清野とおる×堀江貴文 『東京都北区赤羽』ドキュメンタリードラマ放送記念対談

山中 羽衣2015年04月04日 印刷向け表示
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今回、『東京都北区赤羽』ドキュメンタリードラマ放送を記念して、清野とおるさんをお招きして堀江貴文の対談を行いました。場所は『東京都北区赤羽』作中にも出てくるマカロニで行いました。



(清野とおるさんの直筆、色紙と共に一枚)

バイトをしながら描いていた?『東京都北区赤羽』ができるまで


堀江貴文(以下、堀江):『東京都北区赤羽』売れましたね!

清野とおる(以下、清野):売れたんですかね。

堀江:元々この辺に住んでたんですよね?

清野:そうです、隣町の板橋に住んでました。堀江さんは、何がきっかけで『東京都北区赤羽』を読まれたんですか?

堀江:いつも漫画を差し入れられるんです。僕、その中から面白そうな奴をピックアップして読んでるんですけど、この内容がすごいところにひっかかったんですよね。これはおもしれぇなぁと。やっぱり、ビジュアルがインパクトあるし。ハズレ引いちゃうと「あぁ、ハズレ引いちゃった」みたいな。あと、読み応えって結構大事で。さくさく読める漫画だと、それはそれで良くないんですよ。地味にジワジワ読めるスルメみたいなタイプの漫画が良いですね。

清野:読めば読むほど味がでてくるようなってことですね。

堀江:そうそうそう!そんな感じの漫画が一番理想。なんかジャンプの見開き終わりみたいな感じの奴だと、「ササササッ」っと読めて微妙な感じなんで 。 赤羽って、大して特徴ないじゃないですか。よく漫画になりましたね。

清野:僕にとって、目新しいところばっかりだったんですよね。

堀江:こういう世界そのものを知らない、みたいな感じですかね。赤羽の地味なところに光を当てようとしたんですか?

清野:はい。パラレルワールドっていうんですかねぇ。そんなかっこいいもんじゃないですけどね。面白いなって思ったから書いただけで 。 でも、僕は北区民じゃないんですよ今でも。板橋区民なんです。住民票うつさないって決めてるんで。適度な距離を置きつつ、「余所者」として赤羽を観察していたいんです。

堀江:そうなんですね。

清野:結果的に、赤羽のみなさんが絡んできてくれた。

堀江:その前は漫画やってなかったんですか?

清野:いや、ずっとやってたんですよ。デビュー18歳だったんですよ。

堀江:今はおいくつですか?

清野:今34歳です。ヤンマガとかヤンジャンで漫画掲載してたんですけど、まぁ、死ぬほど人気がなくてですね。

堀江:どんな漫画描いてたんですか?

清野:不条理漫画。不条理ギャグ漫画です。それを実家でずっと描いてたんです。それで2回ヤングジャンプで打ち切り食らっちゃいまして。今考えるとよくあんなの2回も連載してもらえたな……って思って。

堀江:人気なかったんだ? 不条理ギャグ漫画からエッセイ漫画に……変わったわけですね。

清野:そうです。デビューした後は、不条理ギャグでいくんだと思って 、そればっかり描いてたんですけど 。 まぁ、通らないんですよ。それで完全に職が途絶えてオリジン弁当で27歳から30歳くらいまでバイトしてました。『東京都北区赤羽』が始まったばかりの頃も、まだオリジン弁当と掛け持ちしてました。

堀江:そうなんだ。

清野:すぐ終わると思ってましたから。

堀江:すぐ終わる……ってのは?

清野:『東京都北区赤羽』の連載がです。どうせ1巻で終わりだろうなって思ってたので。

堀江:よく続きましたね。

清野:ほんとですよ 。 赤羽の皆さんが好意的に応援してくださるおかげもあって、駅前のブックストア談っていう本屋さんでは、6年連続で『東京都北区赤羽』が漫画の売り上げ1位。1店舗で2万冊も出ているそうです。

堀江:えー、すごい。それもう赤羽限定盤出せばいいじゃないですか。赤羽でしか買えないみたいなね。僕、『ゼロ』を書いたとき日本全国ツアーやったんです。そしたら、やっぱりご当地本は売れてますよね。船橋の本屋さん行ったら『ふなっしー』本やっぱすごい売れてるし 。 仙台とか行っても、やっぱり1位はご当地本なんですよ。ご当地とかでしか売ってない地元の出版社が売ってるご当地本みたいなの。

清野:ははは(笑)。いずれそういうふざけたことやりたいですね。いやでも、数年前、少し考えたんですよ。今回も復刻するにあたって未収録漫画結構あって、100ページくらいあるんですけど、それを自費出版で出して、赤羽の本屋さんだけで売ってもらおうかなって思ったんです。

堀江:うん。

清野:めんどくさくって……写植とか全部やるの面倒だなって放置してたんです。

堀江:え、でも2万冊も売れたんでしょ?

