コンプレックスまみれの自分が嫌い。学校が怖い『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』

佐藤 樹里2015年09月21日 印刷向け表示
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志乃ちゃんは自分の名前が言えない
作者:押見 修造
出版社:太田出版
発売日:2012-12-07
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学校。

本当は学校に行きたくないのに、家にいることは許されない。親はどこか「行きなさい」という空気を漂わせています。そうやって、家にも学校にも居場所がなくなって、つらいつらい毎日を過ごしている子供たちがいます。

なんで学校に行きたくないかは、人それぞれの一緒くたにできない理由があると思うんです。『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』には吃音の悩みを抱えた志乃ちゃんが出てきます。作者の押見さんはただの「吃音漫画」にしたくなかったという想いから、あえて吃音という単語を本編に使っていません。私は吃音についてはわからないことが多いので、このレビューではそこにはふれません。学校生活で誰も知らない、自分だけの葛藤が作品にうんと凝縮されていて、どうしてもこの作品を紹介したいと思いました。

新学期には自己紹介をしたり、友達を作る場面が必ずあります。自己紹介の緊張感が得意な人はほとんどいないものです。当てられる前と、当てられたときの心臓の高鳴り。そういう感覚は誰でも経験したと思います。

(押見 修造 『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』)

頭の中ではしっかりしているのに自分の名前が言えない。クラスメイトとうまくなじめていない事を察した先生の「間違った気遣い」によりプレッシャーを与えてしまいます。

( 押見 修造 『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』 )

自分にとっては深刻な問題。がんばろうとしてもできないのに「がんばろう」と言ってくる人は残酷なんです。がんばれと言われると、がんばらなくちゃと思うので、自分を苦しめ、縛り付けていきます。それでも志乃ちゃんは自分と向き合い続けたので、紙とペンと歌という、わずかな光が差し込みます。

( 押見 修造 『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』 )

学校は楽しいこともありますが、頻繁に起こるイベントは試練のようなものです。入学、新学期、初対面、役割分担、健康診断、スポーツテスト、課外授業、テスト、終業式、夏休み、運動会、テスト、文化祭、修学旅行、合唱祭、テスト、冬休み、餅つき大会、テスト、終業式、春休み・・・。ここに部活動や習い事が合わさると本当に余裕がありません。4月、入学やクラス替えでうまくいかなくて、嫌な気持ちのまま夏休みに突入すると、夏休み明けの事がが真っ黒なドブのように感じるのです

真っ黒に塗りつぶされたよう。足元も見えない。そんな気持ちで学校に足が向かうわけがありません。うまくできない自分がどんどん嫌いになっていって、コンプレックスに苦しめられ続けるのです。志乃ちゃんは人とうまく話せないコンプレックスを持っています。この作品には、コンプレックスと向き合い続けた先に見える光が描かれているのです。

学校が本当に苦しかったら、学校は休めるだけ休んで、逃げるだけ逃げたほうが良いと私は思います。今苦しい人も、昔苦しかった人も「わかるなぁ」という共感は得られるかと思いますので、一度手に取って見てください。

志乃ちゃんは自分の名前が言えない
作者:押見 修造
出版社:太田出版
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