男と女にだってBLは成立するんだよ……『テンプリズム』で熱くなる、夏

ひらりさ2015年07月30日 印刷向け表示
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からだの関係がなくてもBLは成り立つ

先日、少年マンガや青年マンガを編集されている男性マンガ編集者の方とお話する機会があった。

「俺はBLのセクシャルな点は全然ダメなんだけど、精神性の部分はわかる。たとえば、『天才と大秀才の対立』とか『出会う場所が違えば友になれただろうに……』みたいなの大好きなんですよ、そういうことでしょ?」

と言われたので、

「そうそうそうそうそう、そうなんです!!!!」

と首をガクガクふりすぎて今でもちょっと痛い。

そう、世間一般ではBL=エロでしょ、あるいはBL好きな女子=男同士の肉体関係に興奮するんでしょ、という側面でのみとらえられがちなのだが、違うんだよ! それはあくまで精神性ありきのおまけみたいなものなんだよ!! カレーにとっての福神漬みたいなものなんだよ!!! どうでもいいけどカレーと福神漬だったら福神漬が攻めだろ!!!! と張り手したい気持ちなのだ(もちろん個人の意見であり、エロのみ重視や福神漬は受けという派閥があってもかまわないと思います)。

つい最近「今夜くらべてみました」という番組にNMB48きっての(っていうかアイドル界きっての)商業BL狂い女子・三田麻央さんが出演したときも、まるで「男同士のエロ」にのみ価値を置いているような取り上げられ方をしていたのは大変に残念だった。しかもツイート検索してみると、自らも腐女子と思われる視聴者たちが「人前で話すようなことじゃないでしょ」「腐女子は忍者だから隠れるべき」といった意見を怒涛のようにツイートしていたので、いよいよ悲しくなってしまった(なお、3次元の人間の関係性に萌える「ナマモノ」について語ることの賛否はとはまた別の話である)。

いや、たしかに人前で話さないほうがいいレイヤーの萌えもあるけども、腐女子の萌えている事象すべてがそういうものではないでしょ?  私だってもちろんBLのエロ的な部分も嫌いではないし、精神性のほうがとうといなんて言うつもりもないのだが、腐女子が萌えているもののうち精神性・関係性への理解が一般に広がればと思いながら、こうやっていろいろ書いているのである(まあ99%くらいは何も考えずに書いてます)。

つまり、腐女子は「男同士のいちゃいちゃ」だって好きですけど、「選ばれた者と選ばれなかった者の相克」とか「出会う場所が違えば友になれたのに」とか「故人の遺志をつぐ」とか「相手の好きなものを好きになってしまう」とかそういうのも好きなので、だからこそ少年漫画とか青年漫画とかにも萌えを感じるし、そこに思わず「男同士のいちゃいちゃ」まで付加したくなるってことなわけです。そして「男同士のいちゃいちゃ」手前のところで萌えるところまでは、腐女子の方以外にも共有でき、楽しんでいただける感覚なのではないかと思う。

男同士のラブじゃなくてもBLは成り立つ

という、私のように「いちゃいちゃも好きだけど、いちゃいちゃ以外にだって萌えられるよ」派閥や、「言いたいことはわかる」という非腐女子の方にぜひおすすめしたいのが、曽田正人さんの『テンプリズム』です。前置きがいつも以上に長かった……。

テンプリズム 1 (ビッグコミックス)
作者:曽田 正人
出版社:小学館
発売日:2014-08-29
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謎の技術を手にした「骨(グウ)の国」が幅をきかせている世界。すでに「骨の国」にほろぼされてしまったカラン王国の元王子・ツナシは家臣のユイや家臣たちとともに身をひそめて暮らしている。自分が世界を救う「光の剣士(オロメテオール)」だと言われながらも実感できず暮らしていたツナシだったが、いよいよ骨の国の脅威が迫ったとき、ユイの犠牲によってツナシの力は覚醒し、骨の国を倒す旅が始まる……。


『テンプリズム』第1話より

ええ、今回もこのあらすじだけで7つくらい萌えポイントが入っています。

・亡国の王子
・信頼した友の裏切りと犠牲
・故人の遺志をつぐ
・予期せぬ大きな力を得てしまった葛藤
・謎の美少女
・強い美少女
・冷酷な美少女


『テンプリズム』第1巻より

あ、すみません、あらすじに美少女出てこなかったんですけど、あまりにも好きすぎて、勝手に書いてしまった。強くて冷酷な謎の美少女とは、骨の国の天才少女ニキ・メノンのこと。ツナシが骨の国を倒すために強くなり、仲間を得ていく過程だけでなく、骨の国の内部の人間たちの思惑・画策が描かれていくのも『テンプリズム』の醍醐味です。


『テンプリズム』第2巻より

今回ド直球にBLだなと思ったのは、ツナシとユイの関係でも、ツナシと骨の国の脱走兵・アップンの関係でも、ツナシとカラン王国の長老・事九の関係でもなく、ツナシと美少女ニキの関係でした。そう、BLって(私のなかでは)男女だろうが成り立ちます。

だって、

・自分の力を持て余している天才(ツナシ)への大秀才(ニキ)の激しい葛藤
・ 違う場所で生まれていれば友になれたかもしれない……
・ 憎しみなのか羨望なのかぐちゃぐちゃな感情
・ 自分の信念をゆるがされる恐れと期待

などがもりだくさんであれば、もう性別とか関係ないですよ。


『テンプリズム』第4巻より

BLを象徴するセリフとして「男とか女とか関係ない、お前が好きだ」というものがありますが、ってことは男とか女とか関係なくBLは成立するのです。

まあ最近のエピソードでは、男女的な意味でもニキちゃんがツナシを気になりだし、しかもそれが幼なじみで骨の国諜報部所属の女子ベルナにバレて、いよいよ盛り上がっているところなので、もちろん男女的な恋愛もお楽しみいただけます。それにしても、ニキとベルナもそれはそれでBLだし、あと私はニキと事九さんの関係もすさまじくBLなんだ……。私は個人的なカップリングでいうとニキ×事九推しだよ……。


『テンプリズム』第3巻より

「おいおい、暑さで頭がおかしくなったんじゃないのかい?」と思ったあなた、私は夏だろうが冬だろうが頭はおかしいのですが、ここで書いていることは本当です。ちょうど5巻も発売し、ある程度まとめて一気読みできるタイミングの今、嘘だと思ったかたは、ぜひぜひ読んでみてくださいね!

テンプリズム 5 (ビッグコミックス)
作者:曽田 正人
出版社:小学館
発売日:2015-07-30
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出版社:中央公論新社
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