人間が機械より「役に立つ」ことって無くなっちゃうのかな?いま最も孫正義さんに読ませたいマンガ!!『機械仕掛けの愛』 余裕が残っているうちに考える機械と人間の競争と共生。

小禄 卓也2015年10月24日 印刷向け表示
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ソフトバンクグループの代表・孫正義氏の肝いりスマートロボット『Pepper』や、米軍が開発している軍事用四足歩行ロボット『Big Dog』が登場するなど、にわかに活気づいている最近のロボット市場。GoogleやFacebookといったネット系企業がこぞってAI(人工知能)の研究に膨大な資金を投下している。

ロボット研究の目的としてよく耳にするのが、「人が人らしく生活するために」という言葉だ。作業的な仕事をする必要はなく、人類の発展に寄与するためにもっと頭を使った仕事に従事するべきだ、という大義名分のもとで研究は進んでいるのだろう。

機械仕掛けの愛 1 (ビッグ コミックス)
作者:業田 良家
出版社:小学館
発売日:2012-07-30
  • Amazon
  • Amazon Kindle
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • 丸善&ジュンク堂
  • HonyzClub
  • 漫画全巻.com

僕はそんな時、いつも「人らしくあるということとは何か」を考えてしまうのだが、今回紹介したいのは、そんなロボットにあふれた未来の世界が舞台の漫画。第17回手塚治虫文化賞「短編賞」を受賞している名作『機械仕掛けの愛』である。

ウィットに富んだ皮肉と真理を付いたロボットたちの行動に、星新一さんのショートショートをほうふつとさせるこの作品。人とロボットの関わり方が多様化する今、一読どころか百読くらいする価値があると思うのでぜひ読んでもらいたい。

人間以上に人間らしいロボットたちに心はあるのか?

僕は、血が通っていなければ心臓もないロボットに、心はないと思っている。最近ではディープラーニングの研究が進み、画像認識に関しては人間の能力を凌駕するものも出てきているが、それらは機械の処理能力や学習速度が上がっているだけであり、あくまで無機的なものだ。しかしながら、『機械仕掛けの愛』に登場するさまざまなロボットたちには、「心」がある。

神父、スーパーの店員、猫、軍人、刑事、処刑人など……。さまざまな役割を担うロボットたちが短く描かれているのだが、その中で印象的だったストーリーがある。1巻に収められている、母子家庭にお手伝いさんとして雇われている主人公のロボット・リックの話だ。

お母さんの依頼を忠実に実行するお手伝いロボ・リック(『機械仕掛けの愛』1巻より)

ある日娘が交通事故で亡くなり、病弱なお母さんから「私も先は長くない。せめてあなただけは娘との思い出を忘れないで」と託され、「天に誓って絶対忘れない」とリックは誓う。

(『機械仕掛けの愛』1巻より)
(『機械仕掛けの愛』1巻より)

しかしながら、リックはロボット。いつかは壊れ、データが消えてしまえば母子との思い出はこの世から消えてしまう。そんな状況の中、リックは母子との思い出を残すためにある行動に出る、というお話。

(『機械仕掛けの愛』1巻より)

リックは、お母さんの願いを忠実に実行していくのだが、その姿はまるで人間そのもの。僕はそのリックの行動に、すごく心を打たれた。リックだけではない。業田良家さんが描くロボットたちには、もれなく人の心を感じさせてくれる何かがあった。

内戦が続く地域で生き延びるためにバカになることを選んだ男の最期を見届け、ロボット猫が取った行動にも、確かに人の心を感じられた(『機械仕掛けの愛』2巻より)

『機械仕掛けの愛』では、人と人との間に生まれたいびつな関係性が、ロボットを媒介とすることで浮き彫りになっていく。時にクッションのように柔らかく、時に起爆剤のような矯正力をもって人々の間に入り、真理をついた発言をする。人間以上に人間らしいロボットの姿が、人々の心を浄化していくのだ。

開発者の想い。Pepperくんの未来。

『機械仕掛けの愛』に登場するロボットには「心」があると言ったが、正確に言うとそれはロボット自身の持つ心ではない。生みの親の愛や情熱がプログラムとして記憶され、機能しているだけである。結局のところ、ロボットの持つ心とは、開発者の心と等しい。その意味で、この漫画は、どんなに素晴らしいロボットも、裏側には人の存在があることを改めて感じさせくれる。

機械仕掛けの愛 1 (ビッグ コミックス)
作者:業田 良家
出版社:小学館
発売日:2012-07-30
  • Amazon
  • Amazon Kindle
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • 丸善&ジュンク堂
  • HonyzClub
  • 漫画全巻.com

孫正義氏は、今月22日に行われたソフトバンクアカデミアの特別講義でも、「2040年にはロボットが人間の人口を超すかもしれない」と語る。ロボットにあふれる世界は、きっと、そう遠くない未来にやってくるのだろう。その時、人とコミュニケーションを取ることを目的に作られた愛のあるロボット・Pepperくんは、どこまで進化しているだろうか。

これからロボットの研究開発に携わる人達は、全員『機械仕掛けの愛』を読んでもらえないだろうか。GoogleやFacebook、Appleなんかにも、この漫画を置いてもらいたい。そして、業田さんの描いたような、世の中のためになる心を憑依させたロボットたちが増えれば、ロボットのあふれる世界も悪くないと思えそうだ。

記事へのコメント コメントする »

会員登録いただくと、記事へのコメントを投稿できます。
Twitter、Facebookにも同時に投稿できます。

※ 2014年3月26日以前にHONZ会員へご登録いただいた方も、パスワード登録などがお済みでない方は会員登録(再登録)をお願いします。

コメントの投稿

コメントの書き込みは、会員登録ログインをされてからご利用ください。

» ユーザー名を途中で変更された方へ
 変更後のユーザー名を反映させたい場合は、再度、ログインをお願いします。

HONZ会員登録はこちら

人気記事