。パッションがなくなってしまったことは、絵やストーリーテリングの技術で補うことはできない。
そして、そのパッションを持ち続けるということが、もっとも難しく才能を必要とされる。
それは、経営についても同じだと感じる今日この頃だ。 

『インチキ君』は現在、羽賀君のiPhoneアプリで無料で公開しているので、気軽に読んでみてほしい。

インチキ君
作者:羽賀翔一
出版社:コルク
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ノンフィクションはこれを読め!  2014 - HONZが選んだ100冊
作者:
出版社:中央公論新社
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