清野:でも、1種類じゃないですよ。これまで出した『東京都北区赤羽』シリーズの合計ですから。

堀江:いや、でも……すごいですよね。

清野:赤羽の本屋さんがものすごい推してくれてて、本屋さんに入ったら『赤羽』買わないといけない雰囲気に仕立てあげてくれて(笑)

堀江:はははは(笑)。

清野:ありがたいですね。

堀江:ところでなんで続編は『ウヒョッ! 東京都北区赤羽』なんですか?

清野:最初に連載していたBbmfマガジンという出版社が出版業界から撤退しちゃいまして。本が出せなくなって、必然的に打ち切りみたいな形で終わっちゃったんですよ。その時に、双葉社の漫画アクションに移籍が決まりました。

堀江:だから『ウヒョッ!東京都北区赤羽』に変えたんだ。それ以外に候補はあったんですか?

清野:『ギャア!東京都北区赤羽』とか『パオッ!東京都北区赤羽』とか、いろいろありましたよ。担当の人と一緒に考えて、結果こうなりました(笑)。

 

23区で一番認知度の低い街“北区” 

堀江:北区って何人くらいいるんですか?

清野:北区……何十万人……どうなんですかね。

堀江:けっこういますよね?

清野:まあ、でも高齢者ばっかですよ。23区内で一番平均年齢高いですし。

堀江:(スマホで調べる)33……!すごくないですか? 

清野:そんなにいらっしゃるのですねえ。

堀江:(スマホで調べる)人口分布…… 意外と……北区……若いですよ。全国平均より若者が20代30代が多いです。10代は少ないみたいですけど。

清野:あ、そうなんですね。

堀江:赤羽ってなんで赤羽っていうんでしたっけ?

清野:なんか諸説あるらしいんですけど……赤土がよく出た……とか……由来……あ、『増補改訂版』4巻に書いたんでしたっけ。アカハニ……? 赤埴……!ごめんなさい……赤埴って赤土の別名みたいなやつでそれがなんか赤羽にかわって赤羽になったとか……

堀江:へー、江戸時代はどんな土地だったんですかね。

清野:江戸時代は野っ原だったと思いますよ。お城があったらしいんですけどね。太田道灌が作ったとされる……まあ調べると本当にその城が建ってたかどうかも怪しいらしいそうですが。なんか一応お城の設計図みたいなものは、発見されたらしいんですけど確実にそこにあった……って文献が一切ないらしいんですよね(笑)

堀江:一応山手線通ってますよね。

清野:通ってないですよ。山手線の外側です。通ってるのは埼京線、宇都宮線、高崎線……池袋から8分くらい。便利な街ですよ

堀江:あ、そうだっけ? 家賃も安いですよね?

清野:家賃……いやけっこう高いんですよ。何かと便利なので。川向こうの川口になるとけっこう下がるんですけど。赤羽はけっこう高いんですよ。

堀江:あーそうなんですか。結構マイナーですよね。なんでなんだろ。昔から住んでる人がけっこう多い……

清野:いやぁ……流れ者も結構多いですよ、赤羽って。僕も流れ者ですし。北区って23区の中で一番認知度が低いらしいですよ。どこにあるのかわからないって。みんなわかんないって言う ……認識してもらえない。

堀江:まぁ、ねえ。山手線ゲームとかやるとねぇ。

清野:一番最後まで出てこないのが北区らしいんですよ。

堀江:そうなんですね。赤羽のお祭りとか行ってます?

清野:赤羽馬鹿祭りってお祭りが年に一度あるんです。なんてことない祭りなんですけど …… 昼間から酒を飲む口実にするためのような祭りですね。

堀江:(スマホで調べる)通称、馬鹿祭り……赤羽馬鹿祭り実行委員会……1956年に地元の商店街の商店主たちが4月のエイプリルフールにちなんで開催したのがはじまり……バカバカしいですね。

清野:バカバカしいですね(笑)

(喫茶マカロニ、店外店内の様子)

堀江:このお店(マカロニ)もドキュメンタリードラマの中で出てくるんじゃないですか?

清野:2話目で出てますね。山田孝之さんの歓迎会を開いたのがこのお店です。山田さんが、番組の中で酔っ払ったジョージさんっておじさんに絡まれて怒られるんですよ。「赤羽に引っ越してきても、つまらなかったらすぐ出ていくんじゃないのかおまえは!」って切れられるんですよ。

 

堀江:良い感じの切れ方ですね。それは、わざとじゃないんですよね?本気で怒ってるんですよね? 

(マカロニのマスターが急に割りこんできて)

マカロニマスター:あの時、山田くんが可哀想でジョージさんを怒鳴ってやろうと思ったよ!

でも僕はただの飲み屋のオヤジだし、我慢したんだよ!

