今更『弱虫ペダル』にハマって土下座したい気分ですが、弱ペダの魅力について考えてみた

ひらりさ2015年04月14日 印刷向け表示
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今更ですが、本当に今更ですが、今更何を書くんだお前、という感じですが、『弱虫ペダル』はとてつもない漫画ですね。

弱虫ペダル 1 (少年チャンピオン・コミックス)
作者:渡辺 航
出版社:秋田書店
発売日:2008-07-08
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周囲がさんざん沼へと落ち、コミックを所持している友人から30巻までを借り受け、「早く読んで」と催促されつづけ、3月に上演していた「舞台 弱虫ペダル」(ペダステ)のチケット戦争にも参戦していたくせに、この4月まで1冊も読んでいなかったことを、深く深く後悔しています。

結局「ペダステ」のライブビューイングを見に行って大いに衝撃を受け、同行者に「原作もすごいから読んでください」と背中を押されて1巻から読み始めたわけですが、その日のうちに20冊読み、次の日に10冊読み、つづきもKindleでちまちま揃えつつ、しかし最新巻まで読みきってしまうのももったいなくて、pixivの「弱虫ペダル」タグまで徘徊している新年度でございます。

しかし、もしかしたら私以外にも、まだ『弱ペダ』の魅力の前に足踏みをしている人々がいるのではないか……。いないかもしれないし、いても少しかもしれないですけど、でも私なんか、すすめてくれた人に「ペダルやっと読みました。最高でした」って言ったら、「なんでもっと早く読んでくれなかったのか、怒りしか湧きません」って言われたけど、それだったら「なんでもっと強くすすめてくれなかったんだ!」と叫びたい気すらしましたし、そんな人に私と同じ思いをしてほしくない……というおせっかいな仮定のもとに、私の感じたペダルの魅力をまとめてみました。

1.「自転車」という素材のシンプルさ

最近スポーツ漫画っていろいろ流行っていますし、バスケよりバレーよりサッカーより、自転車競技ってふだんだったらまったくなじみのない分野ですよね。

私も「ツール・ド・フランス」とか「アルカンシエル」とか「団体戦だと、一人でも1位になればいい」ということくらいは知ってたんですけど、試合自体はテレビですら一度も目にしたことがありませんでした。 でも、その一方で、自転車自体はバスケよりバレーよりサッカーより日常的に慣れ親しんでいますし、他のスポーツに比べてルールが単純(に見えるの)で、ひとたび読んでしまうと、するすると内容が入ってくるんですよね。そして自分でもちょっとやってみたくなってうずうずしてくる。

現実世界のスポーツが苦手なオタクでも、その世界に入りやすい、というのはすごいことだと思います。

(いちいち風景を描かないといけないし、常にはしってる効果線を描かないといけないから、漫画の作画としてはめちゃくちゃ大変だと思いますが……)

2.主人公がオタクである

主人公の小野田坂道くんは、秋葉原が大好きなオタクです。 そもそも彼は、往復90kmの電車賃を浮かして秋葉原に通うために、自転車を一生懸命こぐうちに、自転車競技の選手に匹敵する自転車の才能を身につけてきていた……という設定なのです。

「いやいや、俺もオタクだけどさすがに秋葉原まで往復90kmは無理だわ、こいつは才能あるんだわ」という気持ちになる部分もあるんですが、坂道くんも別に他のスポーツは得意ではなくて、運動神経もいいわけではなくて、でも自転車っていうのはそういうの関係ないんだ、自転車をどれだけ漕いできたかだけなんだ、っていう話がされるんですよね。 実際は、体格とか運動神経とかもちろん関係あると思うんですけど、「愛」(という言葉をとりあえず仮置きします)が大切だ、ということが描かれるわけです。

そしてそのことが坂道くんが「オタク」であることによって強調されているし、実際、坂道くんがアニメやマンガに救われてきたように、各キャラたちがいかに自転車に救われてきたか、ということが描かれます。
(そして坂道くんも、アニメやマンガを1人で楽しんでいるときには手に入れられずにいた「友達」を、自転車によって手に入れることになります)


『弱虫ペダル』4巻85ページより

私はこれについて、坂道くんは「オタク」だという初期設定が存在するからこそ、登場人物全員が「自転車オタク」(自転車に詳しいという意味でなく)であることや、「好き」という気持ちのとうとさの描写がきわだっていると感じます。そして、それが、スポーツにまったくふれてこなかった自分のような人間でも、素直に楽しめる大きな理由のひとつだなと思うのです。

