『ドリィキルキル』情熱vs知性、二つの行動原理がぶつかる「お人形さん」退治

工藤 啓2015年04月10日 印刷向け表示
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ドリィ キルキル(1) (講談社コミックス)
作者:ノ村 優介
出版社:講談社
発売日:2015-01-09
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 平和だった日常が“えげつないほどの”地獄に変わる

突如、地上に降り立った「お人形さん(ドリィ)」たち。一瞬にして世界人口の99%を滅亡させるも、その目的は不明。高校球児の16歳イルマも生き残りのひとり。目の前で親友を失い、憧れの先輩マネージャーを守りきれないまま、絶望的な世界を彷徨い続ける。

世界が崩壊するなか、人間は3つのタイプに分かれていく

コンビニで男性に襲われていたバニラは、通りがかったイルマに助けられる。覇気なくその場を離れようとするイルマにバニラは「キミはBタイプだね」と声をかける。世界が崩壊するなか、人間は3つのタイプに分かれるとバニラは言う。

Aタイプ:世界が崩壊して、自由を得た気になって、好き勝手に生きるさっきのヤツら(バニラを襲った男性)みたいなバカ

Bタイプ:知り合い、親族すべて失い、無気力と罪悪感を抱えて生きるバカ

Cタイプ:侵略者(ドリィ)を研究しブチ殺す命知らずの人間(バカ)!

情熱vs知性

バニラが所属するグループは知性をベースにしたリアリスト集団である。侵略者ドリィに怯えることも、無闇に闘うこともしない。「未知の生態」に対して、観察と計画、実行と分析を積み上げ、データを蓄積し、分析を試みる。リーダー田中大福も「人類は小さな一歩の積み重ねで月まで行ったんだ」とドリィ駆逐を焦る周囲をたしなめる。

バニラ:「いまここで闘って殺されるか、一旦退いて私の仲間と共闘するか。どっちが得か冷静に考えてみよっか!」

バニラ:「感情だけで動いてどうにかなってきた世界はね・・・もうとっくに終わってンの!情熱より知性で行動しよ、これからは!!」

バニラ:「試行錯誤(トライアルエラー)してんのよ。どうやったらあのバリアを敗れるのか。どうやったら倒せるのか。どんな生態で何を目的にしてんのか・・・皆アレを解明したくてウズウズしてんのよ」

一方、イルマは典型的な感情型人間。瞬間的な怒りに我を忘れるタイプだ。戦略や知略よりも、目の前のチャンスを奪い取りに行く。

イルマ:「それ、今ここから逃げるってことだろ?冗談じゃない・・・(中略)今助ける!二度と・・・後悔しないために!!」

イルマ:「トライアル&エラー?バリアを解析?捕らえて生態調査?まぁ行いは立派だよ。(中略)何年後?何十年後か?遅いんだよそれじゃあ!!何が感情より知性だ・・・フザケんな!!俺はやるったら絶対やる!!」

イルマ:「根拠は無いけど、なんかわかるんだよ。どう言えばいいか。アイツと俺・・・スゴく同じ匂いがする」

特別な世界と私たちの日常

私たちの日常も、程度の差こそあれ、どこか刹那的に物事を考えて生きるタイプ、根拠は無いが直感と行動力で未来を切り開いていくイルマタイプ、そしてトライアル&エラーの蓄積を大切にするバニラタイプが混在しているのではないだろうか。時として、それらは「合わない」「違う」者同士として距離を置いてしまいがちだ。しかし、その「合わない」タイプの融合こそが、未踏の領域、未知の世界、不透明な未来を切り開いていくのではないだろうか。

ドリィキルキルは、それが創る特別な世界と私たちの日常の境界線を曖昧にしていく。共通の目的を持った行動原理の異なるタイプは手を結ぶことができるのか。

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