少年たちは時速120kmでピンポン球を打ち合い、0.08秒で会話する『少年ラケット』 スピード感、戦略性、友情、才能の覚醒

角野 信彦2015年09月08日 印刷向け表示
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少年ラケット 1 (少年チャンピオン・コミックス)
作者:掛丸翔
出版社:秋田書店
発売日:2015-09-08
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「貴種流離譚(きしゅりゅうりたん)」という耳慣れない言葉があります。スターウォーズや機動戦士ガンダムも広くその定義をとらえれば、「貴種流離譚」ということができるといわれています。それでは「貴種流離譚」とはどういうものかというと、

「高貴の血脈に生まれ、本来ならば王子や王弟などの高い身分にあるべき者が、『忌子として捨てられた双子の弟』『王位継承を望まれない(あるいはできない)王子』などといった不幸の境遇に置かれ、しかし、その恵まれない境遇の中で旅や冒険をしたり巷間で正義を発揮する」という話型を持つもの Wikipediaより

スターウォーズでいえばルーク・スカイウォーカーがダースベイダーの息子であることとか、ガンダムでいえば、シャア・アズナブルが、ジオン・ズム・ダイクンの息子であることが物語の最初では隠されています。そうした高貴な身分をもったキャラクターが、活躍し、最後には親を殺す、親の仇を殺すなどの結末に至ります。

なぜこんな話をしたかというと、今回紹介する作品『少年ラケット』が、王道どまんなかで、主人公が「記憶喪失」、強い敵に出会うたびに覚醒し、成長していく「貴種流離譚」卓球マンガだからです。主人公のイチローが覚醒するときのワクワク感は異常です。それは『ドラゴンボール』で悟空がメチャメチャに痛めつけられた後に、回復して「どんだけ強くなってんだろう?」というときのワクワク感に似ています。

そして、この『少年ラケット』のもう一つの魅力は、卓球の細かい戦術・技術、歴史についてもていねいに表現しようという作者の意思です。日本人で唯一、国際卓球連盟の会長になった荻村伊智朗の言葉が作品のなかで引用されています。

掛丸翔『少年ラケット』1巻

卓球とは100m走をしながらチェスをするようなスポーツである

卓球のスピード感や戦術的魅力を描こうとするシーンが1巻の後半で連続して、息がつけない感じになってきます。

掛丸翔『少年ラケット』1巻

『少年ラケット』の第1巻のオビに書かれたのはこんなコピーです。

「ラケットから放たれる120km/hの言霊」

「少年たちは0.08秒で心を交わす!!」

きっと魅力的なライバルがつぎつぎにあらわれ、100m走のようなスピード感、チェスのような戦略性で読者を夢中にさせてくれる作品になる気がします。今のところ、本質的に悪人のキャラが一人も出てきてませんが、そういう「全員いいやつ」的展開も僕の好みです。かわいいキャラとシリアスなキャラの描きわけも上手ですね。

それにしても最近のチャンピオンは目が離せないです。本日第1巻発売になりますので、次の『弱虫ペダル』を見つけるつもりで読んでみてください。

少年ラケット 1 (少年チャンピオン・コミックス)
作者:掛丸翔
出版社:秋田書店
発売日:2015-09-08
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