3.個人戦であり、団体戦でもある

弱ペダで取り上げられているロードレースは「団体戦」です。
団体戦なのですが、最後の勝負を決めるのは「個人」です。

というのも、複数日間集団で走り、最後の日に、最後の日に1位をとった メンバーを擁するチームが優勝、というルールだからです。

というと、最強の個人が1人頑張ればそのチームが最強、つまり結局は個人戦なんだ、とも思えるのですが、 実は自転車競技の一番の敵は「空気抵抗」であり、なんと集団でつらなって走る場合には、 先頭の人だけが空気抵抗を受けていれば、後ろの選手は足を軽く回しているだけでも、 先頭と同じスピードでついていけるらしいんですよね(知らなかった!)。

そのため、勝負においては、「先頭交代をしながらできるだけ選手の個々の負担を分散する」 ことが重要になってくるのです。 だから、途中はなばなしく活躍してもゴール前に散る選手がいるし、 途中はぱっとしない、チームの足をひっぱっていたように見える選手でも、 後半にめざましい活躍をして優勝を奪い取る、というようなことも起こるのです。

そして、優勝という大きな「決着」は最後だけですが、平坦区間に強い選手同士の戦いや、 山岳に強い選手同士の競り合い、そしてエース選手だけでなくそれをアシストする選手の活躍など、 途中途中で、個々の選手にとっての「見せ場」がこれでもかというほど詰まっているというわけです。

 
『弱虫ペダル』13巻30ページより

もちろん、他の団体スポーツでも、個々の選手の見せ場はあるのですが、自転車の場合、 土地を移動しながらのレースなのもあって、見せ場の迫力が段違いだなと感じます。

4.「精神力」による逆転がある

前の項目でも書きましたが、スポーツというのはどうしても、 そもそもの体力や運動神経、才能が大きくかかわってくるものだと思います。 自転車競技だって、おそらくそうでしょう。

しかし、ロードレースは、何日間もぶっつづけで、天気も関係なく走り続け、 食事やトイレも走りながらするような、極限の競技です。そんな極限の競技だからこそ、「精神力」が最後にものをいう、ということが、弱ペダでもはっきりと描かれています。

だから土壇場まで負けているチームや、弱っている選手でも、ちょっとしたことがきっかけで立ち直ったり、 ぎりぎりまで競っている、ぎりぎりで負けている選手が、最後に突き抜けたり、というドラマが、 体力や運動神経や才能を超えたところで発生します。

そのためスポーツ漫画ではあるんですが、選手たちのモノローグでの葛藤や回想は、 もはや武士の切腹前の走馬灯なのではないかと思えるほど、研ぎ澄まされて純化されていますし、 実際、力を尽くしたキャラの脱落シーンとか、「切腹」の風情にあふれています。
(参照:舞台「弱虫ペダル」の中世


『弱虫ペダル』23巻100ページより

そしてだからこそ、それぞれのキャラにどんな展開が待っているのか、 そのときその瞬間になるまで全く想像がつきませんし、1ページ1ページ、すさまじく新鮮に読むことができます。しかも、レースがとても長いので、レース序盤ではメンタルだめだめだった選手が、仲間たちの活躍を見て大きく成長し、最後の最後に逆転をつかむ立役者になったりもするのです。

そのため、最後の1ページに到達するまで、結果はまったくわからず、手に汗にぎって読み続けられるのです。
(実際、インターハイの激闘の結果がああなる、とはまったく予想していなかった……)

5.各キャラの荒削りさの魅力

……とまあ、いろいろああだこうだ言ってきましたが、何よりも、レースを彩る選手たちのはちゃめちゃな魅力が、最高です。とある弱ペダ廃人のお姉さんが「ジャンプ漫画のおもてなしに慣れていた我々の心には、弱ペダの荒削りさがかえって新鮮」と言っていましたが、まったくその通りです。もともと別に女子の目をさほど想定せずに描かれており、また、レースの迫力の描写がすさまじいのもあって、そんなに地顔がイケメンなキャラもいないし、レース中の顔はなおさらです。そりゃ極限で戦ってるので当然です。でもそれがかえってかっこよく、美しく見えてくる不思議さ。


『弱虫ペダル』22巻106ページより

いや、まあ、夢中だからかっこよく見えるのかもしれませんが……。でも逆に言えば、読んだら絶対夢中になることまちがいなしですし、夢中になりすぎて10冊くらいあっという間に読んじゃいますし(そしてエンドレス読み返しに入りますし)、もう39巻も出てるし……なんて思わずに、むしろ39冊だったらまだロードレースでいうと中盤くらいなんじゃないかと思いますので、今更余計なおせっかいかもしれませんが、今のうちに追いつくことを心からおすすめいたします。

 

弱虫ペダル 39 (少年チャンピオン・コミックス)
作者:渡辺 航
出版社:秋田書店
発売日:2015-04-08
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