自分で自分は燻れない。『いぶり暮らし』で知る深い愛の話

上原 梓2015年03月18日 印刷向け表示
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日に日に暖かくなり、マンガのページを繰る手も軽くなる今日この頃ですが、いかがお過ごしですか?「年齢を重ねることでしか出せない大人の女の魅力」出したい、そんな野望を抱くアラフォー独身マンガ読みの上原梓です。

私ごとで大変恐縮ですが、彼氏いない歴約10年の大ベテランでございます。こうなってしまいますと、「私は味わい深い女であり、大人の味を分かる殿方しか私の魅力には気づかないわけよ。そう!私は燻製のような女なのよ!」などと考えることにより、精神のバランスを保つしか無い訳なんですが、ここに来て「いぶり暮らし」ですよ。

いぶり暮らし 1 (ゼノンコミックス)
作者:大島千春
出版社:徳間書店
発売日:2014-08-20
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同棲3年目のカップル、頼子と巡が、意外と手軽に自宅で燻製を作れて、そのほんのひと手間で食材が格段に美味しくなることを知り、燻製ライフにはまっていくグルメマンガ。だと、読む前までは思っていました。

が!!

全然違ったー!!

いや、全然間違っていないのです実際そういう面もある漫画なのは間違いない!っていうか、本当に美味しそう!個人的には、カマンベールチーズの燻製と手作りベーコンなんか、もう、ヨダレが止まらないほどに食べたいものでした。
しかし……燻されて美味しくなっていたのは食材だけじゃない!2人の愛の生活じゃないですか!

この作品の特徴として、毎回必ず「見開き8コマ」で30分から1時間の時間の流れが描かれます。それは、燻製を仕掛けてから燻し終わって完成するまでの時間。燻製の仕上がりを待つ2人の時間が、ほぼ同じアングルで8コマで描かれているのです。その8コマでは、特にドラマティックなことは起きません。散歩したり、ゲームしたり、お茶を飲んだり、昼寝したりする超日常。そんな超日常が30分から1時間静かに流れた後に待っているのは、素晴らしく燻された食材の数々。
ひと手間かけて燻製化した食材を、そのままペロリとは行かずに、さらにもう一手間かけることによって更なるご馳走にして食べる2人。

これか。
これが愛ってやつか。

超日常の時間に ほんの一工夫を施すことで、燻製のように2人の愛の味が深まって行くってやつか。頼子は巡というスモークチップに燻され、巡もまた、頼子というチップの煙で味わい深くなっていく。2人はお互い影響を受け合いながら、いずれ素晴らしい熟成の時を迎えるに違いない…!!

羨ましい!
「年齢を重ねることでしか出せない大人の女の魅力」ってやつは、いろんな煙を浴びてこそ出せる魅力だったわけで、ずーーーっと独りの私には出せるわけのないものじゃないですか!ハッ!ここであの独身女に対する名キャッチの登場か。「干物女」っていうやつか。煙を浴びることもなく、ただ干されただけという状態か……

というような現実を1冊のマンガに突きつけられはしたものの、同時にどうしようもなく燻製を食べたい欲を刺激された私は、表参道の燻製カレー屋に向かったのでした。もちろん独りで……(燻製作れよ!)
 

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