『グラゼニ』対談第2弾! 原作者と語る、「プロ野球はこうすれば面白くなる!」 【森高夕次×堀江貴文】 前編

堀江 貴文2015年04月25日 印刷向け表示
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
グラゼニ~東京ドーム編~(3) (モーニング KC)
作者:アダチ ケイジ
出版社:講談社
発売日:2015-07-23
  • Amazon
  • Amazon Kindle
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • 丸善&ジュンク堂
  • HonyzClub
試合内容よりも選手の年俸や移籍金など、プロ野球にまつわるお金の話を描いたことで話題となった漫画『グラゼニ』。先日、新章・東京ドーム編第1巻の発売を記念して原作者の森高夕次と、かつて球団運営に乗り出そうとした堀江貴文がプロ野球について熱く語り合いました。それでも「まだまだ語り足りない」という2人のために、今回対談の第2弾が開かれました!(構成:東本由紀子)

堀江貴文(以下、堀江) 実は森高さんとは先日も対談をしたんですけど、全然話し足りなくて。聞きたいことがたくさんあったので、今回対談の第2弾を行うことになりました。『グラゼニ』という漫画をご存じない方のために簡単に説明しますと、「野球とお金」というみんなが聞きたくても聞けなかったことを赤裸々に描いているんですよね。グラゼニというのは「グラウンドには銭が埋まっている」の略で。

森高夕次(以下、森高) 大もとは相撲の「土俵には銭が埋まっている」というのが先みたいですけどね。野球界では、南海ホークスの監督だった鶴岡一人さんが「グラウンドには銭が埋まっている」と言ったのが最初らしいです。

堀江 野球漫画って、言ってみれば漫画の王道中の王道ですよね。それこそ『巨人の星』とか。一つの週刊誌の中で野球漫画が三つ連載されてる時代もあったくらいで。でもそんな王道の野球漫画の中で、熱血とか仲間とかじゃなく、“銭”を切り口にしたのは森高さんが初めてじゃないですか。

森高 僕も堀江さんに相通じるところがある、と言うには小さすぎるんですけど、人がやらないことをやってみたいんですよね。野球選手が銭を稼ぐということに主題を絞った漫画は誰もやっていなかったので、描いてみようと思いました。

堀江 野球選手ってお金のこと考えてるんだろうな、というのはみんな思っててもなかなか聞けなかった。でもお金のことを描いていても、あまり嫌味がないところがいいですよね。
 

出版社に左右されずに作品を読みたい!
漫画家にもファンクラブを

堀江 森高さんはもともと何をされてた人なんですか?

森高 僕はずっと漫画家で、二足のわらじで原作者もやっています。あとは単なる野球好きオヤジ(笑)。球場に通うのが好きで、球場に行ってるとスタンドからでも舞台裏が見えちゃうんですよね。

堀江 え、原作者だけじゃなく漫画家でもあるんですか?

森高 そうなんです。漫画描けるんですよ、僕。アイデアだけはあるんですけど、漫画を描く仕事って力仕事だから1人で何本も描けない。でも原作をやれば何本か連載できるので、今連載5本持ってるんですよ。漫画家のコージイ城倉名義で2本、原作者の森高夕次名義で3本。

堀江 えー! コージイ城倉さんでもあったんだ。すみません、それは知りませんでした。ずっと漫画家をされてるんですか?

森高 20年くらいはやってるので、案外生き残ってるかな。生き残りで必死ですよ。

堀江 またまた。印税ものすごく入ってるんじゃないですか。

森高 いやあ、堀江さんほど入ってこないですよ(笑)。堀江さんは名前だけで売れるだろうし、単価も漫画に比べたら高いし。普通なかなか文筆業だけでは食ってけないと思うんですけど、堀江さんは普通の文筆業の方よりは遥かに印税入ってるでしょう。

堀江 それはそうなんですけど、僕は印税を信じてないというか。新刊が出た時はバーっと売れるけど、村上春樹とか、そのレベルにならないと絶対売れるとは言い切れない。

森高 そうですね、本を出す商売はあてにならない。ロングセラーということになると本当に数少ないですよ。物を書く人は常に新しい物を発表していかないと食っていけない。

堀江 そこは大変ですよね。だから僕はちょっと工夫をしていて、月額で定額購読というところしか見てませんね。それと先日、一緒にマンガHONZをやっているコルクの佐渡島くんと話しててあっと思ったのが、漫画家さんってファンクラブがないんですよね。何でないんですか?

森高 うーん、一部の有名な作者とかはできるでしょうけど、僕のファンクラブとかはできないだろうし……。

堀江 いや、僕はできると思いますよ。だって僕、森高さんの次の作品読みたいですもん。漫画家って実は意外と指名買いするんですよ。それでこの人の次の作品が読みたいと思っても、編集部がオーケーしないと読めないわけじゃないですか。もう一つは、好きな漫画家が新連載始めてることをある日突然知るんですよ。それはファンクラブがないから。

森高 堀江さんが言ってるのは、メルマガのように作家も個人で配信しちゃえばいいってこと?

