新人漫画家は原稿100ページ以内にデビューしないと、長い長い下積み期間に突入する。

菊池 健2015年09月06日 印刷向け表示
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先日、マンガサロントリガーで、ペンタブレット世界No1のワコム社のニコニコ生放送「マンガ登竜門」に出させていただきました。私の持ち場では、良く失くしてしまう、タッチペンの芯の代わりに、パスタを使う人がいるという話が一番ウケましたけども、漫画業界のデジタル制作の現状みたいな話もさせていただきました、近々動画のアーカイブも出る予定とか。

さて、このイベントにトキワ荘PJ入居者が遊びに来ていて、イベント後の懇親会(トリガーのイベントはこれが楽しいです。)で話をしました。彼は先日、スピリッツで受賞&デビューしてます。おめでとう!

彼は、以前に私から「100ページ描くまでにデビューしないと、後が長引くよ。」と言われたことがきっかけで、これを受賞できたというのです。今回はそのお話です。 

新人漫画家は原稿100ページ以内にデビューしないと、長い長い下積み期間に突入する。

トキワ荘PJ発刊の『漫画家白書』による調査では、連載経験のある作家は、デビューまでの期間に、平均で約240ページの原稿を描いてるとなっています。ちなみに、そのうち半分の方が月に1作品という量産ペースでした。

平均すると、それ位頑張る必要があるということですね。30ページの作品で言うと8本描く必要があるということです。新人には結構な本数です。トキワ荘PJの新人漫画家入居期限は3年ですが、この間に240ページ描けるかどうかは、一つの基準かも知れません。

このデータをさらに詳しく見ると、以下の10ページのようなものになります。

連載経験のある作家は100ページ以内で1/3がデビューしています。そして、そこを抜けると、しばらくは大きなピークはなく、500ページを超えてデビューというところに20%=1/5の人がいます。

新人の投稿作は31p-45pが多いです。つまり、原稿を描き始めて約3本以内にデビューしない場合(100~150P以内)しばらくなかなか芽が出ず、500Pを超えた辺りまで頑張ると、地力がついてデビューが出来ると、このデータからは読み取れます。

これまで漫画家支援をしてきての経験からすると、真剣に漫画家を目指す人が、100ページの原稿を描くまでの期間は、1~1.5年ほど。500ページを超えるのは、3年~5年位だと思います。


これは、素直に分析すると、天才はさっさとデビューして、才能の無い人は、コツコツ数年努力すると、努力の積み重ねでデビューが出来るということを示しているように思えます。でも、どうもそれだけでもないのですね。

100ページまでにデビュー出来た人、水谷君の場合。

水谷君はこの数字を更に掘り下げ、ちょっと違う見方をしていました。

彼は、丁度3作品目を描き終わりかけた時に、私の「100ページ以内~」という言葉を思い出し、自分の3作品目を見直し「これではダメだ。」と、原稿を破り捨てたというのです。

この気付きは、彼の中に別人格である編集者が生まれた瞬間でもあると思います。これは、以下のコラムでKiss編集長の鈴木さんもおっしゃっています。

編集長の部屋(5)後編:Kiss 鈴木学編集長-漫画家さんは自分の中に編集者を飼うべきだと思うのです。

3本目の原稿を描いていた彼は、原稿作りにも少し慣れてきました。慣れから来る惰性に気持ちを委ね、油断したクオリティで原稿制作を続けてしまったことを、自分で気付いたというわけです。

そこで彼は、せっかく作った3本目の原稿を破り捨てて未完のまま闇に沈め、新たに100ページ目に到達する原稿を、吟味し直して必死に作り直したそうです。

その結果が、月刊スピリッツでの佳作受賞&読切掲載デビューに繋がったというのです。普通、こうして完成をためらって途中で原稿を止めることは、完成させる力を損ねることとして、良くない事と言われていますが、この場合は良い方に作用したと思います。

根本的な話として、原稿を短い期間に沢山描く経験は新人作家にとって必須です。更に当たり前ですが、原稿をただ惰性で描くだけでは上手くはなりませんし、結果も出ません。トキワ荘PJでは、新人には原稿を沢山早く描く事を推奨していますが(デビュー済みの人にも)残念ながら1000ページ描いても、漫然と描いて来てしまったため、どうしてもプロになれない人間も、稀に見てきました。

この辺り、ただ漫然と描いているとなかなか身に付けていくのが難しい所ですが、漫画家志望者の皆さんは、コラム「編集長の部屋」や「マンガで食えない人の壁」シリーズなどで、その壁を超えたプロの姿勢を様々な角度から書いています。是非ご覧ください。

トキワ荘プロジェクト 最近の連載作品の単行本化

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