「生きる価値のない人間」は臓器を売り払ってサヨウナラ『ギフト±』 命は大事に使わないとね

佐藤 樹里2016年01月18日 印刷向け表示
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ギフト±(3) (ニチブンコミックス)
作者:ナガテ ユカ
出版社:日本文芸社
発売日:2016-01-18
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暴力や性犯罪などの罪を何度も犯す人間について、テストステロンの関係がとりざたされている。テストステロンとは男性ホルモンの一種で、アメリカの心理学者が調べたところによると、暴力性の強い犯罪をおかした人間ほど、テストステロンが多量に分泌されていたという。つまりこうした犯罪者というのは、ある種の「病気」であり、その「病気」を直さない限り、再犯し続ける。

なぜこんな人間が野放しになってしまうのか、という理不尽な状況は、道徳や倫理や改悛の情とは関係なく、このような「病気」をもった犯罪者に、社会として対処する手段を、我々が持っていないから起こっているのである。そして、こうした「理不尽」に対する過激な解答を示しているのが、今回紹介する『ギフト±(プラスマイナス)』という作品だ。

『ギフト±』は臓器の密買というぎりぎりのテーマをあつかっている。その臓器を獲得する手段は、主人公たちが「生きる価値がない」と判断した犯罪者たちである。幼児性愛者やネグレクトで乳児を死亡させてしまう女性など、主人公は「道徳的な悪」を断罪する。その断罪された悪人たち、言い換えれば「生きながらにして死んでいる」ものたちから臓器をとりあげ、「死んでしまっても(臓器として)生きている」状態へと変換するのがこの物語の核である。

社会に不必要とされる人から、命を必要としている人に再分配する。臓器だけが新しい身体で生きつづける。『ギフト±』ではこれから臓器をいただくターゲットのことを「クジラ」という。

 (ギフト± 第1巻 ナガテユカ) 

とにかく無駄な所がない

昔からクジラは全身を資源として活用されてきた。歯は靴べら、印材、すじはラケットのネット、骨や皮は口紅、クレヨン、石鹸などの製品の原料として様々な製品に姿を変えてきた。食用のくじらベーコンやくじらの刺身はその一部であることがわかる。少し恐ろしい話ではあるが、クジラとリンクさせて作中で次のように語っている。

 

 (ギフト± 第1巻 ナガテユカ) 

主人公の少女は「クジラ」を選ぶのにこだわりを持っている。対象は「生きる価値の無い人間」である。 誰も気がつかない匂いを嗅ぎつけ、犯罪の現場で獲物を確保する。少女に感情の起伏はない。冷酷かつ淡々と仕事をする。

「命の大切さ」と「命の使い方」

少女は「命の大切さ」をわかっていない人間には「もっと命を大事にしないと」と諭す。一方で「命の使い方」を間違えている人間には自分から出向いて獲物にする。命を粗末にする人間よりも、いま命を待っている人間(臓器移植待ち)がいるからだ。

 

 

 

 

 (ギフト± 第1巻 ナガテユカ) 

この臓器売買のストーリーができる背景には臓器移植の現状が大きく関わっている。日本臓器移植ネットワークによると現在移植希望登録者は13837人。内訳は腎臓が12572人、心臓423人、肝臓380人、肺258人、膵臓198名、小腸6名(7月31日時点)となっている。移植希望者の90%は腎臓を待つ人工透析患者である。驚くべきことに2014年度の全体の移植件数は253件であり、需要の2%にも満たない。移植を待っても、自分に合う臓器が見つかる確率は極めて低く、いつになるかわからない待機を余儀なくされる。この日本の現状が、『ギフト±』の背景にある。この作品は、そうした現状に対する過激な解答でもある。

寝屋川の事件のことを考えると、社会的に「生きる価値のない人間」が存在し、そういう人間とどう共生していくのかについて、もっと深く考える必要があるのかもしれない。日常は、ほとんど考えることのないこのような問いについて、この作品を読むと考えさせられる。この作品のような、ギリギリのテーマをあつかったフィクションが存在する意味というのは、こういうところにあるのかもしれない。

 

ギフト±(1) (ニチブンコミックス)
作者:ナガテ ユカ
出版社:日本文芸社
発売日:2015-07-18
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ギフト±(3) (ニチブンコミックス)
作者:ナガテ ユカ
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