かわいい? かわいそう? 姫と王子のどん底逃避行物語『私を連れて逃げて、お願い。』

小沢 高広2015年07月11日 印刷向け表示
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「かわいい」と「かわいそう」は意味がずいぶん違う。
「おいしい」と「おいしそう」みたいなわけにはいかない。

顔がいいだけで取り柄がなく詐欺の片棒を担ぐ男、通称・オウジと、祖父母にウルトラ過保護に育てられたオウジのカモ、通称・ヒメの逃避行の物語だ。
どこまでも一途なヒメ。その一途さを重たく感じつつも、利用するオウジ。

ひとことでいえば不幸の話だ。
読んでてつらい。
なにも境遇やエピソード自体がつらいんじゃない。普段生きてる中で、知らず知らずのうちに自分がその手の世界に目をつぶっていることに気づかされてつらい。次にともすれば、自分は無自覚な加害者なんじゃないか?って疑念がわいて、つらい。
でもそこで終わらない。読み進めるうちに、その加害者って感覚すら「人の不幸は蜜の味」的偽善なんじゃないの?という見透かされ感に襲われる。ぎゃあ。
これが松田洋子ワールドだ。

だからってネガティブなエピソードの波状攻撃が、この作品の魅力だと勘違いしないでほしい。物語の後半、オウジとヒメは、たがいに新しい名前を手に入れる。その名前のぴったりさ。新しい名前で呼び合う二人。か、かわいい。かわいいじゃんかよ、この二人! ぎゃあ。

たしかに「かわいい」と「かわいそう」は意味がずいぶん違う。でもどこかで繋がってるんじゃないか、とこれを読んで思った。

そうそう、ちなみにこの表紙の女の子がヒメ。
正直かわいくない、と思った人こそ、読んで。
読み終わってからあらためて見ると、ちゃんとかわいく見えるから!
 

私を連れて逃げて、お願い。1 (ビームコミックス)
作者:松田 洋子
出版社:KADOKAWA/エンターブレイン
発売日:2015-01-24
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