NPBに物申す!―『グラゼニ』の原作者と語る、「プロ野球はこうすれば面白くなる!」【森高夕次×堀江貴文】 前編

苅田 明史2015年01月22日 印刷向け表示
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グラゼニ~東京ドーム編~ 3巻発売です!

グラゼニ~東京ドーム編~(3) (モーニング KC)
作者:アダチ ケイジ
出版社:講談社
発売日:2015-07-23
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グラゼニ~東京ドーム編~(1) (モーニング KC)
作者:アダチ ケイジ
出版社:講談社
発売日:2015-01-23
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野球選手の年俸交渉や移籍金など、プロ野球とお金の切っても切れない深~い関係を描く『グラゼニ』。ますます好調な本作は、ついに新章・東京ドーム編1巻が1月23日に発売!
この発売を記念して、原作者である森高夕次と、かつて近鉄バファローズを買収し、球団運営を手掛けようとしていた堀江貴文が「プロ野球変革論」を語ります。

堀江貴文(以下、堀江) 『グラゼニ』、面白いですね!
なんでこんなマンガが今までなかったのか僕には不思議なくらいです。

森高夕次(以下、森高) こちらこそ堀江さんの本()に取り上げていただいて、家宝にしてます。うちの両親も喜んでますよ!

※『ネットがつながらなかったので仕方なく本を1000冊読んで考えた そしたら意外に役立った』(堀江貴文著、角川書店)で、堀江は「お金の教養」として『グラゼニ』を取り上げた。

堀江 僕は最初からずっと読んでますから。主人公の設定()が凄く面白いですよね。

※主人公・凡田夏之介は、ドラフト5巡目で決して強豪とは言えない「神宮スパイダース」に入団した、中継ぎのサウスポーピッチャー。自分だけでなく、他選手の年俸が気になって仕方がない。

森高 僕はヤクルトファンなんでね。神宮に行くとこういう選手がいっぱいブルペンにいるんですよ!笑
それで、これはマンガになるかなぁって思って。

堀江 もともと野球やっていたんですか? 甲子園目指していたとか?

森高 高校までやっていました。田舎の弱っちい学校だったので、甲子園なんてとても・・・。
『グラゼニ』を連載し始めてから、「甲子園に行ったんです!」とかいう人に結構出会うんですね。それだけで「(こうべを垂れて)へへーっ」ってなっちゃう。

堀江 野球とお金って言ったら、『ドラゴン桜』の作者・三田紀房さんとかも有名ですね。あの人も高校野球オタクですよね。

森高 ええ、そうですね。そういえば、堀江さんも三田さんのマンガに登場してますよね。

堀江 『インベスターZ』ですね。このマンガの編集を担当しているのが(堀江の著書である)『ゼロ』も手掛けている「コルク」っていう会社なんですよ。その繋がりもあって、しかもテーマが自分に当てはまっていたので、「来週から堀江さん登場させますから!」って言われて(笑)
『ドラゴン桜』にも帯にコメント書いたり、三田さんと対談させてもらったりもしましたね。

森高 そういえば最近、日経平均が今年最高値(※対談が行われたのは2014年12月1日)とかってニュースありましたけど、堀江さんは儲かりました?

堀江 僕は自分で起業した会社が上場するまで株式投資とかやったことなかったんですよ。もちろん、自社株は持っていましたけど、上場株への投資はほとんどしないですね。

森高 ライブドアの株価の上下だけ気にしていたってこと?

堀江 自分の資産はもう十分あるから、自分の持っている株の値段がどうなるかっていうのには興味がなかったんです。僕の「経営者としての責任」という意味で、株を買ってくれた人たちに文句言われないように、株価を上げるよう努力していました。
僕は自分の資産が増えるかどうかにはあんまり興味がなくて、何か「こういうことやりたい!」って思ったときに、思い通りにできる環境づくりに興味があるんですよ。

幻となった近鉄バファローズ買収の舞台裏とは?!

森高 近鉄バファローズの買収もその延長だったんですか?

