自分は理解できないが、女性にとって何か大切なことが描かれていることはわかった 『先生の白い嘘』

山田 義久2015年02月25日 印刷向け表示
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先生の白い嘘(1)
作者:鳥飼茜
出版社:講談社
発売日:2014-02-21
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 本作は男性と女性で感想が真っ二つに割れるかもしれない。
というか、タイトルの通り、はっきりいって、自分は主人公の言動が理解できていない。
言葉で理解しようとすればするほど、すり抜ける感じ。

しかし、オスとして猛烈に艶かしいエロスを感じてしまうので困る。
30年以上男をしていると、一通りいろんな体験をくぐるし、多種多様な性的サービスは商業化もされているので、そんじょそこらの性的表現をみても驚くことは少ない。けど、こんなにエロスを感じた表現は久しぶりだ。
ほんと、なんなんだろう。

もしかすると、男として理解できず興奮するだけされられて、ふわっとした状態におかれるのが作者の意図するところなのだろうか。もはや、それも分からない。
しかし、もう次の巻が出るのが待てない。最近Amazonで新巻が表示され始めたので、予約ボタンを連打してみた。

主人公は、原美鈴(はらみすず)。24歳の高校教師。
マジメな国語の先生。一重まぶた、メガネ、地味な服装、服の上からも鎖骨が浮きそうな丸みの少ない体型。昼ごはんもコンビニに買ったであろうアメリカンドックを職員室でかじる。いわゆる人目を惹くような美人や、「女子力」で武装して街を闊歩するタイプではない。

自分を「人間を2つに分けたとき、いつも少し取り分が少ない方にいる」と評する彼女。地味な印象のそのまま、明らかに進学校でない学校が職場であることもあってか、誰も彼女の授業を聞いていない。仕事だけでなく、万事について消極的で、自分から主導権を握ることはない。愛想笑いが得意。
親友からは「純粋」「男性に免疫ない」という評価を受ける。

一方、女性の「市場価値」やマーケティングを冷静に品評する理性的な一面も見せる。パンツが見えるくらいスカートの丈が短い生徒を見て、「自分のセールスポイントは顔より脚とって理解しているのね」、「将来自活しないで男に選ばれて生きていく方向性だと今から気抜けないもんな」と辛辣だ。一方、ヒエラルキーの頂点、美男美女カップルの生徒には、教師ながら萎縮してしまう。その意味では「純粋」と言っていいかもしれない。

しかし、彼女は親友の婚約者と関係を持っている。
ただ、彼女は悪女ではない。
その親友の婚約者は、婚約者がいるにも関わらず女性を強引に食い散らかす、所謂「鬼畜系」であり、彼に強引に奪われたのだ。
このあたりから解釈が難しいが、その時、彼女は「こんな目にあうのが、自分が女のせいだから」と自分に言い聞かせ、心の安寧を取り戻そうとした。

そして、ある日のある男子生徒の相談。バイト先の熟女にホテルに連れ込まれて、関係を迫られたという。その女性から「セックスはいつも男のせい」と迫られ、強引に関係を持たされる。それ以来その生徒は「女性のアソコが怖い」という。
自分と類似する体験を経た上で、真逆の解釈をしている男性、というか、たかだか16歳の生徒。その彼に対して、真正面から「あなたが本当に怖いのは男に生まれた自分自身」、「ホテルであなたは男と女が平等でないって知ったのよ」と喝破し、涙を見せてしまう。

しかし、その生徒は、先生がそんな本心をぶつけてくる姿を見て、急に席を立つ。
淡い性衝動、、というか体が反応してしまったのだ。うまく隠したようだが。。。それ以来その生徒は先生を深く知りたいと思い始める。

一方、彼女は、親友の婚約者と関係を続ける。もちろん彼女主導でないが、身を委ねてしまう。情事の最中後ろから髪の毛を引き抜かれそうになろうとも、陰部の写メを撮られようとも、彼と会ってしまう。彼女のなかで男と女と自分についての自問自答は続いていく。。。

冒頭に述べたように、私はそんな彼女の言動が理解できていない。「女が正しく生きられないのは、、」なんて話は、正直何かしゃらくさいなと思ったりもする。
この作品にひかれる理由を私も自問自答してみたが、、肉がついてない臀部、量の多そうな黒髪、作中の彼女のディテールが異様に艶っぽく感じるのか確かだが、、いや、もっと深い精神的にも、自分が理解しないまま蓋をして通り過ぎたものをつつかれる気がするからか、、、やっぱり、よくわからない。ひとつだけ、この作品、男女で解釈がまるで違ってきそうなことだけは確信に近い。

こんなに自分がどう思うかより、他の読者、特に女性がどう感じるのかを知りたい作品はない。恐らく普段女性が最も大切にしている感情が描かれているくらいは直感的に分かる。
興味を持てそうな方は一読してはどうだろうか。

(出所:第11話 商品価値)
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