『聞き出す力』タブーを恐れず、話を引き出すには

栗下 直也2015年02月10日 印刷向け表示
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聞き出す力
作者:吉田 豪
出版社:日本文芸社
発売日:2014-12-19
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ベストセラーになった『聞く力』(阿川佐和子、文春新書)が発売されてから約3年。一周どころか数周遅れの感もあるが、「プロインタビューアー」、「本人よりもその人に詳しい」と言われる著者による待ちに待った一冊だ。
 
インタビュー時の面白い経験や背筋が凍った体験などから話を聞き出すのに必要な50の法則を紹介している。登場するのも政治家からアイドル、大御所の芸能人、プロレスラーまで癖のある取材対象者ばかり。インタビュー術に興味が無くてもエピソードそのものが面白く、頁が進むはずだ。
 
俳優の三國連太郎に「三國さんが臆病なのは短小包茎から来ているのですか」と質問したり、暴力団排除条例後に往年のスター・小林旭にヤクザとの付き合いを聞いて「誰が迷惑したの?」という言葉を引き出したり、野球のルールを全く知らないのに張本勲や金田正一に取材して盛り上がったり。
 
一見、無謀な質問や行動に映るが、共通するのは著者が数千冊のアイドル本の収集家であることからもわかるようにいずれも綿密な下調べが事前にあることだ。当たり前だが三國連太郎にいきなり「短小」などと言うわけがない。
『三國連太郎おんな探求』(1977/立風書房)と言う対談集で、「三國さんの臆病って、どこからきてるんですか」と岩下志麻に聞かれたとき、「やっぱり短小包茎からでしょうね」と答えていたことがあったから、その話が聞きたくてしょうがなかったのだ。
 
あっさりと三國に「ハハハハハ!だからコンプレックスがあるんですよ」と言わせ、おまけに包茎手術を決意して病院に行ったものの怖くなって断念したことまで認めさせてしまう。
 
金田正一への取材でも、ショートやDHの存在が分からないほど野球に無関心なのに、力道山、北原三枝、そして金田が表紙の『RIKI』という本を持参して(いつの本だよ…)金田の心を鷲づかみにする。「懐かしいなぁ!これは三枝ちゃんが、まだ処女の頃や!」って嬉しそうに回顧するカネやんだが、このような展開になればもはや野球が好きだろうと嫌いだろうと関係ない世界である。
 
かつて朝日新聞の名記者の疋田桂一郎は気難しい取材相手の場合、対象者の膨大な資料をインタビューに持参して、相手にその資料が見えるようにして途中でわざと離席したという。「そこまで私を調べているのなら仕方がない」と相手を観念させたというが、キャリーバッグをパンパンに膨らまして何十年も前の資料を持参する著者と対峙しては離席云々のテクニック抜きにして多くの取材対象者は著者が現れた途端にお手上げだろう。
 
大物芸能人に短小包茎を尋ねる機会はなくても、社会人は仕事で取引先のニーズや社内の意見を聞き取らなくてはいけない場面が多いはずだ。著者によれば「事前準備は当たり前」で、取材時や取材後に思わぬ事態に直面することも多いという。本書では状況ごとに細かいテクニックを面白話に基づき披露している。中でも繰り返し強調されるのが意外にも礼儀や一般常識の重要性。「社会人の世界はどこも基本は同じなのか」と思う一方で、編集者や取材先に暴言を吐き、仕事を失っていった元週刊プロレス編集長のターザン山本のエピソードは笑えるが物悲しい。
 
巻末には阿川佐和子との対談が収められている、取材にほとんど手ぶらで行く阿川のスタイルは著者と対照的。阿川は良くも悪くも属人化されており、「聞く」と「聞き出す」の違いかと思うと興味深い。
 
サブカル・スーパースター鬱伝 (徳間文庫カレッジ)
作者:吉田 豪
出版社:徳間書店
発売日:2014-11-07
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 サブカル人は40を過ぎると鬱になるのかを探ったインタビュー集。

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作者:吉田 豪
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吉田豪を語るには欠かせない一冊。

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