『ラーメン食いてぇ!』食べなきゃ死んでも死にきれないラーメンと、ラーメンに命を救われた人たちのお話。【2度読み推奨】

菊池 健2015年03月07日 印刷向け表示
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タイトル
作者: 林明輝
出版社: 講談社/イブニング/モアイ
発売日:2014-1-14

 『ラーメン食いてぇ!』は、ここ1週間ほどSNSを中心に話題になりました。
タイトルに「ラーメン」とありますし、旨いラーメンのお話と思いきや、9話と短い連載の中に、物凄く沢山の要素がおりなされている、緻密で完成度の高い作品です。

物語は、3人が死にかけるところから始まります。

人里離れたモンゴルの高原で遭難した美食家、赤星亘。(あかほし・わたる)妻と二人三脚で繁盛させたラーメン屋「清蘭」の屋上で、亡くした妻を思いながら世をはかなむ祖父、紅烈土。(こう・れつど)ブルーハーツを聞いても、リストカットを止められなかった、孫娘の紅茉莉絵。(こう・まりえ)

赤星は、死んだら食ってやろうと虎視眈々上空から猛禽類に狙われる中、覚醒します。

[引用:講談社 Webコミックサイト モアイ『ラーメンが食いてぇ!』http://www.moae.jp/ ]

次に、孫娘の自殺未遂を聞いて我に返った烈土が、孫娘の覚醒をラーメンでうながし、物語が動き始めます。

[引用:講談社 Webコミックサイト モアイ『ラーメンが食いてぇ!』http://www.moae.jp/ ]

多くのエピソードが、沢山詰め込まれているのに、見事に一点に収れんする高度なストーリーテリング。

本作はラーメン中心の話なわけですが、エピソードてんこ盛りなうえに、印象的なエピソード、セリフ、カットが目白押しです。簡単に並べても、これだけあります。

・ウイグル地区の遊牧民の暮らしと、素朴な素材と最高のグルメ。
・「小麦粉は生きている」と50年間の職人技の集大成による麺づくりのお話。
・食欲こそ、調理人にとって最高の才能であるという看破。
・女子高生の恋愛とイジメと青春ドラマ。
・「これからは麺の時代になる!」と言う、ラーメン業界の趨勢への看破。

短い中にこれだけ詰めこまれていますけども、話は整然と進み、最終9話で見事に収れんしたフィナーレを迎えます。

技術の浅い作家がこれだけやると、大抵の作品は破たんしてしまいます。セリフも描写も、大変な推敲を重ねていることは想像に難くないのですが、最終話に至っては、もう見事なまでのまとまり方を見せます。最終話では、私はもうダバダバと泣いてしまいました。

一読後、何かこう全てを読み切れてない感じがしたので、再読した所、改めてその緻密なネームに驚きました。キャラの表情、しぐさ、コンパクトにまとめる構成や見開きの使い方等、とても練り込まれていて、2度読みすると新しい発見が沢山ありました。そして2度目でも、更に泣けます。見開きもかなり意識されているので、是非、紙にして読みたい作品ですねこれは。

この面白い作品の中でも、ひときわ共感してしまったのが、烈土の奥さんのエピソードです。

 

[引用:講談社 Webコミックサイト モアイ『ラーメンが食いてぇ!』http://www.moae.jp/ ]

食いしん坊であることこそ、調理人にとって最高の才能という看破は、板前やフードプロデュースの仕事もしていたこともある私としては、大変納得のいくものです。
せっかく食べるなら、自分の作った料理を最高に美味しそうだと思いながら作ってくれる料理人が作ったラーメンのほうが、美味しそうですよね。

また、後にはこの食いしん坊スキルを持った茉莉絵の友達、コジマの存在が際立っていき、清蘭復活ののろしに繋がっていきます。

まだ単行本になってないようですが、これはもっと読まれて欲しい作品ですね。最終話から感想を送ると、単行本化に繋がるかもしれません。皆さんで感想を送ってみてはと思います。しかし、清蘭のラーメン、実際食べてみたいです。

[引用:講談社 Webコミックサイト モアイ『ラーメンが食いてぇ!』http://www.moae.jp/ ]

追記後述- 今回ネット上で話題になったことで、単行本化が決まったようです。おめでとうございます!

ラーメン食いてぇ!(上) (イブニングKC)
作者:林 明輝
出版社:講談社
発売日:2015-04-23
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食欲と言う才能について

ちなみに、この「食欲=才能」の法則は作り手だけではなく、食べる側としても当てはまると思います。

一例ですが、facebookに「ラーメン&B級グルメ情報交換会」というページがあります。ここにラーメンの写真をアップしている方が沢山いるわけですが、稀に明らかに普通と違う「美味しそう」な写真をアップされている方がいます。

これも恐らく、写真の撮影技術云々ではなくて、ラーメンが好きで好きでしょうがないから、写真が旨そうに見えてしまうということなんではないかなと思ったりするわけです。

ちなみに、最近食べた中でベストだった写真を一つ。

都内屈指のとんこつラーメン「ばりこて」高田馬場店の「特製」です。いや、旨かったです。
 

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 「マンガじゃねえんだから...」という表紙のセリフがかっこいい、林明輝さんの作品。マンガなんですけど、カッコ良いです^^

BigHearts(1)
作者:林明輝
出版社:講談社
発売日:2003-03-20
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