堀江 個人で配信とまでは言いません。僕も本は出版社から出してますが、それは本を出しても全国津々浦々の書店に並べるためには、やっぱりそれなりのシステムが必要だから。印税は少なくなりますけど、その方が効率がいいと思ってやっている。そうではなくて、新しい作品を出すときに漫画家が出版社に左右されないシステムがあるといいな、と。僕はグラゼニで森高さんの次の漫画はなんだろうなってすごく期待感が高まってる。だけどまあ、次の新刊の発売日とかは忘れてるわけですよ。そこでリマインドしてほしい。

森高 でも漫画家とか原作者って、すごいモチベーションをあげないと描けない物書きの部類だと思うんですね。その中で出版社の編集者との関係性や、あとはまあ締め切りが設定されているっていうことで描けるのかなっていう部分もあるんですよね。

堀江 もちろんそれは否定しません。ただ、ファンからするとファンクラブが欲しい。ファンにはこの人をフォローしてあげたいという気持ちがあるんです。ツイッターぐらいですよ、あるとするなら。僕は漫画雑誌読んでないから、ツイッターでグラゼニの新刊出たって知りますけど。

森高 最近は雑誌の数が多すぎちゃって、誰かが案内してくれないと面白い漫画にたどり着かないというのはありますね。昔は少年ジャンプ、少年サンデー、少年マガジンとか、その辺を追っていれば新作にたどり着けたけれど。だから今はツイッターみたいなツールがないと、という時代になってきちゃったのかもしれませんね。
 

長嶋茂雄以前のプロ野球は人気がなかった!?

森高 僕おととい本屋に行ったら、堀江さんの『我が闘争』がドンって置いてあって。安直なんですけど、買って一気に全部読みました。あれ一冊で堀江さんの人生がわかりますね。

堀江 そうですね。

森高 僕あれを読んでて、今日本のプロ野球が12球団のままなのは、堀江さんがあのとき近鉄買収しようとしたからなんだって思いました。あの堀江さんの行動がなければ、今プロ野球は10球団とか8球団になっちゃってて、もしかしたら1リーグになってたかもしれない。これは誰も感謝していないことだけれど、子どもの時の原体験が保たれているのは、本当に堀江さんのおかげだなあと『我が闘争』を読みながらしみじみと思いました。

堀江 僕は満足していないんですけどね。だってプロ野球って昔は14球団だったんですよ。歴史を学ぶと、もともとプロ野球が12球団のまま成長しないということが幻想だと分かったので。だから買いに行こうという話になった。それと調べて分かったんですが、結局プロ野球を作ったのは巨人と長嶋さんですよね。長嶋さん以前のプロ野球っていうのは今ほど人気がなくて、大学野球や高校野球の方が熱があったんですよ。

森高 長嶋茂雄がプロ野球を確立した。彼がアマからプロに移ったことによって、プロの人気が上がって、今度は逆に東京六大学が衰退していくんですよね。

堀江 そう。長嶋さん一人で高校野球、大学野球、プロ野球と人気も引っ張ってきた。だからすごい人なんですよね、彼は。朝日新聞と毎日新聞が、高校野球と大学野球を全部押さえてたんですよ。読売新聞は後発の新聞社で、戦前からプロ野球を一生懸命育成してたんだけど、なかなか芽が出なかった。だから長嶋イコール巨人っていうので、読売新聞がプロ野球は俺たちが作ったんだって主張するのは、まあ分かりますけどね。

でもね、僕はあの時一つだけ忸怩たる思いがあって、もっと野球のマーケットを広げるべきだったと思っています。野球が盛んな国って世界的に言うと少ない。アジアは中国とか韓国とか台湾とか、まあ比較的野球が普及しているところはありますけど。あとはアメリカとイタリアとキューバ。

森高 野球人口ってものすごく少ないんですよね。東京オリンピックではクリケットが候補になっていて、要するにクリケットの方が野球人口より多いという。

堀江 クリケットって野球に割と似ていて、インドとかで盛んなんですよね。だから今インドに『巨人の星』が輸出されてるんですけど、野球じゃなくてクリケットになってる。そっちの方が馴染みがあるから。

森高 野球はお金かかるから、やっぱり世界的にはサッカーのほうが底辺人口広がりますよね。サッカーはボール一個あればできちゃうから。野球はグローブとバットとボールとプロテクターと、あとベースがないといけないとかあるから、なかなか広がりづらい。

堀江 まあ底辺人口は広がりにくいですよね。でも僕がやっぱりマーケットを広げるべきだと思ったのは、日本のマーケットだけを相手にしていれば絶対に先細りすると考えていて。少なくともアジアには広げられるだろう、という思いはありましたね。
 

