嫉妬と劣等感に悩む全ての人が「自分の人生」を取り戻すために『テンプリズム』

佐伯 英毅2015年10月30日 印刷向け表示
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テンプリズム 6 (ビッグコミックス)
作者:曽田 正人
出版社:小学館
発売日:2015-10-30
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  • honto
  • e-hon
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最近、「自分の人生」と「他人の人生」について考えている。自分で考えて、やりたいことを、やりたいようにやる人生と、親や教師やしきたりや習慣に縛られて、自分以外の何者かに規定された人生だ。「他人の人生」を生きている人はいつも被害者ぶっていて、呪詛の言葉を吐きながら「自分の人生」を生きている人たちの不幸を願っている。そして、そんな人間になりたくないと願いながら、ふと気づくと自分が呪詛を唱えていることってよくある。人間ってやっかいだなあと感じる。

そういう、リアルな社会では絶妙に秘匿され、地下水脈のように広がる感情を、ファンタジーの力で気づかせてもらうことが多い。僕が感じるファンタジーを読む理由というのはそういうことだ。

僕は大学3年生からインターンを始めて、会社で長い時間を過ごすようになった。正直なところ、僕が一番強く感じるのは、劣等感嫉妬心だ。コルクという会社は、中途採用者が多く、経験豊富な10年選手の先輩に囲まれながら仕事をしていると「なぜこんなに自分は作業が遅いのだろう」とか「また同じミス…あの人ならこんなことは起きない」と自分に落ち込む。

優秀な他のインターン生や、新しく入った人を見ていると、「この短期間で凄い成長している」「他の人を巻き込むのが上手いなあ」と羨ましげな目で見てしまう。そして、そんな気持ちになっている自分のちっぽけさにも、嫌気が差してくる。

…こんな悪循環に陥ったことある人、いないだろうか。

そんな悪循環中の僕が共感してしまうキャラクターがいる。曽田正人が描くファンタジー漫画『テンプリズム』ベルナというキャラクターだ。

彼女は、強い劣等感 と、果てしない嫉妬心 を抱えている。その矛先は、ニキという少女だ。ニキには、生まれつき魔力の才能があり、国中からその活躍を期待されている。一方ベルナには、魔力の才能はなく、“影”として生きる宿命を背負っているという対照的な二人である。

 (この後、彼女は衝撃的な行動に出るのだが・・・そこはぜひ本編で。)

ベルナは、自らの在り方に悩み、ずっと苦しんでいる。そして、どうにか自分を相手の記憶に残そうとし、価値を認めさせることに必死だ。ニキへの愛情が強すぎて、憎悪をいだく瞬間の複雑な表情が印象的だ。

自分とニキを比べてしまう劣等感に支配される人生とは「他人の人生」そのものだと思う。戦闘中のベルナの回想から、彼女がかなり幼い頃からニキに憧れていたのが分かる。

 

ベルナの心から発せられる悲痛な叫びを聞いていると、劣等感と嫉妬は、強い憧れと深い愛の裏返しであることに気付く。はたして、彼女はこのあと、どうなっていくのだろうか。自らの負の感情に、決着をつけられるのだろうか。結論はまだ分からないし、僕自身も、どうなるかは分からない。

『テンプリズム』は、ベルナを含む、10代の若者たちがもがき苦しみながら成長し続ける群像劇だ。そして、曽田正人は「文明は人間を幸せにする」「科学は人間を自由にする」というような価値観を、この物語を通して批評しようとしている。その対立する価値観の葛藤が頂点に達したとき、爆発するような爽快感のあるバトルシーンが描かれる。

それと『テンプリズム』をまだ読み始めていないのなら、読み始めるのはまさに今がいい。ベルナが「他人の人生」を生きるのをやめ、「自分の人生」を取り戻すのを目撃できるから。

テンプリズム 1 (ビッグコミックス)
作者:曽田 正人
出版社:小学館
発売日:2014-08-29
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テンプリズム 2 (ビッグコミックス)
作者:曽田 正人
出版社:小学館
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テンプリズム 3 (ビッグコミックス)
作者:曽田 正人
出版社:小学館
発売日:2015-02-27
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テンプリズム 4 (ビッグコミックス)
作者:曽田 正人
出版社:小学館
発売日:2015-05-29
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テンプリズム 5 (ビッグコミックス)
作者:曽田 正人
出版社:小学館
発売日:2015-07-30
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テンプリズム 6 (ビッグコミックス)
作者:曽田 正人
出版社:小学館
発売日:2015-10-30
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テンプリズム 7 (ビッグコミックス)
作者:曽田 正人
出版社:小学館
発売日:2015-12-28
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ノンフィクションはこれを読め!  2014 - HONZが選んだ100冊
作者:
出版社:中央公論新社
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