マンガが図書室に置いていない理由を、マンガを読み聞かせながら考えてみた。もしくは『ふたご侍』が読み聞かせに向いているわけ

小沢 高広2015年04月19日 印刷向け表示
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子供に本を読み聞かせる、というと絵本と相場が決まっている。
けど我が家には、絵本より圧倒的に多くの漫画がある。これを活かさないのはもったいない。
そんなわけで、ふと思いたって長女(7)と次女(4)に漫画を読み聞かせてみた。
絵とストーリー。うん、大差あるまい。
と思ったら、これがもう大当たり。二人とも文字どおり腹をよじって笑ってる。
職業柄のひいき目があるとはいえ、絵本の読み聞かせでは見たことがなかったリアクションで新鮮だった。
読んだのはこちら。

 

ふたご侍 (1) (バーズコミックス)
作者:梅本 チンウー
出版社:幻冬舎
発売日:2012-07-24
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  • 紀伊國屋書店
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表紙のふたごの日常を描いた物語。年齢ははっきりと書いてないけど、未就学児なので、4~5歳かな、と思う。少年漫画であれば、少年が主人公のほうが、読者が感情移入しやすいのと同じで、子供が主人公ならば、やはり子供は感情移入しやすい。
ポップな絵柄もかわいい。細部まであれこれ書き込んであり、初読時にはスルーしたところでも、2回目、3回目に読んだときに、何かを見つけた子供がそれを嬉しそうに指さすこともある。

ストーリーは、たとえばこんな感じ。
食卓の上にぽつんと置かれたカップラーメン。そこで普段なかなか食べさせてもらえない。お母さんが昼寝をしているすきに食べちゃおうぜ、というユン。いまいち乗り気じゃない小春。

ユン。全力で小春を押し切る。



ところがどっこい、なにせまだ小さいからお湯の沸かし方からわからない。
この二人はぶじカップラーメンを食べられることができるのか、そしてお母さんに見つからずに誤魔化すことができるのか? といった感じである。
他にも地球滅亡の危機に怯えたり、自称カンフーマスターのみつごと戦ったり、留守中に来客を迎えたりと子供の毎日は予想以上に忙しい。

漫画の読み聞かせというのは、絵本に比べるとちょっとコツがいる。
ひとつはコマ。絵本なら、原則1ページ、もしくは見開きが1コマ。でも漫画はそうはいかない。
なので、コマを指さしてみた。さいわい『ふたご侍』は、変形ゴマなどはほぼなく、わかりやすいコマわりなので、子供たちも理解しやすい様子。「今の子供は、コマの読み順がわからないから、漫画が読めない」という業界都市伝説めいた話も何度か聞いたことがある。たしかに昔の漫画はコマに番号振ってあったよね。
もうひとつは描き文字。7歳の長女はともかく、4歳の次女は、まだあんまり字を読むことができない。これも指さしながら読んでみた。特に擬態語がツボのようで、ちょっとタメをつけたり、雰囲気を出して読むと、そのたびに声を上げて笑う。
『ふたご侍』は1話あたり7ページ。ゆっくり読んでも10分ほどだから、寝る前に読んで、親が先に寝落ちするリスクも少ないのもいい(ここ大事)。

そしてなにより『ふたご侍』はお母さんがいい。
たとえば、子供たちにおつかいを頼んだときの対応。
とうぜん子供たちは、間違ったものや頼んでないものを買って来ちゃうんだけど、お母さん、顔色ひとつ変えずに、晩御飯のメニューのほうをサクッと変えちゃう。
これはかなり難易度が高い。
そして先ほどのカップラーメンの一件。もちろんバレて、こっそり食べたこと、それを誤魔化そうとしたことなんかは、叱るんだけれど、実は、こういうことだったりする。

 

素敵である。
育児をしていて、この口を出さない、というのが予想以上に難しい。
こういう子供との関わり方って、あこがれる。一方、かつヒヤヒヤしたなあ、という気持ちにもすごく共感する。

自分が幼稚園に通っていたころ、絵本に出てくるキャラクタにどうも違和感があった。正しくて、最後はいつもニコニコしてて、なんというか、現実と違う。現実の自分は、もっとイヤなことを考えるし、あんなにいい子じゃない。大人も失敗するし、もっと感情的だ。そしてあるとき気がついた。あー、これは現実を描いているんじゃなくて、理想を描いているんだ。先生やこの絵本を書いた人は、こういう風になってほしい、と思ってるんだと感じた。
漫画ももちろん理想を描く。そして絵本よりは少し多く現実を描く。『ふたご侍』でいうと、お母さんが、口を出さないところが理想で、ヒヤヒヤするとことが現実だ。
この辺のスタンスが、絵本とは少し違う。どちらがいいとか悪いとかではなく、ただ違う。先日、はじめて絵本を描いてみて、その違いがよくわかった。そしてその違いが、学校の図書室に絵本はあるのに、マンガはほとんど置いていない理由のひとつなんだろう。町の本屋さんもどんどん潰れているし、友達と遊ぶときは、だいたいゲームだ。今の時代、子供がマンガに触れる機会は思ったより少ない。

そんなことを読み聞かせながら考えてた。
もちろん漫画なら何でもかんでも読み聞かせに向いてるかというと、もちろんそんなことはない。理由はいちいち書かない。ただ『ふたご侍』に描かれる理想と現実は、7歳と4歳の子供から、親までが心から楽しめる。

読み聞かせの影響かどうかはわからないけど、最近、長女(7)が『よつばと』を読み出した。タイトルがぜんぶ平仮名で、かつ、すべての漢字にルビがふってある、というのが、選んだ理由だそうだ。『ふたご侍』のあとに『よつばと』。選び方が雑さなわりには、いいチョイスだと思う。マンガも読んでみると、あんがいおもしろいもんだよ。そして『ふたご侍』の2巻が出たら、また読もう。

 

ふたご侍 (1) (バーズコミックス)
作者:梅本 チンウー
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よつばと! 12 (電撃コミックス)
作者:あずま きよひこ
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ねこにこねこどうぶつえんへいく
作者:うめ
出版社:
発売日:2014-09-08
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