クスリ・マワシ・カツアゲ・暴走何でもあり…平成元年・バブル後期の大阪泉州ガチヤンキーの生き様に触れる『なにわ友あれ』 僕の心のベストオブヤンキー漫画

小禄 卓也2015年03月20日 印刷向け表示
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湘南純愛組、クローズ、WORST、ろくでなしBLUES、今日から俺は、BOY、特攻の拓、クローバー、カメレオン……etc.

ヤンキー漫画って、時代に合わせて必ず名作があります。マンガが好きな方で、「自分の中のベストオブヤンキー漫画」を持っている人も多いのではないでしょうか。小中高と、タバコを吸うことも、学校をサボることもまったくせず、ケンカなんてもってのほか。そんな、サッカーに打ち込む超青少年だった僕ですが、その暴力的で血の気が多く、それでいてピュアで真っ直ぐなヤンキーたちの青春を描いた漫画は大好きなジャンルの1つです。

そんな中で、僕がゴリ押ししているのが、南勝久先生の描く『ナニワトモアレ』シリーズです。

ナニワトモアレ(1)
作者:南勝久
出版社:講談社
発売日:2000-12-06
  • Amazon Kindle
なにわ友あれ(1)
作者:南勝久
出版社:講談社
発売日:2007-08-06
  • Amazon Kindle

第1部が2000年から2007年までで全28巻、そして同年3月から昨年に至るまで第2部がヤングマガジンで連載されていた(全31巻)にもかかわらず、僕の周りにはなぜか「知らない」「聞いたことはあるけど読んでない」というステータスの人が多いんですよね。

でもその気持ち、分からないでもないのです。僕もはじめはそうでした。絵がなんとなく苦手だったんですよね。第1部の初期のころの絵柄を見ると、人物描写もそんなに上手くないし、コテコテの泉州弁を話すどローカルなマンガだし、女の子が絶妙に可愛くないし、守備範囲の外に置いていました。

それでも、ふとしたきっかけで数年前に単行本を大人買いして読み始めると、出るわ出るわ、スルメのように味が出てきたんですよね。超名作だからこそ、このレビューを読んだ方にはぜひ手に取って読んでいただきたいのです。

「リーダーシップとは何か」を、なにわのチ◯ポザルから教わった

平成元年〜2年の大阪を舞台に、大阪環状線を車で百数十キロ以上のスピードを出し暴走していた”環状族”、いわゆる暴走族たちの日常を描いたこの作品。第1部『ナニワトモアレ』では、ナンパしたいがために免許を取り、新車でシルビアを購入した主人公のグッさんと連れマーボが環状に目覚め、初代会長で走りも女もイケイケのヒロちゃん、優しいチームのバランサー・ヒゲさん、自称「前世が恐竜」というゼンちゃんという数多くの伝説を持つ先輩たちが率いる環状族「トリーズン」に入り、青春を捧げます。

『なにわ友あれ』とタイトル表記を変更して連載を開始した第2部では、シンナーを中学生に売りさばいたりカツアゲしたりと悪名を馳せていたテツヤが、方向性の違いからトリーズンを離れ、マーボ、サトシ、ハマやんとともにスパーキーを立ち上げたグッさんと出会い、環状族に魅せられていきます。

スパーキーのビジョンをメンバーに語るグッさん(左下) 『なにわ友あれ』9巻12-13ページより

本作品は、作者の南先生が若かりしころのエピソードがもととなり、知り合いなどの話を踏まえて描かれたという、ノンフィクションに限りなく近いフィクションマンガだと伺っております。あんな世界が本気であるとは……泉州怖い。

「大阪環状線というローカルな舞台(関西出身の自分としては臨場感がある)」「ケンカと環状レース(ケンカをしたことがない僕ですがすごく興奮する)」「チーム同士の抗争(サッカーチームしか知らない僕ですら、夜道を警戒し始める)」「個性あふれるサブキャラたち(「前世が恐竜」と言われているゼンちゃんや、20歳までに100人の女とヤルと宣言していたブサイクキラー・トモなど……)」「全然可愛くないヒロイン(じわじわとかわいく感じられるようになって、最後には結構好きになってる)」「ヤンキーたちの日常ににじみ出る人間らしさを切り取っている(わりとええ奴やん、と思えてきてしまう)……などなど、魅力を挙げろと言われれば65536個くらい出てきそうですが、僕がこの作品を通して一番好きなのは、グッさんのリーダーシップをビンビンに感じられるところです。

僕は、古き良き男らしさに憧れる、いわゆる男気厨だったりするのですが、特にとりえもない、ただのチ◯ポザルだったグッさんが、トリーズンに出会い、スパーキーを立ち上げ、環状線に生きることでみるみる男気を上げていく姿にしびれます。

トリーズンを離れ、スパーキーを立ち上げたグッさん。まずチームの名前を上げるために、他のチームにケンカをふっかけます。敵にするのは、クスリ・マワシ・カツアゲなどの悪さをしているチームだけ。ケンカをふっかけるためのスジ(理由)を通すためです。そこで見つけたフリングという30人規模のチームを、たった6名で潰しに掛かります。そのケンカをアホみたいに正面から売らないのが、グッさんの狡猾さを物語っているのですが、少数チームが大人数を相手に勝つことを目指すため「スパーキー流桶狭間抗争」と粋な名前を付けてチームを鼓舞し、緻密な作戦で無傷の勝利を得るのです。他にも、「スパーキー一夜返し」で天王寺のハッシュレーシングに見事返し(仕返しのこと)を成功させたのは、Super Coolの一言です。

一番しびれたシーンが、天王寺の環状族・ハッシュレーシングの会長で、人殺しの噂があるアヤが斧で「頭かち割るぞ」と脅してきた時に、一歩も引かず、むしろ自分の頭を差し出すというシーン。

殺しのアヤの斧にもひるまず前に出るグッさん(『なにわ友あれ』13巻110-111ページより)

アヤの斧が振り下ろされるか、グッさんの気合が勝つか……鬼気迫る場面(『なにわ友あれ』13巻118-119ページより)

スジが通っていて、いざというときに前に出る男気があり、現場でもイケイケ(走りは環状族たちの中でもトップクラス)。人望があり、潔さがあり、人情味にあふれ、頭も切れる。僕の中で「リーダーとはかくあるべき」というイメージが、そのまんまグッさんだったりします。一生ついていきます。まぁ、このあと100対20のどえらいケンカをしたあとスパッと引退しちゃうのですが。

先輩レビュアーの小林さんが「大切な事は全て『ドラゴンクエスト~ダイの大冒険~』のポップから学びました。」と言っていましたが、僕は「リーダーシップ」をすべて『なにわ友あれ』のグッさんから学んだ気がします。

ちなみに、『なにわ友あれ』は昨年でシリーズが終了したのですが、その後半年くらい経ってすぐに南先生待望の新連載『ザ・ファブル』が始まっております。最近第1巻が発売されたので、ぜひチェックしてみてください。

ザ・ファブル(1)
作者:南勝久
出版社:講談社
発売日:2015-03-06
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最後に、『なにわ友あれ』最終巻の巻末に南先生が書いていた言葉が何だかとてもグッと来たのでご紹介して終わりたいと思います。

あの頃 若いエネルギーの矛先が 環状に向いた若者たちが 大勢いた

 

時代は バブル後期 金や物に浮かれていた 戦争を知らない世代 命へのリアルな気持ちが 欠損していたのかもしれない

ゆえにあの頃 あの時代にそった青春と環状の歯車が ガッツリ噛み合ったのかも

そんな仲間たちが そんな男が あそこには大勢いた気がするーーー

 

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