堀江貴文がいなければ、プロ野球の“いま”は違っていた

堀江 でも楽天はねえ、入ってくれてよかったとは思いますけど、三木谷さんはぶっちゃけつまらない人ですよね。

森高 ははははは。そんなこと言っていいんですか(笑)。

堀江 つまらないというか、非常に常識人ですよ。おお、すげー!みたいなことをするようなタイプの人ではないんです。

森高 でも球団は買ったじゃないですか。

堀江 あれももともとね、楽天の執行役員に知ってる仲の人がいて。ちょうど近鉄とオリックスが合併するっていう話が出てた時、突然彼から電話がかかってきたんですよ。珍しいなと思って電話に出ると、「まだ近鉄を買う道が残されているから買おう」と。「でも合併は既定路線だろう」と言ったら、「いやいや、選手会が全面支援するから」って言われて。僕は一つだけ懸念があって、「君は楽天の人でしょ。ボスはなんて言ってんの? 後で梯子外されたら嫌だからね」って言ったんですよ。そしたら「うちのボスはやらないと言ったんで、堀江さんに買ってほしい」と言われて。もう楽天はやらないって言ったのに、こっちが新規参入って言ったら、楽天がやるよって言って……。一番嫌じゃない? そんな梯子の外され方。

森高 僕でもね、トリッキーって言ったら悪いんだけど、「近鉄買ってください」って言われて乗り出しちゃうような、ドン・キホーテ的な感じがやっぱり堀江貴文だと思うんです。三木谷さんは堀江さんの行動を見て「ああいう風に乗り出すと反発を買うのか」とか「ここに行くとこういう壁が待っているのか」というのをシミュレートしていて、堀江さんの立ち回ってきたことを学習しながら行ったって部分があるんですよ。

堀江 まあもちろんそうなんですけど。でも誰もやらなかったら何もならないわけで。

森高 だからやっぱり、そこが堀江さんが三木谷さんをつまんない男だと言うところなわけですよね。先に行くのは堀江貴文なんだから。僕はそこがすごいと思う。堀江さんが手をあげなかったら12球団残っていなかった。

堀江 まあプロ野球はいまより盛り下がっていると思いますね。僕ね、未だに新規参入を誰もしないのが不思議なんですよ。あのとき僕がやったことで自分でも一番すごかったと思うのは、新規参入のルールを明確化したことです。例えば今、4球団いっきに新規参入したいという会社が現れたら、プロ野球は大混乱です。でもその会社がまともで、ちゃんとプロ野球を維持できる財力があると判断されたら入れざるを得ない。だってそういうルールがあるんだから。だから絶対入れるし、それだけの費用対効果があると思うんですよね。

森高 新規参入のルールを明確化したという部分で言うと、下世話な話で悪いんですけど、あの時ライブドアがエロコンテンツを持ってるということでクレームがありましたよね。プロ野球入るときにそういうイチャモンがつくんだとか、そういう経験値を堀江さんが全部一人で積まれたからこそ、次に参入しようという人があのときこうだったからうちはこうしようとかいう知恵をつけられた。

堀江 知恵をつけたならもっとやれよという気もしますけどね。フォロワーがなかなか増えない。

森高 まあ今でさえ、プロ野球に新規参入するというのはハードルが高いということですね。だから堀江さんが当時手を挙げたことが、どれだけ革命的なことだったかという。

堀江 今思えばそうですよね。いや、面白かったですよ。

後編へ続く(5/2に公開予定)

対談の動画はこちらから見られます。

聞き手、構成:東本由紀子
 

グラゼニ (1)
作者:森高 夕次
出版社:講談社
発売日:2011-05-23
  • Amazon
  • Amazon Kindle
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • 丸善&ジュンク堂
  • HonyzClub
  • 漫画全巻.com
グラゼニ~東京ドーム編~(1) (モーニング KC)
作者:アダチ ケイジ
出版社:講談社
発売日:2015-01-23
  • Amazon
  • Amazon Kindle
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • 丸善&ジュンク堂
  • HonyzClub
  • 漫画全巻.com
グラゼニ~東京ドーム編~(3) (モーニング KC)
作者:アダチ ケイジ
出版社:講談社
発売日:2015-07-23
  • Amazon
  • Amazon Kindle
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • 丸善&ジュンク堂
  • HonyzClub

記事へのコメント コメントする »

会員登録いただくと、記事へのコメントを投稿できます。
Twitter、Facebookにも同時に投稿できます。

※ 2014年3月26日以前にHONZ会員へご登録いただいた方も、パスワード登録などがお済みでない方は会員登録(再登録)をお願いします。

コメントの投稿

コメントの書き込みは、会員登録ログインをされてからご利用ください。

» ユーザー名を途中で変更された方へ
 変更後のユーザー名を反映させたい場合は、再度、ログインをお願いします。

ノンフィクションはこれを読め!  2014 - HONZが選んだ100冊
作者:
出版社:中央公論新社
発売日:2014-10-24
  • Amazon
  • Amazon Kindle
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub

電子版も発売!『ノンフィクションはこれを読め! 2014』

HONZ会員登録はこちら

人気記事