『広辞苑の中の掘り出し日本語』新刊超速レビュー

栗下 直也2015年03月10日 印刷向け表示
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広辞苑の中の掘り出し日本語 (新潮文庫)
作者:永江 朗
出版社:新潮社
発売日:2015-01-28
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「送別会で『へへやか』に生きて、『ほたえじにたい』と挨拶したら、一同『だあ』って感じでしたよ」

日本で生まれ育ち30年以上経つが、「へへやか」など使ったことがない。へへやかは「のんびりと時日をすごすさま」、「ほたえじに」とは「遊び暮らして死ぬこと。酔生夢死すること」。「だあ」は「あきれたりして二の句が継げないこと」や「死ぬときの叫び声。また死ぬこと」である。とりあえず作文してみたものの、「だあ」の使い方があっているのかどうか、わからない。だって、著者も言っている。現代人にとって「だあ」は「ダア!」であり、アントニオ猪木である。

このような言葉を知って、意味があるのかと言われれば、意味はない。役に立つかと言われれば役に立たない。得意になって使ったところで、ドン引きされるのは目に見えている。

著者は辞書を「引く」のと「読む」違いを指摘する。辞書を「読む」ことで、言葉との意図しなかった出会いがある。著者が広辞苑を読んで、意外な発見を凝縮したのが本書である。

慣れ親しんだ言葉の普段あまり馴染みのない意味も提示する。情けを売るとは「(自分の利益を考えて)人に親切をしておく」という意味だけでなく、「色を売る」「淫をひさぐ」という使い方もある。

「操」とは貞操のことではない。あなたが街頭演説で、女性候補者が「私は操を立てます」と叫んでいたところで赤面してはいけない。その方は、「志をかえない」という決死の覚悟を誓っているのである。街中で「操」と叫ぶ人間が政治家の資質を持ち合わせているのかという別の問題はあるけれども。「志」を使えば良いわけであって。おじさんが興奮してしまうではないか。

著者は辞書を読んで本書を記したが、逆に本書は目次を見て気になった言葉を「引く」のがよいかもしれない。むしろ、読んではいけない。知っていそうで知らない言葉を紹介する類書は多いが、著者の力の抜けた解説も手伝い、肩肘張らずに「引ける」のが特徴だ。500円玉一枚で買える価格。コストパフォーマンスは高い一冊である。

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