元気を出したいときに取り出して読む、ちばあきおの不動の名作『キャプテン』

永江 一石2015年06月29日 印刷向け表示
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キャプテン (1) (集英社文庫―コミック版)
作者:ちば あきお
出版社:集英社
発売日:1995-08
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自分が大学生の時、立川の友人宅で麻雀をしていて5人だったので順番に1人抜けることになり、そこで手に取ったのが『あしたのジョー』のちばてつやの実弟のちばあきおの『キャプテン』であった。作者のちばあきお氏は、その後タクシーから若くして飛び降り自殺をされ、残った作品は数作。代表的なのがこの『キャプテン』と、そこからのスピンオフの『プレイボール』である。

徹マン中に手に取った『キャプテン』の単行本であるが、そのまま貪るように読み続け、麻雀は離脱。全巻借りて帰った。それから25年も経過したあとで単行本を全巻揃えた。ちなみに自分が漫画の単行本を紙で全部揃えたのは『キャプテン』と『プレイボール』と『火の鳥』だけ。それくらい読みたいと思ったわけです。電子書籍が出てからはスペースを取られないのでけっこう買ってるが・・・

で、『キャプテン』だが、古い漫画だけれど読む度に心を打たれる。下町の中学の野球部の代々のキャプテンの話である。どこにもスーパースターはいない。魔球もない。天才もいない。泥だらけになって基礎練習を反復するのみ。その中でもっとも尊敬を集めた(漫画の中では)初代キャプテンの谷口は、のちに墨谷高校に進み、弱小の野球部を強豪校に育て上げる。これが『プレイボール』というスピンオフ版だ。

谷口はとにかく努力と根性の人。2代目の丸井は谷口を慕い、谷口のようになろうとする、やはり努力の人。3代目のイガラシは頭が切れ、4代目の近藤は才能はあるがバカで・・しかし実は・・・という流れなのだが、大人になってから読むと、各キャプテンのマネジメントのタイプが違っていて面白いのだ。

自分がひたすら頑張ることで周囲が付いてくる、口うるさく嫌われがちだがそれを乗り越える、クールで頭が切れて信頼を集める、など、マネジメントの仕方が違うのに、それぞれ信頼を集めて成功していく。これって企業経営も似たようなものだなと思ってしまうのが大人の醜さだよね。

もうひとつ。この作品には「監督」が出てこない。もちろん相手の強豪校には監督はいる。しかし、墨谷二中では生徒たちが自主的に厳しい練習メニューを考え、実践し、試合に臨む。誰にも指導されたり命令されたりしない。これが実はこの漫画の世界観なんだと思う。誰もが好きでやっていて、誰もが苦に思わない。ヱヴァンゲリヲンみたいに「なんでこんなことしないといけないんだ」とか、誰も考えない。そう考える人は野球部を辞めてもいいし誰も引き留めない。ある意味、めっちゃクール。

嫌な仕事を無理矢理させられるからブラック企業で社畜。自分で夢と意欲を持ってやるならモーレツ社員という感じである。いまの若い世代は読んでもピンと来ないかも・・・。

仕事で疲れたとき、仕事にいまひとつやる気が乗らないとき、キャプテンを最初から読むと、なんだか力が出てくる。「自分が好きでやってる仕事で弱音吐いてるんじゃねぇ」と思うのだ。

いまの少年漫画って『進撃の巨人』にせよ『ONE PIECE』にせよ、基本的に「現実的にはありえない世界」「空想の世界」ばかりで、これは今の子供が夢を失っている裏返しなんではないかと思う。リアリティ溢れる世界を描いても「そんなことは現実では無理」になってしまう。キャプテンの描かれた時代はまだ現実の世界に夢があったということをしみじみ感じさせますな〜

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