ヒット漫画家で漫画学校講師の漫画家が描く漫画学校もの漫画家漫画『ラフダイヤモンドまんが学校にようこそ』

菊池 健2015年06月10日 印刷向け表示
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ラフダイヤモンド まんが学校にようこそ 1 (ジャンプコミックス)
作者:緒方 てい
出版社:集英社
発売日:2014-11-04
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  「学校で勉強して漫画家になれるんかいな?」なんて話は、それはもうしょっちゅう、SNSや業界人同士の話では盛り上がります。

そのことに「現役のヒット漫画家」で「漫画学校講師」でもあり、現在のプロ漫画家の世界も教育の世界も、両方知っている緒方てい先生は、この作品でバシバシと答えています。

[ジャンプコミックス:『ラフダイアモンドまんが学校へようこそ』より]

高槻勇斗は「月刊マンダッシュ」に「ソウルブレイド=イグニッション」という漫画を連載していた16歳の高校生漫画家です。第1話の2ページ目にして、その連載は無事というか、いきなり終了し、彼は平穏な高校生活に戻るはずでした。

普通の高校生活に戻ろうとした矢先、仲間の作家の〆切の修羅場を救い、その徹夜作業が原因で高校留年が、一旦は決定します。

消沈して帰宅した彼を待っていたのは、元漫画家の女性幽霊、天王寺あきらとの出会いと、修羅場を救った仲間の漫画家からの紹介による、マンガ専門学校の講師への誘いでした。
この講師の仕事を受ければ、高校の留年が取り消され、卒業できると提案され、彼は悩んだ末に専門学校の講師を受けます。

[ジャンプコミックス:『ラフダイアモンドまんが学校へようこそ』より]

とまぁ、面白そうな設定がぎっちり詰め込まれたこの作品ですが、すぐ気付くことがあります。

作者の緒方てい先生は、ヒット作『キメラ』などで評価も高く、現在もジャンプ+に本作を連載する、現役作家です。そして、アミューズメントメディア総合学院大阪校の講師もされています。

つまり、主人公と作者ご本人が、同じ境遇なのですね。18歳の高校生であるとという設定や、もしかしたら天王寺あきらのような幽霊が見えてしまっているのかどうかは、判りませんが(笑)

そう考えると、緒方先生が、学校におけるマンガ教育に肯定的であろうことは予想できますし、恐らくこの主人公が語る言葉は、「現役のヒット漫画家」でもあり「漫画学校講師」である方が、主人公に仮託して、マンガを学ぶ学生や、マンガ家志望者に向けてのメッセージを発しているのだと思っても良いのではないでしょうか。

そんな、プロが思いを仮託する高槻勇斗が、最初の授業で発したのがこれです。割と周囲を呪ってます。

[ジャンプコミックス:『ラフダイアモンドまんが学校へようこそ』より]

でも、判るような気がします。

ほとんどのプロ漫画家は、平坦な道から易々とプロになってはいません。

専門学校の1年生と言えば、先月まで高校生だったかわいい若者たちです。プロ漫画家になる授業が始まるのに、本当は描くのではなくて読むのだけが好きな学生もいたりします。そりゃもう、先に修羅場を踏んでいる先生は、何を投げかければ良いか、とても悩むでしょう。

本作では回を追っての勇斗の成長と同時に、沢山の磨きこまれた「プロ漫画家の言葉」が、学生に投げかけられていきます。

恐らく、普段から学生に教えている緒方先生は、そこでも丁寧に言葉を尽くしているのだと思います。講師をして気付いたことや、それでもなお、マンガでなければ伝わらないことを、この漫画に込めたことでしょう。

タイトルでは少し遠慮しましたが、この漫画の紹介をちゃんと書ききると「ヒット漫画家で漫画学校講師の漫画家が漫画の描き方を漫画で語った漫画学校もの漫画家漫画」ということになります。それだけに、細々とマンガ成分の濃いページが目白押しです。勿論、マンガを学ぶ学生にも読んで欲しいですが、マンガ好きな人なら、楽しみ方が何重にもありそうな、素敵な作品です。

だからなのか、私の周りでは、プロ作家さんの評価(多分、専門学校で教えたことがある作家さんたちなのでしょうかね。)が高くて、ジャンプ+が更新されると、ツイッターで作家さん達が、萌えたり悶えたりしている所をみかけました。

単行本は、現在2巻ですが、連載先が話題のアプリ『ジャンプ+』なので、近い話はいつでも無料で読めます。その辺りも先端というか、現場感、現役感があって良い先生だなと思います。

ジャンプ+『ラフダイアモンドまんが学校へようこそ』連載中

『マンガで食えない人の壁』でも、良い事をおっしゃってます。

ネイティブ広告どころか、完全に我田引水でございますが、緒方先生からは、トキワ荘PJ発刊の『マンガで食えない人の壁』(プロ作家に、新人がプロの壁を超えるにはどうすれば良いか聞いた、インタビュー集)でも、興味深いお話を沢山いただいています。

ラフダイアモンドの主人公は十代半ばで、既に連載を一つ終えていますが、実際の緒方先生は25歳くらいからマンガ家を目指されたのだそうです。ある時、スイッチが入ったとか。それも、社会人をしながら原稿を持って行くタイプで、新人時代はじっくり取り組まれたようです。

それだけに、時間の問題や戦い方等、勢いだけではなくて、かなり考えて行動された上で、プロ作家になってらっしゃいます。

一般に、感覚的なタイプの天才選手に、人を育てる才は2物として与えられず、逆に、苦労したり良く考えてプロとしての力を身に付けた人ほど、教えるのが上手かったりします。

そういう意味でも、緒方先生は良い先生なのだろうなと思いますし、正直、ジャンプで連載している作家さんにマンガを教えてもらえる学生さんと言うのは、かなりラッキーですねぇと思うのでした。

マンガで食えない人の壁
作者:NPO法人NEWVERY内 トキワ荘プロジェクト
出版社:NEWVERY
発売日:2012-02-29
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ここまで読んで、  専門学校入学とはいかないけれども、しっかりマンガを学ぶ場所が欲しいと思った方、プロ向け講座について説明している、こんなエントリーもどうぞ。

8歳の女の子が2点透視図法を使いこなす!?「マンガを教室で勉強する意味」

緒方先生の代表作『キメラ』、本編16巻、外伝2巻の長編で、スピンオフ作品も出ている。『ラフダイアモンド』の中でも、頻繁に劇中作例として出てきます。

キメラ 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
作者:緒方てい
出版社:集英社
発売日:2002-07-04
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