(マカロニのマスターの勢いに圧倒されて、急に話を変えるように)

堀江:そうなんですか……。(店の張り紙を見て)従業員募集してますよ。すごくないですか、募集年齢が18歳から75……

清野:時給いいですね。

 

堀江:80歳はダメなのかっていう……しかも住み込み可って書いてある。時給1000円以上ですよ。

清野:ここは45年もやってるお店みたいで。

堀江:45年っていったら僕よりも長生きですね。醤油工場見学記念って書いた写真が貼ってありますね。

清野:多分、これ桜のツアー的なものだと思うんですよ。その間にいろいろ挟むんですよね。工場見学とか。

堀江:結構、楽しんでるじゃないですかここの人たち。

清野:ここの人たちは 楽しんでますよ。 居場所ですから、居場所。ここが無くなったら大変なことになりますよ。この辺り、坂の上なんですけど、非常にお店少ないですからね。あぶれますよ。

堀江:あぁ、そういうことなんだ! 坂の上の人たちの交流の場なんですね。ここもフラっと入ったんですか?

清野:そうです、丁度10年ぐらい前にすぐ近くのアパートに初めて一人暮らししてたんです。

堀江:そうなんだ。

清野:暇な時に坂の上をぷらぷら散歩してたんですけど、夜になるとこのお店ピカピカピカピカ光るんですよ。お店の看板が(笑)。明るい時間は気づかなかったんですけど、それで入ってみたらこんな感じでしたね 。

堀江:最近もこのへんにも来るんですか?

清野:来てますよ。けっこう来てます。忘年会もここでやりましたし。漫画にも出てくるちからのマスター夫婦とかジョージさんも呼んで。

堀江:そこに、いきなり迷い込んできたというか。

清野:はい。皆さんとても良くしてくれて。とてもありがたいことです。

堀江:今は住んでないんですか?

清野:引っ越しました。今回の引越しで 4 回目ですね 。

堀江:なんで引っ越すんですか? どうせこの辺なわけですよね?

清野:一箇所にじっとしてられない性格なのかもしれませんね。

 

 

ドキュメンタリードラマ化されて……

堀江:でもドキュメンタリードラマが始まって、山田さんに持ってかれた感はありますね。いいんですか。

清野:別にいいんです。関わってる人、元から好きな人ばっかりなので。

堀江:山田孝之くんは変な人なんです。

清野:お会いしたことはあります?

堀江:はい。なんか偶然ちょいちょい会うんですよ。赤羽に彼ずっと来てたんですか?

清野:来てたんじゃなくて住んでました。番組に出てくるあのアパートに普通に住んでましたね。急に、「これからちょっと飲みませんか?」って夜に連絡がきたり。カメラ回ってないのにですよ? で、朝方まで二人で飲んだくれたり(笑)

堀江:ちょっと変わったところあるんですよね。僕もね、『東京都北区赤羽』を山田くんが見つけていたことに対して、なんだよ、先に目をつけてたのにって思って。でも、ドキュメンタリードラマを見て「あ……この方向性あるんだ」って感じましたね。

清野:堀江さんと赤羽だったら、どういう方向性になったのか気になります。

堀江:僕はこういう方向にできなかったなーと思って。山田くんはセンスがあるんだよな。ここには引っ越せないし。こういう作品に昇華できない。ここまで行けちゃうことがすごいと思うな。

清野:山田さん、アパートにダニがすごい出るからって、最初にバルサン買いに行ったそうです。それでそのスーパーに毎日行くようになって、レジのおばちゃんに「あなた、最近良く来るけど、山田孝之に似てるわね」って言われて「本人です」って言ったら「またまた〜」って冗談扱いされたみたいですよ。

堀江:そうなんだ。

清野:山田さん、僕が教えたランチのおすすめのお店に行ったら近くの席の若い男がチラチラ山田さんの顔見てなんか携帯いじってたんですって。すかさずエゴサーチしたら「目の前で山田孝之の出来損ないみたいなやつが飯食ってる」って呟いてたらしいですよ。失礼な話ですよね(笑)。その点僕は無難な立ち位置でよかったです。

堀江:そうですよね。赤羽を有名にしたスターですよ。

清野:でもこの間、明け方のすしざんまいで友人とご飯食べてたら、後ろのおやじが僕の悪口言ってましたよ。

堀江:ははは (笑)。

清野:向こう気付いてませんでした。詳しい内容は聞こえなかったんですけど、テンション的に悪口いってる感じだったんですよ。「清野とおるがよぉ……」 って(笑)。

堀江:はははは(笑)。でもその、「清野とおるがよお……」 ってなんかすごくいいじゃないですか。

清野:そのオヤジ「うちにも一回清野が取材に来たことあるんだけどよぉ 」 って言ってたんで、見たら全然知らないおっさんで 。

堀江:来てほしかったのかな。

清野:どうなんですかね。でも「なんでうち来ないんだ、うちに来ないのに赤羽描いたつもりか?」みたいなことはたまーに言われるんですよ。

堀江:つらいね、それは。

清野:以前、描かせてもらった店でも、一回行ったきり行けていないお店があるわけなんです。そしたら、「一回描いたっきり、もうさよならなんだね」とか言われたりするんです。ちょっと前までけっこう気にしてたんですけど 、 もう気にするのやめようって。体は一つしかないし、いちいち気を遣って飲み歩いてたら肝硬変になってしまいますし。

だから、エゴサーチとかも極力しないようにしてますね。

 

堀江:僕も最近はエゴサーチしてないですよ。面倒くさくて。もう限界で……

清野:面倒くさいですよね(笑)

 

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