「リア充」を殺せば幸せになれるのか? 愛と憎しみ渦巻く『おれ、被害者』 非リアは真実の愛に目覚めるのか?

ひらりさ2015年09月12日 印刷向け表示
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誰かに心配されたい「非リア心」

みなさま、おはようございます。今朝は都内で大きな地震がありましたが、 大丈夫でしたでしょうか。

過去のレビューでは、執事喫茶のメルマガで安否を心配されてしまった件を書きましたが、今回は誰からも心配の連絡がなかったので、 むしろ自分から「地震大丈夫?」というLINEを送りまくりました。ナンパ師です。

こういうときに「自分って非リアだな」と痛感するのですが、それはようは 「誰からも連絡が来ない」こと自体ではなく「連絡が来ないことを気にしている」こと こそが本質なのではないかと最近気づきました。

そう、リア充はそんなこと気にしない。っていうか、リア充とは「リア充か非リアなのかなんて気にしてない人」なのではないかと思います。

それをまさに象徴しているBLが木村ヒデサトさんの『おれ、被害者』に収録された表題作「おれ、被害者」です。

おれ、被害者 (シトロンコミックス)
作者:木村 ヒデサト
出版社:リブレ出版
発売日:2015-07-23
  • Amazon
  • Amazon Kindle
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • 丸善&ジュンク堂
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リア充なんて殺してしまえ!?

物語は、モテそうで人当たりの良さそうな、まさに「リア充」な男子大学生が、陰気で人付き合いが苦手そうな、まさに「非リア」ぽい会社員から包丁をつきつけられているところから始まります。


木村ヒデサト『おれ、被害者』より

もしやリア充が非リアをバカにしたとか、彼女を寝とったとか、なにかやらかしたのかとおもいきや、2人は赤の他人。

「僕はお前みたいな人間が大っ嫌いだ」と包丁をつきつけながら叫ぶ 会社員に、大学生がおそるおそる事情を聞いてみると、会社員は自分がいかに社会に冷遇されてきたか、そしてお前のようなチャラついたやつが俺を不幸にしているんだなどとまくしたてはじめます。

完全に会社員の逆恨みなんですが、包丁をつきつけられている以上不用意な抵抗もできないと観念した大学生は、なんと「リア充な俺を不幸にするために俺を犯してみたらどうだ」 と言い出して……。


木村ヒデサト『おれ、被害者』より
 

というのが、「おれ、被害者」の始まりかた。

非リアとリア充の思考回路はこんなに違う

とにかく際立つのはリア充のリア充思考と、非リアの非リア思考です。 いろいろあって一緒に暮らしだす、しかしあくまで「加害者=非リア」と「被害者=リア充」 として暮らしだすふたりなのですが、自分に包丁をつきつけてきた加害者と同居しているにも かかわらず終始リラックスしているリア充に、非リアは「こいつなんなんだ」とびびりまくります。そして相変わらず世間に対して「被害者」ヅラをつづけます。

もちろんリア充だって、こんな生活どうにか脱出しようと最初は狙っているのですが、非リアの前でも笑顔を見せるしごはんを作るしやさしいセックスまで提供し、ある意味「青年向けラブコメの押しかけ女房」のような甲斐甲斐しさを発揮します。そう、彼はどんなトラブルに巻き込まれてもその状況を心から楽しめる人間なのです。そして彼のリア充性にふれるうちに、非リアの「被害者」ヅラもだいぶおさまりはするのですが……その後の展開は本書でお楽しみください。

うう、「地震大丈夫?」メールが来ないだけで「非リアだ!」とか絶望しててごめんなさい……あと「リア充はめぐまれてる」って思っててごめんなさい……。

リア充になるには、酒も金も恋人も友達もいらないのです。包丁をつきつけられようとおっさんとセックスすることになろうと鎖でつながれて監禁されようといつの間にかお互いおっさんと好き合っていたのに相手がネガティブすぎてとんでもない展開になろうと、状況を楽しむ心さえあれば人間はいつだって「非リア」「被害者」にはならず、「リア充」になれるのです。


木村ヒデサト『おれ、被害者』より

というわけでリア充になりたいみなさん、まずは『おれ、被害者』を手にとってみてくださいね! 表題作以外も不条理すぎて最高です。

おれ、被害者 (シトロンコミックス)
作者:木村 ヒデサト
出版社:リブレ出版
発売日:2015-07-23
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 『マリアボーイ』も最高。

マリアボーイ (マーブルコミックス)
作者:木村 ヒデサト
出版社:ソフトライン 東京漫画社
発売日:2014-05-20
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