『有名すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む。』を読む

小沢 高広2015年09月19日 印刷向け表示
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開き直ったタイトルである。
「1分でわかる◯◯」「あらすじでわかる◯◯」などなど、この手の企画は昔からある。中には「そんなんで、わかるかボケぇ」と言いたくなる人もいると思う。
でも諸事情で「読んだふり」をしなくてはならない者にとっては、福音だ。読書感想文をあらすじだけ読んで書いた経験のある人、その場で手を挙げなさい。この本も、もちろんその機能は十分果たしてくれる。そういう読み方をしてもいい。でも、それだけじゃない。
この作品、全編、水木しげるタッチで描かれているのである。作者はドリヤス工場さん。同人誌時代は、このタッチで『ひぐらしのなく頃に』、『新世紀エヴァンゲリオン』、『けいおん』などを描かれていた。

こちらの画像を見たことある人もいるだろう。

ずるい、もうアイデアがずるい。おもしろすぎるじゃないか。

たんに絵柄が似てるだけじゃない。たとえばカメラアングル。多くの漫画に比べて、アップが少なくて、ミドル、ロングが中心である。あーそうそう。水木センセの作品って、たしかに神視点というか、妖怪視点というか、どこか物語と読み手の間に一定の距離があるよね。
この調子で、雰囲気から間から水木タッチの完コピである。
そんな水木タッチと文学をぶつけるとどうなるか。

たとえばこうなる。こちらは本編に収録されている太宰治『人間失格』。
あー、失格! だいぶ失格!!
先日、太宰治が芥川賞がほしいと懇願した書簡が発見されたが、そんなエピソードも、教科書に載っているイケメン風の太宰治より、この雰囲気のほうがしっくりくる。
水木タッチが醸し出す<昭和感>との相性もいい。
他に収録されているのは、こちらの作品。
 


二物衝撃という俳句の手法がある。

「柿食えば鐘がなるなり法隆寺」
柿を食うのと、鐘がなることは、関係がない。が、柿を食うと鐘がなったよ、と、そこに関連を作り出すのが、句心というか、俳句のおもしろさのひとつ、なのだ。
(中略)2つの関係ないものを、ならべて、そこに、新たな関連性を見いだす、それが発想を刺激するひとつのきっかけになる。

米光一成「2つのものをぶつける発想法」ビジスタニュース2010年11月21日

そう、これこれ!
まさに「水木タッチ x 文学作品」の二物衝撃!
水木タッチと文学作品には、関係がない。が、そこをマッチングさせることで、この作品がたんなるあらすじでなく、新しい読み方になっているんだと思う。

有名すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む。 (torch comics)
作者:ドリヤス工場
出版社:リイド社
発売日:2015-09-11
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 追伸 ドグラマグラってこういう話だったんだー。やっと構造が理解できた…。

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