理性を衝動が追い越す瞬間を目撃しろ。ハロルド作石の生き様を描いた漫画家マンガ『RiN』 漫画家・ハロルド作石の人生を追体験できる作品

有馬 翔馬2015年10月17日 印刷向け表示
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RiN(1) (KCデラックス 月刊少年マガジン)
作者:ハロルド 作石
出版社:講談社
発売日:2013-05-17
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僕はクリエイターのエージェント会社・コルクのインターンとして、レビューを書かせていただいている。

コルクでの仕事をしていると「僕はなんて甘ったれた人間なのだろうか…。自分の人生を生きているのだろうか…。」ということを常々感じさせられる。(上司の佐渡島からも時々、指摘される…。)気付くと「上司に言われたことをうまーい感じにやれば(誤魔化せれば)…」みたいな甘っちょろい仕事をしようとする自分がいる。本当に情けない…。(しかも、うまい感じにほとんどできていない。)

もし、同じようなことを少しでも感じてしまう人がいるならば、ぜひハロルド作石の『RiN』を読んでほしい!今、漫画家の人生を描いた作品(いわゆる漫画家漫画)として、映画『バクマン。』が改めて話題となっているが、『バクマン。』よりもアツいと思う漫画家マンガが『RiN』だ。

僕はこの作品を読んでハロルド作石の人生を追体験しているような気持ちになる。『RiN』という作品は、『BECK』などの人気作を生み出してきたハロルド作石のこれまでの漫画家人生の「たぎり」を感じさせる作品になっている。ハロルド作石の漫画家として自伝的な要素や物語論を強烈に感じることができる、ハロルド作石が歩んできた人生をもう一度歩みなおすような作品になっている。

 

漫画家の漫画だからこそ持つキャラクターのセリフの重み

作中では様々な漫画家が登場し、ともに刺激を与え合い切磋琢磨する姿が描かれる。漫画という一つのものに打ち込むキャラクターたちは生き生きとしていて、魅力に溢れている。さらに、キャラクターたちのセリフは、ハロルド作石の実体験を感じさせる重みを持っている。

主人公の伏見紀人(ふしみ・のりと)は、自分の人生には漫画しかないと、プロを目指していく。



<『RiN』第1巻>


主人公の成長の歩みは、ハロルド作石のこれまでの人生の歩みと似ている、というかそのものだ。実際に、作中で主人公は、高校3年生になって大きな賞を受賞するのだが、ハロルド作石が「ちばてつや賞優秀新人賞」を受賞したのは、主人公と同年代であり、早生まれという設定もハロルド作石と共通する。そういう若さが持つ向こう見ずな衝動がそこかしこに感じられる。

例えばこの場面、自分と主人公の間に横たわる埋められないみぞに気づいてしまう。いまの自分はこんなふうに喜べるのか。



<『RiN』第1巻>

自分の目標のために努力してきたからこそ、これだけ叫べるのだろうか。喜びを叫んでも恥ずかしくない頑張りが今の自分にできているのか。「僕も叫びたい」って純粋に思える場面だ。

もう1つ自分に問いたい。自分の頑張りを応援してくれるマドンナはいるのだろうか…。



<『RiN』第3巻>

まっすぐに頑張っていれば、絶対に背中を押してくれる人はいる!僕にいるのだろうか?否!いない!僕も可愛い女の子に応援されたい!

そして、本作ではもう一人応援したくなる漫画家がいる。それは、主人公のライバルである瀧カイトだ!



<『RiN』第1巻>

これだけまっすぐ自分の目標を、人生の使命を断言したい!かっこよすぎる…!この瀧カイトという漫画家はプロ意識がものすごく高い。これまでジャンルや絵柄を変え、前に進み続けているハロルド作石の創作への信念は、まさに瀧カイトの言葉ないのではないだろうか。

このように作中では、まっすぐに自分の人生を漫画にかけるキャラクターたちから刺激を与えられる。しかし、『RiN』はこれだけではない。スピリチュアルな設定が含まれることによって、さらに物語は深みを増していくのだ!

自分の人生は、自分の人生だ

本作は、漫画家漫画でもある一方で、スピリチュアルな一面がある。この設定が『RiN』という作品の世界観に奥行きと壮大さを感じさせる。具体的にスピリチュアルな要素を説明すると、超能力が使える美少女(ヒロイン)が登場したり、主人公の伏見が夢で度々不思議なカラスと遭遇したりするのだ。

主人公とヒロインの3度目の出会いの時に、主人公は「〝魂〟が喜んでいる…」という不思議な感覚に襲われる。

 
<『RiN』第3巻>

〝魂〟ってなんだろうか?

「肉体に宿り、心の働きをつかさどると考えられているもの。」辞書で調べると、だいたいそのようなことが書かれている。そもそも心ってなんだろう?感情?精神?人間が生きていく上で必要な活力?どれも漠然としていてよくわからない!だけど、まぁそういうのあるよね。というか、これが原因で人生いろいろと起きるよね。みたいな感じのもの。

自分の人生を生きていく上で、何よりも重要なのは、自分の感情を理解することだ。自分がなにが好きでなにが嫌いなのか、そして、なんで好きなのか、なんで嫌いなのか。自分のことなのにわからないことが多かったり、理由を聞かれて説明することで、初めて自分もわかることがある。しかしこの時に、伏見は自分の感情を伝えることができなかった。そんな彼のもとに不思議なカラスが現れる。


<『RiN』第3巻>

なぜ伝えられなかったのか?人生は、前にしか進まない。その時に感じたことはすぐに伝えなければ、時間はすぐに過ぎ去ってしまう。カラスは登場するたびに、伏見の感情に対して、まっすぐ問いかける。それは、自分が到着すべき目的地にたどり着くために…。僕も心の中に、このカラスを飼いたい!

目に視えない不確かなものがヒロインや不思議なカラスによって確かなものとして描かれていく。そして、彼らの生き様(ハロルド作石のまんが道)を通して、自分の人生を改めて考えさせてくれる作品となっている。


最後に

瀧カイトの言葉を紹介したい。

この世に謎や神秘は存在しなくて、目に視えるものが全てとも思いません。読者って常識がみたくて漫画を読むワケじゃない。非常識でも本人が信じてるならそれが真実。もしかして目に視えない世界のものに言い分を認めた方が、世の中が立体的に浮かび上がってくるかもしれない。

このセリフは、ハロルド作石が作中でスピリチュアルな設定を用いてどんなことを表現しようとしているのか感じさせる。

とにかく謎の多い『RiN』。現在、単行本が11巻まで刊行されているが、まだ物語は序盤である。壮大な世界観の中に、細部までこだわり抜かれた本作は、読むごとに視える景色が変わってくる。ハロルド作石の人生を追体験しながら、自分の人生と向き合い、そして、『RiN』の作品で描かれる謎を楽しんでほしい!

RiN(1) (KCデラックス 月刊少年マガジン)
作者:ハロルド 作石
出版社:講談社
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出版社:中央公論新社
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