いま読むべき青春群像劇はコレ! 青春の答え合わせをしませんか?『イチゴーイチハチ!』

版元の編集者の皆様2015年04月02日 印刷向け表示
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■いま読むべき青春群像劇はコレ!

「高校生の人間模様を描いた作品『桐島、部活やめるってよ』は、単純な青春映画の枠を超えた名作である」と聞いて、ふむふむと頷くような人には、相田裕の最新作『イチゴーイチハチ!』は、ぜひ手にとってみてほしい作品です。

この作品はいわゆる青春群像劇です。ゆえに、泣ける! 笑える! スカッとする! など一口で、こうこう、このようなマンガである、と伝えづらい群像劇の宿命を背負っています。登場人物ひとりひとりに、いわば主人公級のバックボーンをもつ世界観の広さが特徴です。

作者の相田裕氏は「月刊 コミック電撃大王」で、『ガンスリンガー・ガール』という重厚な長編ストーリーを描いたマンガ家です。
(知らない人はこちらのサイトをご参照▶http://natalie.mu/comic/pp/gunslingergirl/page/3

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『ガンスリンガー・ガール』はタイトルと表紙を見て、単純な萌え系キャラクターの枠組みのマンガだろうと思ってページをめくっていくと、ひとりひとりのキャラクターのバックボーンの太さ、彼女たちが所属する組織やそこの大人たちが背負う業の深さ、手に冷や汗握るアクションシーンや、イタリアの政治経済知識まで含む奥行きの広さに、バットで頭を殴られるくらいの衝撃を受けます。

たった36頁でその後、約10年間、単行本15巻まで広がる世界を形作る第1話は、まさに名作にふさわしい始まりです。

■こんな高校に通いたかった!

『イチゴーイチハチ!』の登場人物たちが通うのは埼玉にある共学高校。受験勉強に青春を捧げてしまった人には(特に男子校だった諸君には)、「こんな高校に通いたかった!」と思わせる文・武・楽をモットーとした、マジメで明るい生徒たちが集まる私立高校です。

 


物語の最初に登場するのは、やりたいことがまだ見つけていない新入生の丸山幸。幸の中学時代の先輩であり、 美人タイプで体育会系の生徒会長。そして部活に入らないため、生徒会に行くように促される新入生の烏谷公志朗。ほかにも、ルックスだけでなく頭もいい2年生の庶務、三春英子などなど、青春ストーリーを盛り立てるにふさわしい少年少女たちが、生徒会室で一堂に会します。


そんな美女たちに囲まれる生徒会活動に、烏谷は加わることになります。しかし当の烏谷本人は、そんな恵まれた環境に一向にはしゃぐ気持ちにもなれない、重たい個人的な事情を背負っています。
(物語のさらに詳しい内容は試し読みで
http://spi-net.jp/weekly/comic042.html


■生徒会は月見草!?

「富士には月見草がよく似合う」という言葉があります。太宰治の小説『富嶽百景』で、バスの中から富士山を眺める一方、ふと反対側健気に咲く月見草を見つけた主人公が発したセリフで、月見草の美しさが引き立つ名言として有名です。今回、紹介する作品は、学校の月見草ともいえる存在=生徒会執行部を舞台にしています。

 

■青春時代に味わう喜怒哀楽

この作品には「私を甲子園に連れて行って!」とねだるような、魔性のヒロインも出てきませんし、裏で先生たちまで仕切るような、極悪の生徒会組織も出てきません。入学当初、生徒会に集まるのは、運動系の部活を全うできず、野球を縁に集まった少年少女たちです。

一口では言いづらいと冒頭で言い放ったものの、頑張って一口で説明してみますと、甲子園という全国高校生の頂点、いわば富士山を目指す高校生たちは美しいけれど、誰もが目指せるわけではない、むしろその傍に咲いているかもしれない月見草たちの存在を綿密に描く本作は、かつて受験や部活を全うできなかった我々(存分に部活を全うした方には失礼!)に、「青春の答え合わせ」をさせてくれる作品-----と言えるでしょうか。

単行本第1集で描かれるのは、まだほんのさわりともいえる序章中の序章ですが、学生時代には「一部の優等生がやるものだろう」とほとんどの人が気に留めていなかった学生活動=生徒会の執行部を舞台に、青春時代に味わう喜怒哀楽が次々と描かれていきます。

■細部に宿るリアリティー

物語の筋書きとは関係ありませんが、本作品を描く上で、作者は実際の高校、高校生に綿密な取材を重ねています。今どきの高校生たちは、学校の行事のためにMacやwindowsで(古舘伊知郎氏がその存在を最近まで知らなかった)パワーポイントを操るデジタルネイティブ世代であり、自分たちで映像を撮影し、編集ソフトでムービーを完成させることも当たり前です。生徒会の組織や運営方法についても、取材先で実際に聞いたものを参考にしています。

 

連載開始前の取材の量は半端ではなく、現在進行形の高校生の息遣いが、作品の細部に反映されている点で、『イチゴーイチハチ!』は稀有なポジションにあります。「神は細部に宿る」という言葉は、ドイツ出身の建築家、ミース・ファン・デル・ローエが遺した言葉だそうですが、この作品は相田裕氏の繊細な作家性が存分に出ている生徒会・青春ストーリーです。

冒頭の言葉の繰り返しになりますが、『イチゴーイチハチ!』は単純な青春モノの枠を超えた作品です。タイトルに隠れた作品の思いも含めて、ぜひ長い期間をもって、この青春ストーリーを読み解いて頂きたいと思います。
 

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監督:吉田大八
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作者:相田 裕
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