サービス開始4年で累計10億円位はクリエイターにお戻しできていると思います。-E★エブリスタ:池上真之社長

菊池 健2015年02月02日 印刷向け表示
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E★エブリスタ年鑑 2014年版
作者:株式会社エブリスタ
出版社:密林社
発売日:2014-04-18

 - <編集長の部屋TOP>
前編: エブリスタはネット界の文芸誌みたいな位置付けで、漫画原作者を育てます。

「編集長の部屋」コーナー7人目は、株式会社エブリスタ 代表取締役社長の池上真之さんです。E★エブリスタは、2010年6月にサービス開始した、携帯、スマホ、Web向けに小説やコミックを投稿できるコミュニティサイト(UGC)です。サービス開始から既に4年以上経ち、多くのユーザーを獲得し、多くの作家のデビューを支援しています。エブリスタ全体には編集長にあたる方はいないのですが、その代表として池上さんにお話をうかがいます。2010年からトキワ荘PJと一緒にお仕事をさせていただいており、池上さんとはそれ以来のご縁です。 

<E★エブリスタ―池上真之社長(中編)>

エブリスタは小説を投稿する形で、漫画原作者になっていくという道が出来ている 

―― 今、漫画原作者志望のスタンダードな形として、一度、絵を描く漫画家として、マンガを描いてマンガ賞に応募したりする形が推奨されているように思います。一方で、エブリスタは小説を投稿する形で、漫画原作者になっていくという道が出来ているように思うのですが。

そうです。実際にそういった例が多いです。

いま、マンガ原作の需要は高まっていると思います。

今はネット上でマンガとして一度発表されたものが、別の作家によって再度マンガになる、「マンガのマンガ化」まで行われています。また、同人を描いている作家さんを見ていると、話はともかく、絵はとても上手な作家さんも増えてきました。

そんなふうに、マンガ原作の需要が高まってきている中で、エブリスタに小説を投稿する形で、良い漫画原作者が生まれて来る形が作れると、良いのではないかなと思います。

―― なるほど、それは時流を捉えていますね。昔、漫画原作者と作画担当者は、まず原作者が原作を出すと、特に打合せはせずに、その原作を漫画家が解釈して作品にするという形が一般的だったと思います。しかし、『バクマン』あたりから、最初からコンビでマンガを制作するという形も増えてきたと思います。

マンガの制作スタイルも、原作と作画がしっかり別れるというか、アメコミのように分業して作っていく形が増えていくであろうとは思います。

―― そうですね。原作者と作画担当のタイプによって、さまざまなタイプの作り方があるとも思います。

うちで漫画原作者になって行く人を見ていると、元々マンガが大好きで漫画家になりたかったのだけど、絵がどうしても描けないので、マンガにする前提で小説を投稿しているという方もいます。なので、全くマンガ化が難しい作品を作ってきたりする人はあまりいません。

―― なるほど。マンガ制作については、編集者のあり方も含めて、色々と変わっていきそうですね。

大きな流れとしては、(原作者は)キャラクターが作れる人が大事だと思います。ここはまだ、エブリスタでもなかなか出来ていない所なので悔しいところでもあるのですが。今のエブリスタの作品は、設定が締めている割合が大きいのです。

例えば、特殊な密室中でとか、学校の教室で一定のルールで、浮気した同士が何かをするとか、設定が話を動かしていくものが多いです。今のエブリスタの作品は、そういった形ではまれば100万部超えるようなヒットも出るようになりました。

―― いわゆる、パニックホラーですね。最近、増えましたね。

一方で、課題だなと考えているのはキャラクターづくりです。

メディア展開する時に、ファンの方々の気持ちはキャラクターにしか蓄積しないなと感じています。

例えば、とあるゲームがヒットしたとしても、ゲームシステムがウケているような場合では、そのゲームのキャラクターでグッズ展開をしても、ファンにとって価値がないというところがあります。