堀江 近鉄の買収はちょっと違っていて、会社を成長させるために必要だな、と思って決断しました。そのときは、プロ野球の価値にみんな気付いてなかったんですよ。

プロ野球って、いまのことにしか興味がない人が多い。12球団あるのが普通だと思っていたり、実は10年・20年単位で球団のオーナーがコロコロ変わっていたりすることを忘れちゃってる。
オリックスだって昔は阪急だったし、ダイエーだって昔は南海だった。もっと昔の話をすれば、日ハムは東映フライヤーズだったし。レインボーカラーの派手なユニフォームのチームで、日拓ホームフライヤーズっていう球団が1年だけあったりね。
僕はけっこうプロ野球歴史マニアで、プロ野球名鑑見て、このチームってこんな歴史があるんだ、とか歴史とかデータを見るのが好きだったんです。

森高 ああー、選手名鑑オタクみたいな感じで。

堀江 (『グラゼニ』主人公の)凡田夏之介みたいに年俸とか、どの選手がどのチームに行ったっていうようなフローの情報にはあまり興味がなくて、その仕組みに興味がありました。選手なんてのはごろごろ変わっていくわけで、いまみたいにマネー・ボール()みたいなことが出来る環境にも当時はなかった。見てる視点がみんなとは違うんでしょうね。

※メジャーリーグのオークランド・アスレチックスは貧乏球団だったが、セイバーメトリクスと呼ばれる統計学的手法を用いて、アスレチックスを強豪チームへと変貌させた。この様子が『マネー・ボール』(マイケル・ルイス著)という書籍で描かれている。

森高 やっぱり「球団持つのは男の夢!」っていうのはあったんですか?

堀江 そういうのはないですね~。

森高 三木谷さんとか孫さんもそういう気持ちはないんですかね?

堀江 孫さんはあると思いますよ。三木谷さんはないでしょうね・・・(笑)

森高 確かに、孫さんって優勝時の胴上げのシーンにも出てきますもんね。あれってめちゃくちゃ野球が好きな証拠ですよね(笑)

堀江 実は、僕が最初に球団を持つっていうアイデアを持ち始めたのはダイエーホークスの人に言われたのがきっかけだったんです。
福岡のIT系の集まりにいったときに、たまたま来ていたダイエーの関係者から、冗談で「堀江さん、ウチのチームやばいんで、買ってくれないですかねー」って言われて。そのときは「球場とホテルとの3点セットで300億円」って打診されたから、「無理だよ、そんなの買えないよ~」って返事した。

でもそのとき、「近鉄だったら買えるかもな」って思ったんですよ。そこで、ウチのM&Aチームに近鉄とアポとってもらって検討し始めたんですけど、しばらくしてから「オリックスと合併する」っていうニュースが流れてきた。
さすがにもう、「この話は終わったんだな」って思ってたら、実は選手会がこの合併に反対していたんです。

彼らにとっては死活問題で、12球団あったものが11になっちゃう。下手すると、さらに12球団から10球団とか8球団に減らされる可能性がありましたからね。「どうしても近鉄は存続させたい」っていう危機感を持った選手会が全面的に協力してくれるっていうから、それならオリックスと近鉄の合併を反故にしようってことになったんです。

森高 へ~、そんな舞台裏が。いくら出せば近鉄が買えると思ったんですか?

堀江 もともと赤字だし、20~30億円だと思ってました。プロ野球にはみんなが気付いていない潜在価値があるのに、顕在化してないから誰も気付かないんですよね。プロ野球球団ってたいていは親会社から資金注入されて生きている赤字会社だから、「買ってくれるならタダでもいいよ」って思っちゃってる人が多いんですよね。

でも、純粋に企業価値として考えると、プロ野球ってものすごく広告宣伝価値が高い。例えば全TV局でプロ野球のニュースをやらない日はないわけじゃないですか。新聞の野球欄が無くなることもないだろうし、スポーツ新聞にいたっては1面は毎日ほとんど野球関連ネタですよね。
そこに自分たちの会社の企業名が毎日出てくるなんて、こんな広告宣伝ほかにはないし、プロ野球球団持ってるってだけで日本での社会的信用はものすごいものがある。

森高 堀江さん以外にプロ野球球団買えそうだなって思っていた経営者はいなかったんですかね?

堀江 いなかったと思います。コロンブスの卵みたいなもので、ああやって大騒ぎになって初めてみんな「プロ野球ってこんなスゲえんだ!」って気付いたんですよ。
あの時点では孫さんも三木谷さんも買えるなんて思ってないし、買おうとも思ってなかった。見えづらい価値だから誰も気づかなかった。それは僕が発見したんですよね。

森高 誰もプロ野球球団が買えるなんて思ってなかったんですね。
それにしても、2・30億円あれば球団って買えちゃうんですね。孫さんは個人資産が2兆円あるって聞いたんだけど、ソフトバンクが球団を持てるっていうのは自分のポケットマネー的な感覚なのかな。

堀江 さすがに個人と会社の財布はちゃんと分けていると思いますけど・・・ただ、あの時期にソフトバンクが球団を買ったのはものすごい価値があったんです。

ソフトバンクはなぜダイエーから球団を買収したのか!?

