技術や根性、超人的なプレーよりも、技術や戦略、戦術を学べる、サッカーがもっと面白くなる漫画『BE BLUES!~青になれ~』(田中モトユキ)

工藤 啓2015年07月09日 印刷向け表示
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BE BLUES!〜青になれ〜 1 (少年サンデーコミックス)
作者:田中 モトユキ
出版社:小学館
発売日:2011-06-17
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 なでしこジャパンがサッカー女子ワールドカップカナダ大会で準優勝をかざった。二大会連続優勝はならなかったものの、最後まであきらめずにゴールを目指した姿は本当に素晴らしいものだった。


サッカー男子もワールドカップロシア大会の予選が始まり、サッカーを愛する子どもたち、そしてそれを応援する家族や大人にとっても、将来の夢のため、目前の大会に勝利するため、盛り上がりを見せているのではないか。


そんなサッカーを愛するひとびとが、サッカーがうまくなるために読むべき漫画が「BE BLUES!~青になれ~」だ。その理由は三点ある。


【成長の展開が早い】


小学生時代、埼玉県でサッカーをしていれば知らない者はいないと言われるほどの天才サッカープレーヤーであった主人公の一条龍だが、交通事故により再起不能なほどのダメージを受ける。そこからの復活劇という少年漫画では少なくない展開であるが、小学生時代で引っ張ることなく、中学時代、高校時代と足早に物語が展開されていく。


「キャプラン翼」や「がんばれ!キッカーズ」などは小学生から始まり、中学年代へと展開をしていくが、長い時間をかけて小学生編を表現していく。たまたまキャラクターの年齢と同じであれば感情移入がしやすいが、身体の成長を含む経年でサッカーを見ていくことは難しい。


その点、BE BLUESは、各年代の主要な大会に触れながらも、サッカーをするための進学先に悩み、決断する姿もあり、サッカーキャリアを追いやすいものとなっている。


【勝利のための技術・戦術が豊富に描かれている】


サッカー漫画の王道は、個性的なキャラクターの超人的なプレーによって最後は勝利するものが多い。前出の「キャプテン翼」では、立花兄弟と次藤洋のスカイラブツインシュートをプールで練習したことがあるかもしれないが、現実の試合で使うのは(ほぼ)不可能だ。「風のフィールド」で南野風が命を削って打ち続けたネオ・スプリットアクセルシュートやレーザーアクセルはもはや兵器。カンフーの達人香取一斗が躍動する「かっとび一斗」を読んでソニー(沖縄代表)のドランキングショットに憧れ、足首を損傷したひとも少なくないはずだ(筆者は捻挫)。


BE BLUESは勝利のために必要な技術とは何か。勝利のためにどう活用するのかが、戦術論と併せて語られる。例えば、パススピードはなぜ速くないといけないのか。速いスピードで蹴れることが、遅いスピードで蹴ることにどのような価値づけをするのかが技術論として語られる一方、速いパススピードでは打開できない展開と、そのときに必要な技術・人材、活用するための考え方などの戦術論も組み込まれている。


【ワンプレーの判断も、目標によって解が変容する】


主人公の一条龍は世界の舞台でプレーすることを目標に置いているのだが、ワンプレーの判断と結果が正しくとも、将来世界を目指すのであれば正しくないプレーになることを伝えられた主人公が自らのプレースタイルを変えていくところは、目標によってプレーの解が変容する面白味のある場面である。


全国大会優勝やワールドカップ優勝の目標に対して「いまのままではダメだ」と、キャラクターがさらなる成長を求める姿を描く漫画は多いが、足りない部分を補うべく隠れてトレーニングに励んだり、予想外のプレーができるよう新技術の向上に努めたりするものである。


「シュート」を読んで、久保嘉晴の「トシ、サッカー好きか」に号泣したひとも、掛川高校に勝利するため、田中俊彦のライバル藤田東高校の松下が相棒の小柳と共に編み出したカウンターシュートを覚えているのではないだろうか。勝利を目指して新技術を編み出す姿は少なくない。高校を中退した赤星鷹が瞬く間にJリーガー、日本代表となる「Jドリーム」でも、飛翔編では快速ウィングの中居真が、技術不足を補うため裸足でトレーニングしている最中に空きビンで足を裂傷することもあった。(セロハンテープで応急処置をしていたことが試合中にバレて怒られる)。


話は戻り、BE BLUESでは、試合の場面ごとの判断、その意図が語られながらも、その判断によってゴールが生まれたことをよしとしない。短期的には正解であっても、目標を高く持つのであればこそ、その判断に新たな要求が課されることが面白いところだ。


最近のサッカー漫画は、努力や根性、超人的な肉体や技術で相手を凌駕するのではなく、技術路、戦術論、戦略論に加え、脳科学や人体科学に基づき、物語を進めていくものが面白い。もはやサッカーよりも、何かがうまくなる。何かができるよういなるため、やみくもに頑張るのではなく、しっかりと理論や根拠をまずは考えるといった思考方法を身に付けるための教材のレベルの漫画が多くある。


もし、自分自身はもちろんのこと、友人や子どもたちにサッカーをもっと好きになってほしい。うまくなってほしい。サッカーだけでなく、サッカー漫画を通じた思考方法を身に付けてほしいということであれば、ぜひ、BE BLUESのみならず、以下のサッカー漫画も読んでほしい。

フットボールネーション 1 脚のきれいな選手求む! (ビッグコミックス)
作者:大武 ユキ
出版社:小学館
発売日:2010-05-28
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ファンタジスタ 復刻版 1 (少年サンデーコミックス)
作者:草場 道輝
出版社:小学館
発売日:2014-06-18
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GIANT KILLING(1) (モーニング KC)
作者:ツジトモ
出版社:講談社
発売日:2007-04-23
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ノンフィクションはこれを読め!  2014 - HONZが選んだ100冊
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出版社:中央公論新社
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