一方で、例えば『ラブライブ』という作品があった場合、ファンの方々にとって、にこちゃんという存在には、みんなが彼女と「一緒に過ごしてきた」思い出が詰まっていて、共有財産になっていると思うんです。思い出の中にある彼女の性格も、共有財産です。その財産、ブランドのあくまで「象徴」として、ニコちゃんがいるんだと思います。だからこそ、結果として、あの姿形をしていれば、グッズも売れていくのだと思います。

なので、商業的な成功をしていくには、いかに魅力的なキャラを作れるかと言うことが今後は大事なのだと思います。漫画原作者にとって大切なのはキャラクターの内面をいかに描くかですね。

―― なるほど。原作者でも、それは変わらない課題なのですね。

キャラクターを作っていくには、描写力もあるかとは思うのですが、例えばそれは芥川賞に求められるような文芸力ともちょっと違う気がするのです。

良い描写だけでは、なかなかキャラは起たないので、『まおゆう』のように会話文や、文法も「www」(ワラ)みたいな表現があっても良いし、キャラを起たせるのが重要だと思います。なので、スマホ向けに吹き出しだけの作品なのを作っています。

―― あぁ、あのLINEのようなテイストのものですね。

えぇ、私の親でもLINEを使っていますしね、フォーマットはあれで良いのだと思います。なので、凄い高尚なタッチで物語を紡ぐというよりは、「こいつが身の回りにいたら楽しいよなぁ~!」みたいなキャラクターを書ける、活き活きとしたタッチで書ける人がいたら良いなと思います。

人のSNSを覗くような、キャラクターが人にいじられているような様をのぞくような、そういう作品の作り方が良いかなと思います。

あるキャラにこんなことを言わせると読者が沸く  

―― エブリスタのようなセルフパブリッシングの世界で、作家がキャラクターを作っていくというのは、編集者を通さずに、自分の思い通りのキャラクターを描いて来てもらうということになりますよね。それで魅力的なキャラクターは生まれてきますか?

それが、最近は良い形になっていて、エブリスタは作品を載せると読者が褒めたり文句を言ったりするコメントを入れられて、その中で、キャラクターの残念な行動を指摘したりするのです。作家自身もコメントに気をつけて、自分の作品についてファン投票を自分のコミュニティで行って、人気の高いキャラを出して、低いキャラをひっこめたりしています。

―― それは凄いですね!良く判ってらっしゃるんじゃないでしょうか。

ちょっと媚び過ぎてしまうこともあるので、バランスが難しいところではありますが、凄く読者のほうを向いて描いている作家が多いと思います。彼らは、あるキャラにこんなことを言わせると読者が沸くということを意識して描いて、実際に読者が沸くと、それを喜びと出来ているようです。

―― 面白いですねぇ!ネット上のセルフパブリッシングのプラットフォームで、そういったコミュニティが出来ているというは非常に興味深いですね。

少なくとも、文字の作品でそういうことが出来ているところは、うち以外にないと思います。

―― その形は、マンガだとcomicoが強いですね。comicoは1作品のコメント数が数千あったりして、強いコミュニティが出来ていると思います。

私は、個人的にアイドルの世界に興味があって、そこからヒントをいただくことも多いのですが、最近のアイドルのファンの中には、推しているアイドルに自分を認知してもらうことに力を入れる人がいます。また、そのファンの中にもヒエラルキーや役割があるなどして、強いコミュニティが出来ています。

インターネットによる民主化によって、アイドルの世界もネット上のマンガや小説の世界も、気軽に会いに行ける身近なコミュニティが出来てきているのだと思います。

200タイトルほど300アイテムくらいは紙で書籍化しています。  

―― クリエイターのギャラのことについて教えてください。今、エブリスタ上で作品を販売すると、49%のマージンをもらえますね。どうして49%という半端な数字なのですか?