堀江 いまはソフトバンクって携帯電話の会社だってみんな知っていますけど、当時はIT系の人を除いて、「ヤフーは知っているけど、ソフトバンクって何?」っていう人ばかりだったと思いますよ。ボーダフォンを買収したのは2006年ですから、そもそも携帯電話事業すら持っていなかったんですよね。
でも、あの時点で孫さんはすでに携帯電話会社を買うっていう構想をしていたんです。スティーブ・ジョブズから「iPhoneやるよ。これからはスマートフォンだよ」って聞かされていたのが2004年くらいの話なので。
ちなみに、僕はそのときはソニーを買収して携帯電話事業をやろうと思っていたんですけどね。まぁそれは置いておいて・・・。

それで孫さんはボーダフォンを買収したんですが、その時に悩んだんだと思うんですよね。ソフトバンクよりも有名だった傘下の「ヤフー」っていう名前を使うっていう手もあったのかもしれないけど、米国のヤフー本体に気をつかわなきゃいけないから自由には使えない。
結局、ソフトバンクの方を使おうってことになったんだけど、そのときにプロ野球球団っていうのが「ソフトバンク」っていう名前を世に広めるのにものすごく役に立ったんですね。

森高 時期的にそれはありますよね。

堀江 結局、ホークスとiPhoneの相乗効果でソフトバンクは国内で一番成長している携帯キャリアになったんですよ。マスコミへの露出と、一般人への安心感。この2つがめちゃくちゃ大きかった。
ドコモに真っ向勝負を挑むにあたって、球団を持っているっていうのは利いたんじゃないかな。特に九州では本当に効果的だったと思う。

森高 携帯電話って高額なものじゃなくて一般庶民が持つものだから、やっぱりプロ野球と関係しますよね。
もしライブドアが近鉄バファローズを買収できていたら、「(財務上の)重荷になるかなぁ」っていう予想はなかったんですか?

堀江 全然なかったです。結果として新規参入した楽天は初年度から黒字でしたからね。
楽天は球場へのインフラ投資をしてましたけど、あれだって最初は僕が当時の宮城県知事に交渉して「年間5,000万円で宮城球場を自由に使っていい」っていう条件を勝ち取ったんですよ!

森高 それじゃあ堀江さんからすれば、堀江さんが地ならししたところを三木谷さんが横からかっさらっていっちゃたな、って感じなの?

堀江 三木谷さんはそういうのが得意なんですよ(笑)
彼はビジネスマンなんで、新しいことを先頭切ってはじめるタイプじゃないんですね。僕は新しいことを最初にやるのが好きなんで。

ロジャー・クレメンスがプロ野球に!?

堀江 僕はプロ野球の構造には興味あったものの、そのとき(近鉄買収の話が出たとき)まで「マネー・ボール」的な考えにはあまり興味がなかった。
でもそのときにすごく勉強して、結局「プロ野球ってピッチャーじゃん」っていうことがわかった。いかにコストパフォーマンスよく良いピッチャーを獲得できるかにかかっているんです。
それで、ロジャー・クレメンス(
)をメジャーから持ってこようと思ったんですよ。

※ロジャー・クレメンスは、レッドソックス、ヤンキース、アストロズなどで活躍した米国出身のプロ野球選手(投手)。160km/h前後の球速を誇り、「ロケット」と呼ばれた、メジャーを代表する大投手の1人。

森高 え! あのロジャー・クレメンスに声かけていたんですか!?

堀江 いや、声をかけているどころか、クレメンスと契約直前でしたよ。僕らが球団としてNPBに参入できたら、そのチームにクレメンスが来ることになっていました。

森高 そんな情報出ていましたっけ?

堀江 僕、けっこう言っているんですけど、なぜか黙殺されていて・・・(笑)
ロジャー・クレメンスとは握手して、グローブまでもらいましたよ。

森高 2004年だったらクレメンスってまだぴんぴんしていますよね。

堀江 まだそのあとアストロズに行って18勝もしていたんで、日本のプロ野球だったら活躍できたと思いますよ。

森高 クレメンスが日本に来ていたらすごいことですね!

堀江 めちゃくちゃ面白いでしょ。それだけで客来ると思うんですよね。

森高 堀江さんもやり始めると細かいところまで興味出てくるんですね~。

後編では森高夕次と堀江貴文が「日本のプロ野球改革論」を熱く語ります!
後編はこちら

聞き手、構成:苅田明史

グラゼニ~東京ドーム編~(1) (モーニング KC)
作者:アダチ ケイジ
出版社:講談社
発売日:2015-01-23
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グラゼニ(17) (モーニング KC)
作者:アダチ ケイジ
出版社:講談社
発売日:2015-01-23
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