まず、プラットフォーム(docomoなど)が30%を取ります。残り70%のうち70%を作家に提供すると49%になります。

―― あ、なるほど。50%から1%欠けさせたわけじゃないんですね(笑)

―― 手元に『E☆EVERYSTAR YEAR BOOK 2013-2014』という本があります。これによると、エブリスタがスタートしてからこれまでかなりの数の作品が書籍化されていますね。

はい、200タイトルほど300アイテムくらいは紙で書籍化しています。

[E★EVERYSTAR 2013-2014 YEAR BOOK より引用]
このような形で、300アイテムの作品が書籍化している。ネット媒体発と考えると、驚くレベルの数。

―― それは凄い数ですよね!他にどんな展開をしていますか?

映画化、実写ドラマ、最近面白かったのだとTsutaya限定でのレンタルDVDで実写映像化(『秘密屋』)、モーションコミック(『姉弟より近く遠いものはない』)(CV:井上麻里奈他))や、ネット上のアニメ、ラジオドラマ(CV:AKB木﨑ゆりあ、花澤香菜他)、朗読劇@青山円形劇場(真野恵里菜)、王様ゲーム等のソーシャルゲーム、などが主なメディアです。

―― さらっとおっしゃいますけども、事業開始から5年のものとしては、物凄い展開実績ですよね。エブリスタのスタッフの方は、こういう展開にどのようにかかわっているのですか?

立上の当時は、割と作家さんのそばでエージェント的なことをすることは多かったのですが、最近の傾向ではそういうものは減ってきています。

秘密屋 (角川文庫)
作者:永堀 大介
出版社:KADOKAWA/角川書店
発売日:2014-10-25
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姉弟ほど近く遠いものはない 1 (Creative Comics)
作者:小木初見
出版社:小学館
発売日:2013-10-03
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Tsutaya限定でのレンタルDVDで実写映像化された『秘密屋』、モーションコミック化された『姉弟より近く遠いものはない』など、展開方法がとにかく多様。 

サービス開始4年で累計10億円位はクリエイターにお戻しできていると思います。  

―― 書籍化によって、エブリスタにも収入になっているのですか?

えぇ、確かになっていますが、売上全体に締める割合としては、わずかですのでそれほど注力はしていません。主に作家さんの収入になります。

―― エブリスタさんが立ち上がった当初、メディア展開などでかなりエージェント的な動きをされていたように記憶しています。

確かに、当初はそういうことをしていましたが、2013年8月頃に、エブリスタをプラットフォームとして作品を販売していくという形を導入してからは、会社としてそちらに注力しています。他メディアに展開するのは、クリエイターさんの為にもヒット作を作る為と言う趣が強いです。

―― かなりの作品が展開されているので、そこが主たる収入になっていると思っていました。

いえ、うちはクリエイターさんへの戻し率も高いので、ライツ展開ではあまり収益をあげていません。サービス開始4年で累計10億円位はクリエイターにお戻しできていると思います。

―― 現在、売上20億円とのことですが、何が一番収入になっているのですか?

一番多いのは月額会費です。ですが、どれか一つに多くの収入を依存しているわけではありません。他にも、アプリの収入や、ライツ収入、販売手数料、など複数の収入の組合せで成り立っています。

―― そうですか、あれだけの数のメディア展開をされていて、それはでも、場を盛り上げるためのことなのですね。

そうですね。DeNAグループとして求められる事業規模を考えると、エージェントと言うよりはプラットフォームでビジネスをしていかないと規模に見合わないと思います。

中編ここまで。

後編:意識しているライバルは中国の巨大なサービスです。

E★エブリスタホームページ

「編集長の部屋」過去の記事など目次

インタビュー・ライティング:トキワ荘プロジェクト 菊池、番野

E★エブリスタ躍進のきっかけにもなり、タイトル、表紙共にスパイスの効いた『奴隷区』

奴隷区 僕と23人の奴隷(1) (アクションコミックス)
作者:オオイシ ヒロト
出版社:双葉社
発売日:2012-12-12
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